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インカ帝国架空史  作者: 雨水月
序章
2/55

抜粋 汚れた遺伝子についての報告

 現在のケチュアとヨーロッパとの関係を説明するために、マプチェ人のアンティレフ博士によって書かれた「なぜヨーロッパは未だに貧しいのか」から抜粋する。

 ヨーロッパ人について、遺伝的特性に基づき、他の民族とは明確に異なる特徴が見出されることがある。もちろん、遺伝子が人間のすべての特性を決定するわけではなく、そのような考え方は不適切であり、差別的でさえある。この文章で論じるのは、あくまで科学的根拠に基づいた民族間の一般的な差異に関するものであり、遺伝子の違いが彼らを劣った存在であると示すことを意図しているわけではない。むしろ、遺伝子の多様性が示すように、わずかな塩基配列の差異が人間や集団、ひいては民族としての特徴や歴史にいかに大きな影響を与えるかを明らかにしようとしているのである。


(中略)


 ヨーロッパ大陸に住む人々における特徴として、T型タンパク質の発現量が他の民族よりも多いことが挙げられる。このT型タンパク質は、主に脳内の記憶や情緒を司る回路の形成に深く関与しており、その発現量が多いほど情緒が不安定になり、長期間にわたる記憶の保持が難しくなることが報告されている(Yupanqui 1980)。同研究においては、贈与を模倣したゲームを用いた実験で、T型タンパク質を多く発現する人々が低い共感性を示し、利己的な行動を取る傾向が見られたことが示された。


 また、最近の大規模スクリーニングによって、脳内におけるT型タンパク質の発現が、わずか1つの塩基によって変化することが報告され、注目を浴びている(Tupaq 1982)。余談だが、この遺伝子は発見者にちなんでT型遺伝子と名付けられており、タンパク質名と同じ名前が付けられている。


 さらに、地域ごとに塩基の差異を分析した結果、ヨーロッパ諸国において特徴的な塩基配列を持つ人々が多く見られることが報告されている(Inti 1983)。驚くべきことに、ヨーロッパだけでなく、現在のキューバ諸島地域でも同様の塩基配列を持つ住民が多く観察された。遺伝子解析により、これらの住民の祖先がかつてスペイン人と交配したことが示されており、またミトコンドリアDNA解析によって、多くの者が父親からその遺伝子を受け継いだことが確認された。母親由来でこの遺伝子を受け継いだ者はごく少数であった。


 したがって、この結果は、過去にキューバ諸島で行われたスペイン人の蛮行が現在にまで影響を与え、その遺伝的痕跡が残っていることを示唆している。実際、キューバ諸島の犯罪率はケチュア大陸の各国と比較して有意な差が認められる。また、これは混血の人々における犯罪率が高いという一般的な傾向とも一致している。さらに、スペイン人によって一時的に占領されたメシカ地方においても同様の傾向が確認されている。


(中略)


 ヨーロッパ人がそのような汚れた遺伝子を持つことは救いがたい事実であるが、その遺伝子を受け継いだのは彼らの親の影響であり、個々の彼らに責任はない。今後、世界が取り組むべき問題として、最先端の遺伝子解析技術を政策に組み込んでいくことが求められる。現在、ヨーロッパで泥沼化している内戦の問題についても、遺伝的な知見を取り入れることで、新たな解決策が見出される可能性がある。

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