#17 「光」
ゲメネは兵を引き連れ、泥だらけで城へ戻った。
戦の結果を問う家臣に、怒鳴り散らす。
「黙れ、あれは奴らの姑息な待ち伏せだ。それに、スピノール伯め、使えない道具を……宰相様の大切な兵をあずかって、村一つしか落とせんとは!」
身支度を整え、大広間にどかっと腰を下ろすと、用意させた肉の塊を骨ごとむしり、脂で手も口も汚れたまま、ワインをラッパ飲みし、空になった瓶を床に投げた。
その時、兵が駆け込んだ。
「伯爵様、た、大変です! 竜人族が……!」
ゲメネは酔いで赤らんだ顔のまま、グラスを振り払い、吐き捨てる。
「まったく、そうぞうしい……。今はトカゲ共の話はするな!酒がまずくなるっ!」
その瞬間、まばゆい光が部屋をのみこんだ。
「ひかぃ……」
それが、ゲメネ伯の人生最後の思考だった。
いつも『ヴァルドラ=エイル戦記』を読んでくださり、ありがとうございます。
この世界について少し整理しておきたくなり、
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ヴァルドラ=エイルの雰囲気を感じるきっかけになれば嬉しいです。