二人の女
初めて彼女を見たとき、私は彼女を村人の一人だと思った。綿で織られた白い貫頭衣をまとい、他の村人たちと何ら変わらぬ姿をしていたからである。だが、その顔立ちの整い方と、しなやかに引き締まった肢体には、これまでこの地で見た誰とも異なる気品と洗練があった。
私が言葉を失っていると、彼女は静かに歩み寄ると、澄んだ声で名乗った。名はララ・オクリョ。歳は十九であった。
人をうっとりさせる声で語る彼女の話によれば、自分はこの村周辺を統括する太陽神殿の処女の館に仕える巫女の一人であり、今日は神殿に門番がいないことを好機と見て、同僚たちには用事があると告げて抜け出してきたのだという。
もちろん、巫女が俗人と密かに会うなど、決して許されることではなかった。見つかれば、どちらも命はない。だから彼女は身なりを変え、黄昏の闇に紛れて町の外れへと姿を現したのだった。
「何の用だ?」
西の空の夕陽が、彼女の澄んだ瞳をやわらかく照らしていた。その透き通るような眼差しで私を見つめながら、彼女はためらうことなく、確かな重みを込めて話し始めた。
「時間がありませんので、大切なことに限ってお伝えします。あなたたちは、この地から出て行かなければならないのです」
私は一瞬、言葉に詰まったが、彼女の瞳を見つめ返し、静かに口を開いた。
「それはできない。私には果たすべき使命がある」
「使命など、命の重さの前には無力です。あなたはまだご存じないのでしょう。太陽は、すでに裁きを下すことを決めたのです」
「裁きなど……」私は思わず言い返した。
「私は太陽に忠誠を誓っている。私はその意志を理解し、その動きを読み解ける。日食は嘘ではない。あれは、私の信念の証だ」
ララは悲しげに目を伏せ、沈みゆく太陽のほうをじっと見つめた。まるで何か取り返しのつかぬものを、そこに見ているかのようだった。
「すでに賽は投げられました。この国には太陽が二つあることを、ご存じでしょう。一つは天に。もう一つはクスコの神殿が司る教義にあります。神官たちは、あなたの予言にかかわらず、あなたたちを帝国に背く者として、大々的な処刑を決めたのです。予言の日、兵士たちはあなたを取り囲み、村人の目の前で殺すでしょう」
脳裏に、地面が血の海に染まる光景がよみがえった。それは、ワスカルやスペイン人たちとの戦で、何度も目にしてきた惨劇だった。凍えるような恐怖が、ゆっくりと脊髄を這い上がってきた。
私は直感した。背後で糸を引いているのはヤチャチクに違いなかった。
その瞬間、私は目の前のララに対して、深い尊敬の念を抱いていた。彼女は神官とは違った。打算ではなく、心から太陽を信仰していた。その信仰は、友愛と慈しみの心に根ざした真実の信仰だった。彼女は、私を助けようとしていたのだ。
「初めてあなたを見たとき、私はあなたがクスコから来た者だとすぐに分かりました。高地の人に特有の雰囲気をまとっていたからです。私の親族も高地の出身ですから」
彼女の血には高地の民と海岸の民、両方の血が流れていた。その混ざり合いが、彼女を美しく、魅力的な存在にしていた。タワンティンスーユの混血政策が、彼女を生んだのである。
その後、彼女は短く、しかし要点を押さえて真実を語った。ナスカでの改革は、尾ひれと背びれをつけてクスコへと伝わり、私たちは大逆人として断罪されていた。そして、帝国中央から討伐の軍隊が派遣されたというのだった。
もっとも、その時の私は、まだすべてを知らなかった。実のところ、ラマコチャがクスコでワスカル派と結託し、私を討つために軍の派遣を働きかけていたのだ。だが、そのことについては、別のところで詳しく触れる。
彼女が闇の中へと消えていく後ろ姿を見つめながら、私は深い未練を感じていた。ララはまるで、すべてを見通しているかのようであった。その背中は、歴史の狭間に取り残された私自身の姿と重なって見えた。
宿舎に戻ると、辺りはすっかり夜に包まれていた。闇の中に、松明の赤い光がちらちらと揺れ、その光と共に、建物の中から荒々しい怒声が外まで響いていた。
何事かと足を速めて中を覗くと、焚かれた松明の明かりに照らされながら、服のはだけた若い女が一人、怯えた様子で佇んでいた。土間には血のような影がにじみ、空気は焦げたような緊張に満ちていた。その周囲には私の従者と村の若い男たちが数人、顔を紅潮させて立っていた。
「この盗人野郎めが……」
怒りに震える声で、一人の若者が鉄の剣を手にして叫んだ。剣の刃先には赤錆が浮かび、それが松明の光を鈍く跳ね返していた。彼女は泥に汚れた衣をまとい、肩をすぼめて身を震わせながら、助けを求めるように私を見つめていた。
「何事だ、こんな夜更けに。一体何があった?」
私の姿に気づいた男は剣を下ろした。だが、その顔にはまだ怒りと不満が色濃く残っていた。
「こいつは売春婦の女で、我々が丹精を込めて鍛え上げた鉄器を盗み、神官に取引しようとしたのです」
もう一人の男が吐き捨てるように言った。鉄器は、彼らが山から鉱石を掘り出し、苦心の末に精錬して作り上げた貴重な道具だった。改革の一環として、彼らは村人たちの暮らしを向上させるためにその技術を磨いていた。その誇りを踏みにじられたことが、彼らの怒りを燃え上がらせていたのだ。
私は、恐怖に怯える女に歩み寄り、静かに声をかけた。
「盗んだものを返せば、それでよい。夜も遅い。帰るがよい。もし家がないのであれば、私が手配しよう」
女は一瞬ためらったが、少年である私の姿を見て、危害を加えられないことを理解したらしく、小さく頷いた。私は従者に、新しい衣を与えるように命じた。彼女はそれを受け取り、静かに宿舎を出ていった。
女は、村の外れの街道沿いに身を寄せ、通りすがりの者に身を売って生計を立てていた。孤児として生まれ、戸籍を持たなかった彼女は、帝国の福祉制度の外にいた。村人たちは彼女を厄介者として忌み嫌っていた。
部屋で起きた騒動のせいで、ララとの会話の余韻は、すっかり霧散してしまっていた。男たちは建物を出ていきながらも、納得のいかぬ様子でしきりに何かを言い合っていた。
私の脳裏には、さまざまな思いが渦巻いていた。迫りくる軍隊。美しいララの顔。名もなき女の怯えた顔。理想と呼べる未来は、本当にこの手の中にあるのだろうか。それが、今や大きな課題として、胸にのしかかっていた。
一方で、男たちの中には新たな思索が芽生えつつあった。鉄が力をもたらした以上、彼らはもはや、盲目的に従う理由を必要としていなかった。その力の意味と使い道を、彼らはそれぞれの心の中で、静かに、しかし確かに模索し始めていたのである。




