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水鏡  作者: 古紫 汐桜
第五章
118/120

決戦の刃──暴かれた真実と残酷な罠

「そうだよ、その憎しみを宿した瞳。ねぇ……冬夜、お前は本当に俺を楽しませてくれる」


楽しげに笑う翠へ、冬夜は迷いなく刀を振り下ろした。

だが──


「効かないねぇ……。冬夜、俺はお前を愛してるんだよ。お前のその瞳に似合うのは、絶望と孤独だけだ」


斬撃が交錯するたび、翠の体は微動だにせず笑い声だけが響く。


「あぁ……冬夜。お前の怒りも憎しみも……たまらない。身体の底から快楽が湧き上がるよ」


「貴様……!」


冬夜が剣を振り上げ、踏み込んだ──

まさにその瞬間。


『キィィィィィン!』


空間が震えるほどの金属音。

二本の刃が激突し、火花が雨のように散った。


翠の前に立ちはだかったのは、幸太だった。


「翠様……お逃げください」


「ははっ! 冬夜、お前はこの小僧を斬れるのかい? 斬れないよねぇ?」


刃同士が押し合い、互いの力が腕を伝って震える。

幸太はその激しい衝突の中で、わずかな隙に声を落とした。


「冬夜さん……翠の“額”を狙ってください」


「お前……!」


冬夜は幸太の目を見た。

澱みのない瞳──操られていない。


「行くぞ……幸太!」


二人は同時に力を込め、

ぶつかり合った刃が弾け飛ぶように離れた。


『キィィィンッ!』


空気が一瞬ひずむ。

その“間”を冬夜は逃さなかった。


右手をしならせ、

神剣を投槍のように一直線へ走らせる。


空を裂く鋭音。

刃は閃光をまとい、白い尾を引きながら翠の額を目がけて疾走する。


翠の目が見開かれ──


ザシュッ!


額の石が粉砕し、破片が光を散らして飛び散った。


「あぁぁぁぁぁぁぁ!!」


翠は悲鳴を上げ、身体を折り曲げるほどもがいた。

地響きのような声が辺りを震わせる。


冬夜と幸太は、その効果を確信して

ごくわずかに、目だけで笑った。


……だが。


「……な〜んてね」


翠がゆらりと顔を上げた。


「え?」


幸太が息を呑む。

翠は歪んだ笑みを深く刻みながら言った。


「翡翠《あの女》は賢いんだよ。お前の神剣が青く光ったのを見逃さなかった。

その剣はね、操られた人間には光らないのさ」


笑いながら、翠はゆっくりと首を鳴らす。


「だからわざと、“額が弱点”って教えたんだよ。

そしたら……本当に狙ってくるんだもんなぁ?」


嘲笑いながら腹を抱える翠。


「あまりに可愛いお前だから……“ご褒美”をあげたよ」


「ご褒美……?」


幸太が眉をひそめる。


「遥の呪縛は完全に解けたよ。感謝して欲しいなぁ」


「ふざけるな! 遥は自分で呪縛を断ち切ったんだ!」


冬夜の叫びは、怒りと悔しさが混ざる。


翠はうっとりと目を細め、


「そうだったね……でも“あのままなら”、何度でも俺に操られていただろうね」


──その背後。


「全く……好き勝手言ってくれるじゃない」


低く静かな声と共に、

遥の薙刀が翠の胸を一直線に貫いた。


「遥!」


「遥先輩!」


冬夜と幸太が同時に叫ぶ。


翠は胸を貫かれたまま嗤い、

髪を揺らしながら息を吹きかけるように言った。


「無駄だと言っているのに……学ばない奴らだな!」


直後──

翠が指先を払った瞬間、


ドォンッ!


爆風のような突風が巻き起こり、遥の身体が宙を舞った。


「遥先輩!」


幸太が瞬時に跳び込み、遥を抱きとめる。

支えられた遥は、その顔を見上げ──


(……え?)


一瞬、知らない青年に見えた。


『ドキッ』


心臓が跳ねる。


(ちょ、待って!? 相手は幸太なのよ!?

なんで心臓ドキドキしてんのよ、私!!)


遥は自分の心臓に全力でツッコミを入れた。

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