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昼休み、件の令嬢の資料を読む

 俺やルクレステ、それにレーリラも学園に入学して一年が経過している。王太子であるルクレステは当然目立つし、その隣に居る俺もそれなりに有名である。

 だけどあの令嬢は――俺のことなど全く知らないと言った態度だった。




 基本的に俺は授業を真面目に受けている方だけど、生徒会役員は場合によっては授業を免除してそちらを優先したりすることは許される。後は貴族が多い学園だからこそ寄付金次第では融通が利く場合もなくはないけれど。

 俺達が真面目に授業を受けると、その分、周りも同じように真面目に授業を受けるから教師達には喜ばれた。

 まぁ、授業を受けなくても試験で良い成績をおさめているのならばそれは自由だと思っているけれど。




 ルクレステとその婚約者は王太子と王太子妃教育で大忙しなのでたまに学園に居ないことはある。俺も「一緒についてこい」と言われて視察などは一緒に行く。ルクレステは断ると拗ねるんだよなぁ。






 授業中に関係ないことをやるのも違うので、一旦件の令嬢の情報に関しては昼休みに確認した。




 昼ご飯はルクレステと一緒に食べたり、レーリラと一緒に食べたり様々だ。

 貴族達が話をするためのエリアというのも解放されており、今回はその一室を借りた。とはいっても婚約者同士とはいえ完全に二人っきりというわけではない。

 声が聞こえないような範囲に侍女や執事は控えている。これらは学園に雇われている者達である。生徒はお願いをすることだって出来る。流石に度を超した物に関しては、学園側から注意が入るが。

 というか過去に、そういうお願いをした生徒が居たためそのあたりのルールが以前より厳しくなったとは聞いている。兄上には「昔のままだったら楽だっただろうに」なんて言われたけれど、流石にそんなルールを破る気はないので別にどうでもいい。

 正直その言い方に、兄上も何らかの問題があるような頼みごとをしたのだろうかとは不安になったが。





「それは例の令嬢に関する資料かしら?」

「うん。そう」



 先に調べてくれていたという資料に目を通す。





 あの令嬢の名前は、シリーヴ・スコッティ。

 これまで市井で暮らしていたそうだ。というのも、元々貴族の庶子で平民として暮らしていたところを跡取り息子を亡くしたことで引き取る形になったらしい。

 そういう話、貴族の世界ではそれなりに聞く話である。ただそういう話を聞くと何とも言えない気分になる。

 転生して貴族生活にすっかり慣れている俺だけれども、あんまり不幸な存在が増えるのも嫌だなって思う。俺が出来るのは手が届く範囲をどうにかするだけだけど。




 それにしても昨日の俺へのああいうよく分からない言いがかりは、庶民から貴族にいきなりなってしまったからだろうか。いや、それならそれでおかしいんだよな。

 平民として生きているのならば、王族や貴族相手に無礼な真似をしない方がいいことは承知しているはずだと思う。身分社会だからこそ、不敬罪により罰せられることなんてかなりの例がある。

 これから貴族になるというのならばそれらの情報を教えられているはずだろう。それに男爵家らしいから高位貴族相手に無礼な真似はしない方がいいとは言い聞かせられているとは思うんだけどなぁ。

 力関係とかも、頭に入れてからじゃないとこういう学園には入れないと思うし。




 それなのに昨日のようなことを起こすのって、何かおかしいし。どういう思考回路で俺に文句を言うに至ったんだろう?

 入学したばかりでああいった騒動を起こして、ルクレステからも目をつけられてしまったらかなり学園で生活がしにくくなる。

 せめてきちんと謝罪をするとかしないと、俺はともかく周りが許さないだろうしなぁ。

 そういうわけで一年生の知り合いに、少し話をするようには頼んでいる。





「その資料は、私は見ない方がいい?」

「ああ。一先ず見ないでほしい」

「分かったわ。じゃあ、教えてもらえるようになったらでいいわ」



 レーリラはそう言って笑みを浮かべている。

 こういうところ、彼女の良い所だよなぁと思う。なんというか、無理に聞き出そうとはしないというか。俺が自分で動いているから問題ないとそう信頼してくれているというか。




 そういうところがかなり好きだと思う。





「どうしたの? そんなににこにこして」




 無意識にレーリラのことを笑顔で見つめてしまっていたらしく、不思議そうな顔をされる。



「俺の婚約者は可愛いなって」



 そう言ったら顔を赤くして、だけど嬉しそうな顔をするレーリラ。



「も、もっと言ってもいいのよ」





 周りに人が居ないからか、そんな風に素直なレーリラもいいよなぁ。人前だと照れて少し自重しているし。

 それから俺は昨日の令嬢の情報を頭に入れつつ、婚約者であるレーリラのことを愛で続けるのであった。





 ちなみに楽しい昼休みを終えて、午後の授業が始まる前に男爵令嬢のことで追加の報告を受けた。


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