9、貴方への想い
.....。
翌日。
登校をしていると目の前に春香が立っているのに気が付いた。
俺はその姿を見ながら真剣な顔をする。
しずちゃん、と言ってくる。
俺はその言葉に、ああ、と返事をした。
「.....有難う。しずちゃん。色々と」
「何度も言っているってか他の人達にも言っているけど。.....俺は何もしてない。.....謝られる事もない」
「いや。今回は言わせてもらう。私が引き金だから」
「.....そうか」
俺はその様子に答えながら、なあ。春香、と言うと。
驚きに満ち満ちた感じで俺を見てくる春香。
ああそう言えば春香って呼ぶのは久々だな、と思う。
そして春香は涙を浮かべて、うん、と答える。
「俺も行き過ぎた部分があるかもしれない。.....だから.....一応謝っておく」
「.....何も悪くないよ。.....貴方は」
「.....というか一つ聞いて良いか?何でお前はそんなに必死なんだ?」
「それは.....まあ私は貴方に嫌われるのが嫌だからってのもある。.....だけどそれ以外にもある。.....私は貴方の事が.....心から好きだから。だから必死になっている」
「.....へ?」
素っ頓狂な声が出た。
というか何回も素っ頓狂な声と表現しているが。
そんな感じなのである。
俺は愕然としながら涙を浮かべる春香を見る。
だから嫌われたくなかったのか、と思いながら、だ。
「私は君が大好き。.....こんな誤解は.....というか.....私が悪いんだけどね」
春香は涙を浮かべた。
そして、私は無理矢理言われていた。
プロデューサーに。
だから付き合っている感じだった、とも説明する。
俺はその言葉に目を丸くしながら春香を見る。
「.....お前.....そんな.....」
「.....だからお願い。私は嫌々ながらしていた。.....き、嫌わないで」
「.....」
俺は顎に手を添える。
そして春香を見た。
それから、そうなんだな、と答える。
そうしてから、取り敢えずは歩こう、と提案する。
「そうだね。.....うん」
「.....春香」
「.....何?」
「.....正直、仰天としか言いようがない。お前.....そんな嫌な事を隠すのもあって必死だったんだなって」
「.....うん」
言いながら歩き出す俺達。
そして笑顔になる春香。
俺はその姿に苦笑しながら歩いて行く。
すると立ち止まった。
「.....ねえ。.....私.....その」
「.....?」
「お弁当作ったんだけど.....食べる?」
「.....」
懐かしい言葉だな。
俺は思いながら春香を見る。
春香は俺に対して控えめに笑みを浮かべながらチラチラ見てくる。
俺はその姿に、お前が食えって言うなら食う、と回答する。
「.....うん。食べてほしい」
「.....じゃあ食べるよ」
そして俺達は学校の登校の為に商店街を歩く。
その際に.....春香が切り出してきた。
私がアイドルになりたい理由って話したっけ、と。
俺は目を丸くしながら見つめる。
いや、と言いながら。
「.....私ね。.....そもそもアイドルなんかなりたくなかったんだよね。こんなプロデューサーに出会うぐらいだし。それに一生懸命に頑張っているその.....周りにも申し訳ないから。必死に.....頑張っているから」
「.....?.....そうなのか」
「.....ほら。私の家って.....貧乏だったからね」
「そうだな。確かに.....」
母親と妹と春香の3人だった。
父親が居ないので.....所謂、あし○がの活動に頼っていたのだ。
俺はその事は聞いてはいたが。
思いながら春香を見る。
でも今はアイドルって生活が楽しいし.....お金もそこそこだから。.....貧乏じゃなくなったけど.....でも。今でもアイドルってのは人を笑顔にするから。.....だからずっと続けようかなって思って、と話す。
「.....そんな理由があったんだな」
「人を笑顔にして.....明るくする。.....もうそれだけで胸がいっぱいなんだ♪」
「.....春香.....」
「.....私は貧乏になるよりも君に嫌われるのが嫌だから。.....だから怖かった」
「.....」
そんな恐れている顔を見ながら俺は目線を逸らす。
そして春香を見た。
何でお前はそんなに俺が好きなんだ、と聞いてみる。
すると、私は君の優しい笑顔に惹かれた、と言ってくる。
「誰にも負けたくないから。.....だから.....復活した今、頑張る」
「.....そうか.....」
「私がもし恋の相手に選ばれなくても.....私は君を応援している。.....君が好きだから」
「.....」
正直。
俺は.....コイツの事を.....何だろうか。
どうしたら良いのだろうか、と見つめる。
これから先どう接したら良いのか。
思いながら春香を見た。
「春香.....色々と.....何も言えないけど.....」
「分かってる。私は君を.....見守っているから。.....私も何も言えないけどね」
「.....」
何か言葉が上手く出てこない。
俺は笑みを浮かべる春香を見ながらそう思う。
そして唇を噛んだ。
それから顔を上げる。
「取り敢えず俺としては.....お前の事に関して申し訳ないって思う。.....謝る部分もあるから。.....だからそう言っておくから。.....学校行こうか」
「.....うん」
何も歩めなかった世界に。
花が一応.....咲き誇る様なそんな世界になってきた。
そう思いながら俺は春香を見る。
そして歩き出した。
.....。