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水鏡  作者: 古紫 汐桜
第五章
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幸せの幻影──届かない未来

楽しげな笑い声が聞こえる。

リビングで、小さな子供たちがはしゃいでいる笑い声だ。

『ピンポ〜ン』

遥がはしゃぎ声を聞きながら、テーブルに料理を並べているとインターフォンが鳴った。

「パパだ!」

遥斗の嬉しそうな声。

「今日は僕が玄関を開ける!」

「待って! 美夜が開けるの!」

バタバタと足音を立てて、子供たちが我先にと玄関に走り込む。

遥はその背中を見守って、小さく笑う。

鍵を開ける音が2回。

『ガチャリ』

とドアの開く音と共に

「パパ、おかえりなさい」

可愛い声が2つ重なる。

その声に答えるように

「遥斗、美夜、ただいま」

優しい父親の声で、愛しい人の声が聞こえた。

廊下を歩く音が近付き

「ただいま」

冬夜が笑顔を浮かべて顔を出した。

子供たちは大好きなパパの手を引いて来ると、満足したようにリビングに戻ってテレビを観ている。

夕飯の支度をしながら

「おかえりなさい」

と笑顔を返すと、冬夜が後ろから抱き締めて頬にキスを落とす。

「はぁ~、遥不足」

「何言ってるのよ! 仕事に行っていた数時間でしょう。ほら、夕飯の支度の邪魔!」

照れ隠しに邪険に扱うと、冬夜の腕が強く遥を抱き締めて

「遥は寂しくなかった?」

甘えたように肩に額をグリグリ当てて聞かれる。

すると

「あ~! パパが甘えん坊さんになってる」

美夜が叫んだ。

「美夜~、ママが冷たいんだ」

遥を抱き締めたまま、拗ねた声を出す冬夜。

「パパ、男はクールな方がカッコイイんだぜ!」

そんな冬夜に、遥斗が大人ぶってアドバイスしている。

遥と冬夜は、顔を見合わせて笑った。


(幸せって……こういう事なのかもしれない)


遥は幸せん噛み締めていた。

毎日、慌ただしいけど、幸せな毎日。

食卓を家族で囲み、笑い声が絶えない。


夕飯を食べて、リビングで愛しい旦那様と子供たちがテレビを観て笑っている。

洗い物を終えリビングに行くと、冬夜が手を差し出して遥を冬夜の隣に座らせる。

腰を抱かれ、家族四人でテレビを観ながら他愛のない会話を交わす。

八時になると、冬夜の合図で子供たちがお風呂へと向かう。

子供たちをお風呂に入れるのは、冬夜がやってくれる。

お風呂場から聞こえる楽しそうな声。

遥は三人分の着替えを脱衣場に置き、その声に笑顔を浮かべる。

しばらくすると

「ママ~!あがるよ~」

冬夜の声が聞こえて

「は~い」

と遥は答えて走っていく。


バスタオルを用意して、飛び込んで来る子供たちを1人ずつバスタオルに包む。

「ママ~あのね、美夜ね、大きくなったらパパと結婚するの」

「ボクはママをお嫁さんにするね」

口々に話しかけて来る子供たちの身体をバスタオルで拭き取る。

曇りガラスの向こう側から、冬夜が頭を洗う音が聞こえる。


「ママ、美夜一人で出来たよ!」

「ママ、ボクもボクも」

パジャマに着替えた5歳と3歳の子供たち。

「あらあら、遥斗。ボタンの位置が違うわね」

遥が直そうと手を伸ばすと

「美夜、お姉ちゃんだから、遥斗のパジャマ直してあげる」

最近、お姉ちゃんブリたがる美夜。

「じゃあ、お姉ちゃんにお願いしようかな?」

「うん!」

嬉しそうに笑い、一生懸命小さな手で遥斗のボタンを直している姿が愛おしい。

曇りガラスの向こう側の音が、身体を洗う音からシャワーを流す音に変わった。


「はい、美夜、遥斗。パパも出るから、ちょっと前に来ようか」

遥斗のパジャマを直し終わり、二人が一歩前に出た所で浴室のドアが開いた。


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