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第1話 木星の使者

悪夢を見る。

何年も前から見続けている。

恐れているのか。自分を責めているのか。

あの頃。あの時。あの瞬間。

自分のしてきたことに背を向けてはいけない。過去と向き合わなければならない。

それが、自分の罪に対する唯一の贖罪なのだから。



薄暗い廃屋の中、少年が座り込んでいた。顔を伏せ、寝息をたてている。少年の手には大きな銃が握られており、幼い顔の少年には全く似合わない代物だった。

少年は悪い夢を見ているのか呻き声を上げ身体を揺らしている。

しばらくすると、少年は強くうなされ身体を倒し頭を地面に強打した。その衝撃で少年は目覚め、数秒間ボーっとした後勢い良く立ち上がり辺りを警戒した。


ここはヨーロッパの紛争区域。刻は午前3時あたりで空はまだ黒い。少年はこの荒れ果てた地に住み着いていた。

夜は昼に比べて非常に危険だ。都市部の軍人が遊び気分でいたるところにドライブし、難民を見つけ次第殺害して金品を盗む。どうもこの行動は連合の中でも位の高い兵士を中心として行っており、都市の上層部に情報が行く前に揉み消されてしまう。故郷を追われた者にとっては大迷惑だ。もっとも、上層部に問題が告発されても、何も無かったことにされるだろう。この区域の連合軍は腐れ切っている。戦場を知らぬ者が多く軽率な行動をとる者ばかりだ。

少年は体を壁に近付け窓から外を覗く。何も見えない。少年は安堵した─────が、すぐに気付いた。

目には何も写らないし何の音も聞こえないが、少年は何かが近づいてくることに気が付いた。

少年は周辺を警戒し身を屈める。銃を握る両手に冷や汗が流れる。必死に辺りを見回すも接近してくるものは見えない。少年は気のせいだったと割り切ろうとした。溜め息をついて床に座り込み、少年は瞳を閉じた。

何故何者かの存在を感じ取れたのか。その事を疑問に思って少年は考え込んだ。一体何の気配を察知したのか。対象すら不明なのに危険だと無意識に感じたのは何故か。考えを巡らせるが、寝起き直後の頭では深く考えられない。

少年は銃の弾倉に弾を入れようと瞼を上げ、鞄に手を入れようとした。

その瞬間、見てしまった。

目の前に居るものを。

少年は驚きのあまり声が出ずただただ座り込んでいた。

だが状況を冷静に判断し、少年は即座に廃屋から逃走した。少年は無我夢中で走った。追ってくる気配はない。それでも少年は走り続けた。

ふと逃げ道の向こうに何かが見える。例の軍人達だろうか。少年は足を止め周りを見る。隠れられそうな建物はない。何かが近付いてくる。少年の鼓動が激しくなる。弾薬を銃に込め、何かに狙いを定める。何かは射程距離の外にいるが、後数秒で射程距離内に入るだろう。頭に当たればいいなと少年は考え、何かの上のあたりに銃口を向けた。

今逃げても追われて殺される。なら何人かを撃って逃げる時間を稼いでより遠くまで逃げる。最悪街の方へ逃げたっていい。

少年は生きるために精一杯考えた。何かが近付いてくる。少年はその何かの正体を認めた。

それはさっき自分が出くわした化物だった。

それまで考えていた策が全て無駄になった。さっきと同じ個体なのかは分からない。化物は人間よりも遥かに優れている。移動速度もずっと速いどころか、ワープだって出来てしまう。それほどまでに化物は異様なのだ。少年は叫び声を上げ、最悪の場合と称していた街の方角へ逃げた。一人で化物と戦うなど、少年には耐え難い拷問だった。

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