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3話 適用


 「お前って変わってるよな」


 「ありがとう」

 私は、感謝を込めて言う


 「あのな、誉め言葉じゃないぞ」

 相手は溜め息する。

 

 「お前は、俺が変わっていると思う?」

 私は、端的に自分が思う疑問を問う。

 

 どこが、普通ではない『異端』なのか?


 自分は、自分がどうあっても普通にいることが悲しい。

 自分は、普通に怒るし、見下すし、笑う、憎む、楽しむ。

 このどこが、普通でないのか。


 「お前の何をしても勝ちたい思いだよ。あきらめない感じだよ。お前、どんなみっともない姿でも勝ちに固執するだろう?」


 「当たり前だろう?」


 「そういうとこだよ」

 

 「お前に聞いた馬鹿だった。勝ちたいと思うのは当たり前だろう。そう思わない時点でお前は普通じゃない。」

 私は、ため息をする。

 意味分からん。


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 白い雪のなか、黒髪の少年と熊が対峙している。

 両者は、睨むだけで動かない。

 少年は、木の棒しか持ってない。

 しかし、熊は警戒する。相手をエサではなく、敵と認めたから。


 何かを感じる。

 

 それは熊が、無意識に今まで戦った死を恐れぬ戦士から感じた、背中の傷をつけた猛者が持つ強い意志であった。何か熱い感情。


 この感情はなんだ?


 単なる食事ではない。何故か感じる高揚感。その高揚感、それだけが警戒するには充分であった。


 人間(彼ら)のせいで熊は冬眠できなかったのだ。

 度重なる伐採により生息地の減少。そして、森の秩序を乱す。集団による食事出ない殺戮。そのせいで、森には碌な食料がない。

 人里に下りた同胞は皆死んだ。死んだ死体は人間どもに辱められ武器や装飾にされるという。それを許せるわけがない。

 森の秩序のため、頂点捕食者として、一つの種族だけを狙い襲うのは躊躇った。

 結果、復讐に燃えた若者は皆殺された。

 それが、我らの一族の未来が多く消された。初めから躊躇うのではなかった。

 これは、私の業だ。


 今生きて彼らに復讐する。自分のため、彼らのため。喰らう。


 この敵を殺したら、食ったら、その力を取り込んだら、次は彼らの番だ。

 

 その熊は。食べる熊(鬼熊)と呼ばれる森の頂点捕食者であった。

 食ったものの特性を取り込み無限に成長する。

 傷は、治れば直ぐに治り、固くなる。


 そして、その熊はその中のもっとも長く生きたもの。したがって、最も多くの生物の特性を手に入れたものである。

 体毛は鉄のように固く牙はそこらのナイフより鋭い。

 老衰により、筋力は衰えたが、それを補うほどの冒険者から奪った技能がある。

 

 熊は、初めて捕食した獲物の力を使う

 「水魔法、 凍結」


 雪が凍る。


 少年の足が氷につかまる。

 捕まえた。ダガ、私は油断はしない。

 小さき敵よ、貴様はこんなものなのか!

 「グオオオオ!!」

 滾る血が滾る!!

 


 


 マズイ

 足が凍った。ここでは魔法というものがあるのか。

 いわゆる、異世界転生みたいなものか。まあ、この姿になった時点で原因を考えるのを諦めた。


 解けるを待つのは論外か


 熊を見る。

 毛が逆立っており、今も本能が逃げろと叫ぶ。目から強烈な意思が見える。同じ空気を吸うだけで窒息しそうだ。鳥肌がやまない。

 だが、

 「俺は勝つ」


 「いいいいいいいいいいいいいいいいいたあああああああぁぁあぁぁぁぁああ!!」

 無理やり足を動かす。

 靴が破け、素足が氷に引っ付く、しかしここで止まれない。

 動かす、痛い、動く動かす、痛い、動く動かす、痛い、動く動かす、痛い、動く動かす、痛い、動く動かす、痛い、動く動かす、痛い、動く動かす、痛い、動く動かす、痛い、動く動かす、痛い、動く動かす、痛い、動く動かす、痛い、動く動かす、痛い、動く動かす、痛い、動く動かす、痛い、動く動かす、痛い、動く動かす、痛い、動く動かす、痛い、動く動かす、痛い、動く動かす、痛い、動く動かす、痛い、動く動かす、痛い、動く動かす、痛い、動く動かす、痛い、動く動かす、痛い、動く動かす、痛い、動く動かす、痛い、動く動かす、痛い、動く動かす、痛い、動く動かす、痛い、動く動かす、痛い、動く動かす、痛い、動く動かす、痛い、動く動かす、痛い、動く動かす、痛い、動く動かす、痛い、動く動かす、痛い、動く動かす、痛い、動く動かす、痛い、動く動かす、痛い、動く動かす、痛い、動く動かす、痛い、動く動かす、痛い、動く動かす、痛い、動く動かす、痛い、動く動かす、痛い、動く


 少年は、走る。濃厚な血のにおいを漂わせて、

 当然熊は、追いかける。


 木々をなぎ倒しながら熊は走る。

 しかし、しばらくすると少年を見失う。

 血の匂いを追う。すると大きな気にたどり着く。熊は、血が木の上まで続いていると気が付く。

 ニタ

 熊には余裕があった。

 少年は相当出血している。

 かなり疲弊している。そして、

 

 『木の上には逃げ場はない。』

 このかくれんぼが終わろうとしていた。


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