#15 Eランクの勇者(後編)
ルーンの剣先が止まる。
銀色のスライムはぷるぷる震えながら叫んだ。
「わ、わたしには、ちいさなメタボスライムがまっているの!!」
ルーンは少しだけ眉をひそめ、
剣の平(峰)でビシッと小突いた。
パシン!
「イタイッ!!」
するとメタリースライムが再びぷるぷる震え、
恨めしそうにルーンをにらみつける。
「おのれ人間めーっ……スモールヒール!」
すると、スライムの体がぼよんと回復し、さっきの赤い跡が消えてしまった。
「……また回復した!?」
「まーいいや。その、うそくさい“メタボスライム”のところに帰りな」
そう言って、剣先をすっと下ろす。
メタリースライムは一瞬きょとんとしたあと、
ぴょんっと跳ねて、にこっと声を出した。
「じゃーね」
そう言い残して、草むらの奥へと跳ねていった。
ルーンはスライムの核を袋に詰め、夕暮れの街へ戻った。
ギルドのカウンターに袋を置くと、受付嬢が中を確認して、ふっと口元をゆるめた。
「……スライム3体、確かに。これで──Eランク昇格ですね」
書類に印を押し、木札の新しいバッジを差し出す。
「おめでとうございます、ルーンさん」
ルーンはバッジを受け取り、小さく笑った。
「ありがとう」
外にでるとディルフェとミルダが待っていた。
「お疲れさまでした、王子」
「ルーン様、ついにEランクの勇者ですね!」
「だからそれは……まあいいか、よし、今日はちょっと豪華にしようか。夕食は──ステーキだ!」
三人の笑い声が、夕闇の通りに消えていった。