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GOD GENE  作者: 星うさぎ
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第1話 日常の二人

この各品は、短編の方で上げた読み切りの続編となっております。興味を持たれた方は、そちらから読んで頂くことをお薦めします。では、どうぞ。

Dear どこかにいるみんなへ


みんなが生きてるって聞いた時は、本当に驚きました。まだ会えないけれども、元気でいますか? 

わたしは今、メイ―――みんなお世話になったね―――と一緒に住んで、同じ高校に通っています。(因みに二年生です)


本当に毎日が楽しいです。友達も出来ました。


《ロータス》から派遣された監察官のミオリは、学校の担任でもあるのですが、時々ごはんを作りに来てくれる優しい人です。


わたしの体も大丈夫です。


本当はもっと書きたいのですが、文面では伝わりそうにありません。


早く会える時を楽しみにしています。

       

                              祈りを風に乗せて シリウス







「これでよしっと」


便箋に書いた文字列を眺め、もう少し何かないかと嘆息する。

会えばいくらでも話すことは有るのだろうが、こう手紙にしたためるとなると、案外思いつかないものだ。


便箋を封筒に入れ、更に通学鞄に入れる。

そのまま学校に持って行き、ミオリに届けて貰おうという寸法だ。



ミオリというのは、現在身寄りのないわたしたちたちの保護責任者で、前述の通り学校の担任でもある。 


ふと時計を見ると、登校時間の一時間前。


そろそろ同居人を起こさなくては。







その日、俺は珍しく良い夢を観ていた。

夢の中の自分は更に寝ていて、今夢を観ている彼はもう一人の自分を空から俯瞰しているのだ。


一般的に良い夢にカテゴライズされるかは疑問だが、悪夢を観るのが常な俺にとっては、十分良い夢だった。

毎日睡魔と親睦を深めていた甲斐もあるというものだ。


が。



「メイ―――!!おっはよ――――!!」


部屋中に響く大声。

近所迷惑にもなりかねない大音響はしかし、年齢にして十六の俺より小柄な少女が張り上げている。


来た。

毎朝文字通り俺を叩き起こしに来る同居人、シリウスの登場である。


起こしに来てくれるのは有り難い。

俺は朝が苦手な方だからだ。


だが今日は、今日だけはもう少し・・・・・!!

意思表示として毛布を頭まで被る。

よし、完璧だ。

さあどう出る、シリウス?



「もう、せっかく朝ご飯作ったのにぃ・・・・」


諦めたか!?


「起きてこない悪い子には・・・・・」


とん。

軽く床を蹴って舞い上がるシリウス。

そのままくるくると横回転を繰り返し・・・・・


「エルボー!!」


回転で勢いを増した肘を俺の腹に打ち込みやがった!! 


「ごぁはっ!!?」


前代未聞の衝撃にベッドが軋みを上げる。



「・・・・く・・・おおお・・・・」

静かに悶絶する俺を後目に、シリウスは言った。 



「さ、早く学校いこ!!」






ある計画があった。


人間とその他の生物の遺伝子を混ぜ合わせ、ヒトに有らざる力を与える実験。



通称『神の遺伝子計画ゴッドジーン・プロジェクト』。


そして、その計画によって遺伝子を操作され、別の生物の能力を手に入れた者は、神話になぞられて『複合遺伝子保持者キメラ』と呼ばれた。

俺は拉致されて、計画の実験台にされた人々の一人だったが、よく分からない内に研究所を吹っ飛ばして脱走した。


しかし、そんな俺には当然の如くキメラの追っ手が掛かった。


次々と襲い来る刺客を撃退し、最後に出会ったのが、何を隠そうシリウスである。

容赦ない狼と鷹のキメラのシリウスを俺はなんとか説得し、彼女は俺と新しい生活を送ることを選んだ。


それが、六月のお話。




七月。

そろそろ夏の暑さが頭を出す頃。通学路には気怠そうに欠伸する黒髪の少年こと俺、緋月鳴ひづき めい


その隣には、満面の笑みを浮かべながら、白銀の髪をなびかせて歩くシリウスがいる。


こいつは学校に通ってから変わった。


どうやら、義理の兄姉たち―――俺が《ロータス》送りにした刺客たちだ―――にはまだ会えないようだが、明らかに明るくなった。

ようやく自由になれたからだろう。


勿論、俺だけのせいではない。



「天音ちゃ~ん!ぐっもーにん!」


晴れ渡る空に相応しい能天気な声。

俺を素通りし、小柄な娘がシリウスに抱きついた。


「えへへー。おはよう、夕ちゃん」

「おはよー、天音ちゃん」


吉原夕夏よしはら ゆうげ

小柄な体躯に無垢な笑顔。

栗毛のツインテールも相まって、どこの中学校に出しても違和感はないだろう。

その筋金入りの人懐っこさは、今日も絶好調のようだ。



「おうおうおう、朝からいちゃついちゃってまー」

「ごちそうさんです」



その後ろから、さらに二人の男女が近づいてくる。


一人は健康そうな烏羽色の髪ショートヘアの少女。

通学鞄を肩に掛け、いかにも気が強そうな風体。

飾りっ気はないが、首から下げたメタルプレートがチャームポイント。

刻まれた文字は、《Comparisons are odious.(他人と比べんな)》


もう一人は、長めの黒髪、逞しいガタイ。凄めば凶暴性を帯びるであろう顔立ちの少年。


「おっす。轟」

「おは。鳴」


少年の名は滝川轟たきがわ ごう。俺が高校で作った初めての友人。

何かと気の合う悪友で、一緒につるむことが多い。


「あたしはー?」

シリウス、夕夏と戯れていた少女がこちらを向く。


「はろ。タツ

「よっ。竜」


「違ーーう!!あたしの名前は竜胆!高峰竜胆たかみね りんどうだってーの!!」

「いや、だから竜だろ」

「そうそう、竜だろ」


うなずき会う鳴と轟。


「うわぁぁぁん!!」

泣き叫ぶ竜胆。




いつも通りの日常。

守り続けたい日常が、今日も始まる。








読み切りやってから連載、というのをやってみたかったんです。

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