5、旗本美幸の願い
飯島の事が信頼.....出来ない。
どうしても信頼出来ない。
だけど何が間違いなのかは見定める必要性がありそうだ。
俺は思いながら.....目の前の鈴と鈴香を見る。
鈴も鈴香も俺を見ながら笑みを浮かべて楽しそうだ。
唯一俺だけが.....感情が不安定だった。
「.....美味しいですか?.....その」
「.....あ?.....ああ。美味しいよ。有難うな」
「.....良かったね。鈴香」
「うん。良かった。本当に良かったよお姉ちゃん」
そんな会話を聞きながら俺は顎に手を添える。
そうしていると、じゃ、じゃあ、と2人が切り出してきた。
早速だけどアーンしようか、と言いながら。
俺はボッと赤面しながら、は?、と素っ頓狂な声を出す。
「だってせっかくだから.....ね?」
「そうですよ。先輩」
「.....ったくお前らは.....」
ぶん殴られた傷も痛いし。
平手打ちを食らった傷も痛い。
しかしこれは名誉ある傷だと思う。
そう考えながら俺はアーンをしながらイチャイチャした。
☆
クラスでは静寂が訪れていた。
いくら説明した所で.....俺のやった事はかなり難しい。
だから冷たい視線ばかりだ。
俺はその視線を置いてからそのまま座っていると。
「こんにちは」
「.....?.....お前.....?」
座っているとクラス委員の旗本美幸が俺に挨拶をしてきた。
ボブヘアーの美少女風紀委員だ。
俺は?を浮かべてその旗本を見つめる。
どうしたんだ、と聞いてみると。
「.....うん。.....えっとね。春香ちゃんと何かあったのかな、と思ってね。.....ずっと仲が悪そうだから」
「.....浮気の事だよ。それでな。険悪だ」
「.....うん。やっぱり」
「だからその。接しずらいってのもあるんだよな。何かもうゴチャゴチャだ」
「そうなんだね。.....その。.....もし良かったら放課後になったら生徒会室に来てくれない?」
「え?」
そういう時は心を落ち着かせるのが良いの、と言ってくる旗本。
俺はその歯に噛んだ様子に苦笑する。
そうか、と言いながら。
コイツは癒し系だもんな、と思いながら。
そして俺達は放課後に生徒会室に行く事にした。
☆
「私ね。実は職業として社会福祉士を目指しているの」
「.....え?そうなのか」
「うん。人の話を聞くのが好きなの」
「.....そうなんだな。だけどそれだったら臨床心理士とか.....」
「頭が悪いからね。私はそれぐらいが丁度良いの」
「.....!」
それからその。
相談はちょっと雑用込みだけど.....報酬は茶菓子.....お菓子って事にしてくれない?、と旗本は苦笑する。
俺は頷きながら、じゃあ開けてくれるか、と言う。
それから生徒会室を開けると。
書類の山が沢山あった。
「.....成程な。こりゃひでぇ」
「うん。生徒会長が整えるの好きじゃなくて.....これを整理しながら話を.....その。伺えたらなって思って」
「.....分かった。じゃあそうしようか」
旗本は頷きながら、有難う、と笑顔を浮かべてくる。
そして整理を始める。
すると旗本がとんでもない事を告白した。
私ね。実はアイドルなんだ、と。
俺は?!と思いながら旗本を見る。
「同じメンバーなの。春香ちゃんと。春香ちゃんより研修生の格下だけどね。雑用係みたいな」
「.....そうだったんだな.....」
「そう。だからその。えっとね」
「.....?」
「春香ちゃんのライブに来てくれない?春香ちゃんは.....あのプロデューサーに酷い事をされても笑顔だから」
そう言いながら俺にチケットを渡してくる旗本。
これがお礼でも良いんだけど、とも言う。
ウインクしながら、だ。
俺は旗本を見てからそのまま頷いた。
チケットを見ながら。
「.....アイツが.....そうなんだな」
「春香ちゃんの相談にも乗ってるけどこういうのも良いじゃないかって思って」
「.....」
「春香ちゃんの一生懸命さを一応感じてみて。.....浮気じゃないと思うから。.....私も春香ちゃんの置かれている裏は知らないけどね。.....今のアイドルの世界の闇を.....知れないから」
アイツとの対話.....。
そう思いながら俺は旗本を見る。
闇、か。
何が起こっているんだろうなマジに。
考えながら俺は旗本を見る。
「有難うな。旗本」
「うん」
「それなりの.....事情は知れた」
「.....うん。私達もどうにか出来れば良いけど。アイドルだから動かせない。今の世界を」
「.....そうだな。.....そんなもんだよな。世界って」
俺達は顔を見合わせながら少しだけ苦笑する。
それから俺達は作業をまたし始めた。
相談にずっと乗ってもらいながら。
すると旗本が、アイドルは本当に大変なの、と言ってくる。
そして、でも根は真っ直ぐだから。きっと事情がある、と言ってくる旗本。
「.....だから理由も聞かないのは駄目。.....一応聞いてあげて。春香ちゃんの思いとか考えを」
「.....そうだな。.....お前には本当に色々と世話になるな」
「.....気にしないで。.....ただ何時も仲が良かった君達の関係とかが気になったから」
「.....有難う」
それから俺はチケットを見ながら顎に手を添える。
そして考えた。
どうしていくべきか、と。
その様に。