翌日、学園にて
「ウェイアン様! 先日はとある令嬢に絡まれていたのでしょう? 大丈夫でしたか?」
「何かあればすぐにご相談してください!」
令嬢に絡まれ、放課後はルクレステとカフェに行き……、その翌日。
学園に登校すると色んな人に話しかけられた。学園に入学して一年だけど、俺は沢山の人と交友を持てていると言えるだろう。
俺はルクレステと一緒に居ることが本当に多いので、その分目立っているんだろうしなぁ。
「うん。ありがとうな。でも俺の方できちんと調べて対応するから、勝手な行動する人が居ないように気を付けてもらえると助かる」
クラスメイト達にそう言って返事をすると、彼らは頷いてくれる。
たまに話を聞かない系の人もいるわけだけど、比較的俺が関わっている貴族の子息や令嬢は話せばわかるようなタイプの人が多いのだ。
だからこういうときに俺やルクレステが望まない行動を起こさないようにちゃんと行動してくれるのだ。
「ウェイアン様、彼女のことをお調べになる予定ですよね? こちら、昨日のうちに調べておいたのでよろしくお願いします!」
……中にはお願い一つしていないのに、俺の行動を見越してか先に調べてくれていたらしい。
「助かる。報酬はちゃんと渡すから情報買い取らせてもらえばと思う」
毎回報酬なんていらないと言われるのだけれども、無償で何かを渡すのは逆に面倒な事態になりそうと思っているのでこの辺りはきちんとしている。
俺も王太子であるルクレステの側近としてこれからも生きていく予定だからな。後から面倒な事態になるようなことは避けている。借りを作ると大変なことになる可能性もあるし。
俺はそういう所はちゃんと考えているのだ。
あとなんだろう、有難いことに俺が一番ルクレステから信頼を得ているから俺と親しくなればルクレステの側近になれるかもみたいな下心ある人も多いけれど。ちゃんと動いてくれるのならばそのあたりは問題ないので、雇用契約を結んだりはしている。そのあたりはルクレステやレーリラに相談した上でだが。
もちろん、俺一人で決断して進めることもある。なんでもかんでも二人におんぶにだっこだとかっこ悪いしなぁ。ただ俺が相談せずに進めているのを後から知られると二人とも拗ねたり、悲しんだりするけれど。
……俺は二人が隠し事をしていても、二人がそうした方がいいと決めたことなら別に構わないんだけどなぁ。そもそも親友や婚約者といっても別人なのだからそういう秘密があるのは当然だし。
生徒から資料を買い取って、俺はそのまま教室へと向かう。
そうしていたら後ろから声を掛けられる。
「ウェイ! おはようございます」
聞きなれた嬉しそうな声が聞こえてきて、俺は振り向く。
そしてその姿を見ると、俺も自然と頬が緩む。
「レーリラ、おはよう」
婚約者であるレーリラは、とても美人である。美しい空色の髪が腰まで長く伸びている。まっすぐなストレートヘアだ。瞳の色はそれよりも濃い青色。目が吊り上がっていて、少しきつめの美人さんなんだけれど……親しい人の前だと凄く可愛い。
俺の前だとよくにこにこしていて、今も、俺の姿を見れて嬉しいのか笑っていて可愛い。
それでいて俺の腕を手に取って、くっついてくる。人前なんだけどなと思うけれど婚約者同士なので特に問題はない。
「どうした?」
急に近づいてこられて、疑問に思って口にする。
「……昨日は、王太子殿下にウェイを取られたから。それに無礼な令嬢に絡まれたと聞きました」
そんなことを言い始めたレーリラに普通にきゅんっとした。
いや、だって可愛くない? 俺がルクレステとカフェに行ったり、令嬢に絡まれたことで噂されたことに思う所ありって感じだ。
こんなに可愛い子が婚約者だなんて俺は幸せ者だよなぁって毎日思っている。
「だから上書きします。王太子殿下よりも、私の方がウェイと仲良しです」
「そっか。レーリラは本当に可愛いな」
そう口にすると、顔を赤くしてそっぽを向くレーリラ。自分からくっついて、自分の方が俺と仲良しだって示すって態度なのに、こういう台詞で照れているのも婚約者の可愛いところである。
周りもほほえましそうにレーリラのことを見ているしな。俺とレーリラは前世でいう所のバカップルみたいに周りに認識されている気がする。
俺は全然それで構わないから、いいけれど。
「……ウェイ、昨日の令嬢、どうする気?」
「ちゃんと調べて対応するから、レーリラはまだ動かないように」
「……でもウェイが大変そうなら口出しします」
「うん。その時はいいよ。でもなるべく、俺はレーリラに未知数の存在には近づいてほしくないから。平和的に解決する予定だから安心して」
俺がそう言って笑えば、レーリラは頷いてくれた。
さて、受け取った資料の確認とまた別口であの令嬢について調べないとなぁ。