表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/57

#14 Eランクの勇者(中編)

「……ルーン様! 朝です! もうとっくに日が昇っています!」


ミルダの声が宿の部屋に響く。

布団の中のルーンは、顔だけ出してぼそっと言った。


「あと5分……」


すると、ドン! と枕を引きはがされる。


「そんなことでEランクの勇者になれるのですか!!」


ミルダの一喝で、ルーンはしぶしぶ起き上がった。

食卓には朝食とは思えないほどの料理がずらりと並んでいたが、

ルーンは特に気にせず食べ始める──もう毎日のことだから気にもならない。


そしてふと、パンをかじりながらつぶやいた。


「ミルダさん、僕はEランクになりたいし、目的は勇者だけど……つなげて言っちゃうとおかしなことになるんだ」


ミルダはお皿を片付けながら、さらりと答える。


「わかりました。今夜は良いランクの夕食を用意しておきます」


ルーンは思わず苦笑する。


「いや、そういう意味じゃなくて……」


しかしミルダは手を止めず、きっぱりと言った。


「そんなことより、これを持って早く出発してください。遅刻してしまいます」


そう言って大きなリュックを手渡す。

中には、今日もミルダ特製のお弁当とおやつがぎゅっと詰め込まれていた。

ルーンはリュックを背負い、軽く手を振る。


「それじゃー、いってきます!」


受付嬢から依頼書を受け取ったルーンは、街中を駆け回っていた。



--- 井戸の水汲み---


「ふんぬっ……これ、思ったより重いぞ!」


両手で抱えた桶から水がちゃぷんとこぼれ、足元の石畳が濡れる。

通りすがりのおばさんが笑顔で声をかけた。


「ありがとねぇ、王子さま」


ルーンは赤面しながらも「いえいえ!」と返す。



--- 鶏小屋の掃除---


「……コケーッ!」


羽が舞い散り、鶏たちが騒ぐ中、ルーンはほうきを振り回す。

服の袖にひっかき傷をつけられながらも、笑顔を崩さない。


「勇者になるためだ、これくらい!」



--- 荷物運び---


「はぁ、はぁ……あと三軒!」


腰を曲げたおばあさんの荷物を背負い、坂道を上るルーン。

横で見ていた子どもが目を丸くした。


「ほんとに王子さまなんだ……!」



--- 街角の掃除---


夕暮れ時、ルーンは箒を片手に路地裏のゴミを掃き集めていた。

通りがかった酒場の親父が声をかける。


「おーい王子さま、こっちの道も頼む!」

「はいよー!」



こうして──

子どもたちは「王子さまー!」と駆け寄り、

大人たちは「今日は何を手伝ってくれるんだ?」と笑顔を向ける。

街の人々はすっかりルーンと顔なじみになった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ