無償の愛の先にある痛み
「そんな風に思っていたんですか?」
絞り出すような幸太の声に、遥はハッとして幸太の顔を見ると、幸太は今にも泣き出しそうな顔をしていた。
遥が、自分の言葉が無神経だったと気付き俯くと
「確かに……僕は遥先輩が好きですが……
──だけど遥先輩が傷付く事を……一度だって望んだ事はありません」
幸太の一言が遥の胸を抉った。
「幸太、ごめ──」
「謝らないで下さい!」
遥の言葉を、幸太が遮る。
「遥先輩は悪くないです……。
──そんな風に遥先輩に思わせてしまった、僕の責任です」
遥は幸太の言葉を聞いて、苦しくなった。
いつだって……そうだ。
幸太は決して、遥を責めない。
深すぎる幸太の想いに、時々、遥は息苦しく感じてしまう。
ふと思った。
さぼてんは、水を与えすぎると根腐れを起こす。
幸太と居ると、自分がダメな人間になるんじゃないか? と怖くなるのだ。
遥は母親の愛情を途中で断ち切られたが故に、無償の愛情の受け取り方を知らない。
与えることは知っていても、受け取ることを知らないのだ。
そんな遥だからこそ、幸太はずっと無償の愛情を与え続けた。
いつか必ず、見返りを求めない愛情もあるのだと……遥に届くと信じていたのだ。
幸太は、裕福な家庭の長男として生まれた。
中々、子宝に恵まれなかった両親は、待望の子供を授かり泣いて喜んだ。
しかも、当初は女の子が生まれる予定だった筈が、生まれてきたら男の子だったので、待望の赤ちゃんが跡取りになる男児だったことに、両親は神様からのGIFTだと思ったのだ。
そんな幸太を、両親や親戚は蝶よ花よと可愛がって育てた。
たくさんの人からの愛情を注がれ、幸太は育って来たのだ。
だからこそ、遥にも“無条件で受け取って良い“愛情があるのだと……知って欲しかった。
でも、いつしか自分の中に恋愛感情が芽生えた時点で、幸太が遥に与えたかった関係は無理なのだと……気が付いた。
好きにならなければ良かったのだろうか?
幸太はふと、そう思った。
ただ、不安定な中、必死に一人で立って前を向いて歩く遥に、幸太は惹かれずにはいられなかった。
同性で出会っていたら、遥の負担にならない関係性でいられたのだろうか?
幾度となく考えた疑問。
それでも幸太は、自分が男として生まれた事に、意味があるのだと……そう信じていた。
それでも時々、自分のこの想いが……遥を苦しめているのではないかと……不安にもなっていた。
生きていくという事は、ままならない事ばかりだと……幸太はそう思った。




