1話 転生
努力
それは、私が人生のほとんどを捧げてきたものである。
薬、それは赤ん坊から老人まで、すべての人間を病魔、痛み、苦しみから解放する最短の手段である。私は、それを作り人を助けたい。今、不治の病である。癌、パーキンソン病、エイズなどの病を治す薬を作ると言う夢がある。
その夢を叶えるための最初の難関を超えたかという結果を今確認しようとしている。なんの結果と言われれば、それは当然、初めの難関といえば超難関国立薬学部の合格を確認することだ。
今の世の中、ネットで通知が来るが、未だ私は見てはいない。
なぜって?
それは当然、私は合格を確認するために大学に足を運び名簿に自分の受験番号があるか、ないのかを確認することに価値を置いているからだ。初めの難関だ。結果発表のときにスマホで確認では、味気ない。私は大きな緊張感を持ちながら自分の受験番号を見て受けたいのだ。そして、見つけたときの達成感を味わいたい。喜びに浸りたいからだ。そんな高い緊張感、達成感、喜びをスマホやパソコンでマウスを動かすだけで感じることができるとは、微塵も思えない。
人は、私の行動を見て、ロマンチストというだろう。人によれば、馬鹿にする者もいるだろう。そんなことに時間を使うなんて。
と、
しかし、そんなのはどうでもいい。こんなことを少しでも気にしている時点で心の片隅で気にしている感が否めないが、それはいったん置いといて。
大切なのは、私という存在の行動原理だ。
人は、生物は何で動く?
怒り
恐怖
嫉妬
勇気
そのどれもが違う、人の行動原理は快楽である。
痛みも悲しみも苦しみも喜び、怒り、達成感、そのすべてが快楽によって起こっている。
違うのは、その快楽をどう区切っているかである。
だから、私は、この大学受験のために動いた自分のための褒美の絶大な快楽のために歩く。
それが、自分がこれから歩く糧になるから。
だから、私はわざわざ足を運んで大学に行くのだ。
口の吐息が白く曇る夜中、電車が、1時間に一本しかないような電車に30分乗り、乗り換え、東京につくと迷宮のダンジョンみたいな道を迷わず進み、電車に乗り降りると大学まで歩く。
空は青く光だし誰も歩いていない歩道を囲む高層ビルが青く反射し美しい風景を生み出す。
「都会には都会なりのよい風景があるのだな〜」
自分の見た景色は、自分が長年過ごした故郷では決して見ることのない風景だった。
緑に包まれた山々は、ここでは空高くそびえたつ塔に、故郷では何一つも通らない道は車で埋め尽くされていた。
これが東京か。
満員電車に乗り窓を眺めながら思った。
これが、自分の国の首都か、
うるさくはあったが、キレイでもあった。
そう思いながら私は、電車を降りる。
駅から抜け出し、歩道を歩きだす。
まっすぐ行って、曲がる
そこにあったのは学校の掲示板であった。
自分の受験番号を確認する。
自分の受験番号は234である。
掲示板の端から端まで確認する。
そして目にする。
234
「あっ、あった。」
私はとっさに口にした。
自分では、受かっていると確信してはいたが、確認すると驚きの様なものだおきるのだな。
だが、そこまででの実感がわかない。
しかし、これでよかったはずである。
パソコンで結果を見ていたら。
『まあ、こんなもんだろう』
で終わっていたはずである。そうなるよりよりは断然よいだろう。
そのまま考え込みながら私は、入学手続きを終わらせた。
「じゃあ、帰るか」
空を見て言う。そこには、ため息のように何かを吐き出した深みの感じられる声があった。
受かったが、何も感じない。
快楽が感じない。
ゲームで感じる達成感がない。
何故なぜ何故なぜ何故なぜ何故何故なぜ何故何故なぜ何故何故なぜ何故何故なぜ何故何故なぜ何故何故なぜ何故何故なぜ何故何故なぜ何故何故なぜ何故何故なぜ何故何故なぜ何故何故なぜ何故何故なぜ何故何故なぜ何故何故なぜ何故何故なぜ何故何故なぜ何故何故なぜ何故何故なぜ何故何故なぜ何故何故なぜ何故何故なぜ何故何故なぜ何故何故なぜ何故何故なぜ何故何故なぜ何故何故なぜ何故何故なぜ何故何故なぜ何故何故なぜ何故何故なぜ何故何故なぜ何故何故なぜ何故
ぴよぴよぴよぴよ
いかん、しっかりしなければ。
信号が、青になった。進まなければ。
でもなんでだろう静かだ。
さっきまで煩かった交通音が一切ない。
「あれっ」
何で空が見えるんだ?
体が怠い、頭が重いなんで?
視界が赤くなり始める。
「だ■、救▲車■〇、大▲〇か!」
あれ、目の前に何故か人がいる。
何で?
頭を横に向ける。
地面が血だらけだ、僕の血?
そうだ、僕は死ぬのか。
寒くなっていく、
え、しぬってことは大学にいけない。
頑張ったのに
頑張った
「嫌だ、いやだいやいや」
青年は、死んだ。醜く。虚しく一人で、、、、