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水鏡  作者: 古紫 汐桜
第五章
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壊したくない夢、壊れ始める現実

ずぶ濡れの冬夜が、バスタオルを頭に乗せて拭いていると

「バパ~! 美夜ね、美夜ね、自分でお着替えして、遥斗のボタンを直して上げたの~」

バスタオルで軽く髪の毛の水分を取り、腰にバスタオルを巻くと

「美夜、偉いな。さすがお姉ちゃんだ」

そう言って頭を優しく撫でて微笑む。

「うん!」

嬉しそうに笑う美夜。

「パパ! ボクも自分で着たよ!」

美夜が褒められるのを見て、遥斗も主張している。

「そうか、遥斗も偉いな」

遥斗にも優しく頭を撫でると

「遥斗はボタン、ちゃんと出来なかったじゃない!」

「でも……ボクも……着たもん……」

涙を浮かべる遥斗に、冬夜が優しく

「そうだよな。遥斗は自分でパジャマを着て、美夜は遥斗の着替えを手伝って上げた。二人とも、偉いぞ!」

冬夜が二人を抱き締めると、子供たちから

「きゃ~!」

って嬉しそうな声が上がる。

「ちょっと、パバ! まだ身体が濡れてるんだから!」

慌てて自分用に置いてあったバスタオルを、冬夜の肩に掛けた。


家庭を持つって、毎日がこんなに幸せなのだ……と、遥は幸せを噛み締めていた。

優しい旦那様になった冬夜。

可愛くて利発な子供たち。


自分もお風呂に入り、寝室で髪の毛を乾かしていると、子供たちを寝かしつけてくれた冬夜が入って来た。

「寝たの?」

「あぁ……。ベッドに入ったら、あっという間だったよ」

小さく笑う冬夜に後ろから抱き締められ、首筋に唇が這う。

「ちょっと待って。今、ドライヤーを片付けるから……」

そう答えた唇を、冬夜の唇が塞ぐ。

手からドライヤーを奪われ、『カタン』っとドライヤーがドレッサーに置かれる音が響いた。

抱き上げられ、ベッドに身体沈む。


結婚して6年目。

付き合ってからだと十年以上経つけれど、冬夜は変わらない熱量で遥を愛してくれる。

職場のパートさんが言っていた。


『結婚すると、家族になっちゃうのよね』


遥は思った。

子供たちの前では、パパとママ。

夜は……こうして恋人になれるのに……。


その時だった。

『遥ちゃんも女の子だから分かるよね?

ママ、母親である事よりも女で居たいの』

自分を愛して育ててくれた母親の声が聞こえた。


────え?


絶頂する寸前、遥は冷水を浴びせられた気分になった。


「遥?」

心配そうに遥の顔を覗き込む冬夜の顔にホッとした。

首に手を回し

「冬夜……今日は激しく抱いて……」

そう呟くと、冬夜は強く遥を抱き締めた。

与えらる熱も……滴る汗も……全てこんなにリアルなのに、なんで不安なんだろう?


胸を去来する恐怖に近い不安


「お願い……冬夜。私を離さないで……」


遥は必死に、冬夜に縋り着いた。

冬夜の腕の中で意識を失う寸前、遠くで自分の名前を呼ぶ懐かしい声を──聞いた気がした。

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