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愛情たっぷりの妹と、恋さえ知らない兄  作者: にとろ
妹の想い、兄の考え
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008:「風聞」

 なんとか昼食を無事食べ終えたあと、教室に戻ると俺に数人の視線が向いてきた。気のせいかなと思ったのだが、俺が席に着くまで視線が追ってきていたので間違いではないだろう、何故?


「蓬莱、あんた噂になってるわよ」


 わざわざ陽キャグループから離れてきた真希が教えてくれた。


「お昼ご飯、雲雀ちゃんと一緒に食べたんでしょう? 陰キャが美少女と一緒に昼ご飯を食べてたって話題に一部でなってるわよ」


「うぅ……俺は昼飯も静かに食べられないのか……」


「諦めなさい、妹が美少女なことを後悔したら?」


「冷たいな……」


「私は蓬莱が冷遇されようと関係ないもの」


 ドライなやつだな。友達が困っているのに無視か。いや、そもそもこの陽キャに友人として認識されているかも怪しいものだ。勝手にこちらが友人だと思っているだけかもしれない。


「まああの子が妹であることは私が説明はしておいてあげたわよ? ただ単にあなたの妹なのに可愛すぎるって皆思ってるんじゃない?」


「ん……ありがと、真希は良いやつだな」


「精々私に感謝する事ね、あなたたちが本当に兄妹なのか疑わしいとは私も思ってるんだけどね」


「ひでえ! 俺と雲雀は確かに兄妹だよ、生まれたときの写真も残ってるんだぞ」


「ふーん……それにしてもブラコンに育ったものねえ」


 そうなんだよなあ……何で俺なんかに積極的に関わろうとするのか分からない。俺が恋人を作るのを必死に邪魔しているようだし、何か恨みでも買ったかねえ……


「心当たりはないよ、そういう星の下に生まれたんじゃないか?」


「ブラコンになる星なんて胡乱なものはさすがの神様も作らないと思うけど……」


 まあそらそうだろうな、神なんて者がいたとして兄を愛するべしなんてことを言っている聖典は一つも無いからな。


 しかし未だに俺に視線を向けてくる奴がいる、はた迷惑な話ではあるが、食堂で雲雀と漫才を繰り広げてしまったのでしょうがないか……まったく、目立つもんじゃないな、ロクなことにならない。


「まーでも安心したわ」


「何がだよ?」


「あんたが妹を好き好き言ってたらどうなることかと思ってたからね」


 なんだそんなくだらない心配か。


「ないよ、そもそも雲雀だって俺のことを本気で好きなのかなんて分かんないだろ?」


「そこは疑う余地がないと思うんだけどね……」


 そうか? 俺には妹からの好意は感じられないのだがな。ただ単に兄妹として俺に頼っているだけだろう、特別な感情があるわけではなく便利な兄という扱いだと思うんだが。


「真希は勘ぐりすぎだろ、アイツにそんな深い考えはないぞ」


「単純なのは蓬莱じゃないかと思うんだけどね……」


「そんなに兄が大好きなんて妹はほとんどいないよ、多分アイツも不安なんだろ」


「忠告はしておいたわよ? 私に問題を押しつけないでね?」


「なんでお前に押しつけるんだよ」


 それだけ言って陽キャ達の元へ戻っていく真希。俺はスマホでソシャゲ情報の収集をする。へえ、あそこがソシャゲはじめるのか、チェックしておこう。


「蓬莱、昼休みに一緒に食事してたのが妹ってマジか?」


 陽キャが突然話しかけてきた。


「え、ええそうですよ」


 慣れない会話イベントについつい敬語調になってしまった。クラスのさわやか系から話しかけられることがないのでキョドってしまう。


「よかった~誰とも付き合ってないんだな。なあ、あの子が喜ぶ贈り物とか知ってる?」


「現金……ですかね……」


「え……なにそれ?」


 おっと、思わず本当のことを告げてしまった。アイツは現金が一番嬉しいタイプなんだがな。とはいえそれをあからさまに言うのはマズかったか。かといって女の子が送られて喜ぶものなど心当たりがない。


「真希の方が詳しいと思いますよ」


「え、鈴木のやつが知ってるの?」


「少なくとも俺より女子が送られて喜ぶものには詳しいかと」


「分かった、ありがとな、蓬莱」


 そう言って仲良しグループに帰っていった。俺は普段相手をしない真希以外の陽キャと話して神経が疲れ果ててしまった。人間関係というのはこの世でもっとも煩わしいものではないだろうか、そう思えてしょうがない。


 俺はスマホを出してソシャゲの周回を始めた。幸い昼休みの残りを潰すには十分な数のゲームが手元のスマホに入っている。『シスターズクラウン』の周回を終えてホーム画面に戻した。このゲーム、サ終するのだがそれを看取ってやるつもりでログボをもらっている。


 終わってしまうのはいつだって悲しい。しかし始まるものもある。新規サービス開始ゲームをチェックする。最近では外国のゲームでもやたら日本人になじむ絵のゲームが普通にあるので国産だけをチェックするだけでは追いつかない。スマホの世界はゲームで満ちあふれている。


「蓬莱、ファンタジールールの今回のイベント報酬って取った方がいいか? 人権キャラなら課金しようかと思うんだが」


「石を割ってまで周回する必要は無いよ、報酬が廃人の喜ぶようなものだからな。エンジョイ勢は課金してまで周回する必要は無いぞ」


「そうなのかー……最近このゲームSSR全部持ってるのが前提になってるよな」


「ローンチしてから長いからな、新規も見込めないからだろ」


「既存ユーザは金の卵ってわけか、いい気はしないな」


「ソシャゲのライフサイクルなんてそんなものだ、サ終が見えていないだけマシだよ」


 ソシャゲは突然サ終宣言をするからな。油断も隙もあったもんじゃない。


「そうか、参考になったよ」


「俺も運営側の人間でもないからあんまり信用するなよ-」


 そう言って一人のソシャゲーマーを見送った。あてにされているようだがゲームによってはサーバがクラッシュからの復帰不可能でサ終とかもあるからな?


 そう思いながら午後のうららかな日差しを浴びながら退屈な授業を受けた。英語に力を入れているようだが、ここは日本だし、意味があるのかな、などとかつては思っていたが、ゲーム配信プラットフォームが英語のみだったりしたので少しだけ真面目に授業を聞いている。


 今日は静かにPCでゲームでもするかな……そう考えると少しだけ授業もやる気が出た。

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