14、春香と春色
.....。
キスまでされたのだが。
俺はどうしたら良いのだろうか、と思いながら数学の問題を解く。
しかし全く.....誤差が合わない。
マズイ.....動揺している。
「.....何か.....教える側になってない?私」
「.....ま、まあ今日の調子が俺が悪いって事だ」
「ふーん.....?」
鈴が怪しげに俺を見てくる。
その視線に、助けろ、という感じで鈴香を見るが。
鈴香はニコニコしながら見守っているだけだ。
俺は額に手を添える。
そして数学の問題を消した。
「取り敢えずは今日は解散するか」
「そうだね。完全下校時刻も迫っているし」
「.....ですね。先輩♪」
お前のせいだけどな、と思いながらも。
俺は鈴香を睨む事なくそのまま鞄を肩から掛けてから。
そのまま図書室を後にした。
それから俺は下校する。
そして目の前を見ると。
そこに.....何故か静香が居た。
どうやら買い物帰りらしい。
俺は、静香、と声を掛ける。
「あれ?お兄ちゃん」
「持つぞ。重いだろ荷物」
「うん。有難うね」
「.....ああ。気にすんな」
静香の顔がなかなか浮かばれない顔だった。
俺は?を浮かべながら、静香。どうした、と聞くと。
今日テストあったんだけど、と相談してくる。
そして、点数が悪かった、と言ってきた。
「何でだろうって思って」
「.....そっか。.....まあそういう事もあると思うぞ」
「そうかな。.....手を抜いたつもりは無かったんだけど」
「でも一生懸命にやったんだろ?じゃあ誇って良いんじゃないか?」
「そうなのかな.....」
ああ、と言いながら俺は頭を撫でる。
そして帰宅する為に道を歩いていると。
小学生ぐらいの女の子が階段に座っていた。
その姿は少しだけ痩せており。
白髪だった。
「.....?」
「!」
その女の子はため息ばかり吐いていたが。
俺達を見るなり人が通ると思ってなかったのか慌てて駆け出す。
そして転んでしまった。
擦り剥いた様である。
「あらら。.....おい。大丈夫か」
「.....」
女の子は静かに俺を.....ってコイツ何だか顔が春香に似ている。
俺は衝撃を受けながらも、取り敢えず絆創膏やるから、な?、と話す。
その女の子は目を丸くしながら俺を見ていた。
白髪の事で偏見の目に晒されると思ったのだろうか?、と思ったのだが。
違う様だった。
「雫さん?」
「.....!.....君.....やっぱり春香の妹さんか?.....かなり.....やつれているな」
「.....実は.....その。メラニン色素の異常で.....髪が白くなって.....」
「確か名前は.....春色だったよな?」
「はい。春色です」
え?じゃあ春香お姉ちゃんの妹ちゃん.....こんなに姿が.....、と衝撃を受ける静香。
俺は、そうだな、と思いながら春色ちゃんの足に絆創膏を貼る。
そして、大丈夫か、と告げる。
春色ちゃんは、はい、と笑みを浮かべた。
「.....昔と容姿が変わってしまって.....何だか不釣り合いですよね」
「そんな事はないが.....その。驚きだ」
「.....メラニンの異常で.....栄養も偏ってしまって.....白髪になったんです」
「.....春色ちゃん.....」
春色ちゃんは髪の毛に触れながら少しだけ悲しい顔をする。
何かそのイジメの標的になっているんです、と言いながら。
俺は小学校時代を思い出す。
そして、そうか、とだけ返事をした。
「.....そういう時は学校に行かなくて良いんだぞ。春色ちゃん」
「.....え?」
「.....私のお兄ちゃんもイジメを受けていたの」
「.....そ、そうなんですか?」
「そうそう。.....だからそういう時に学校に行っても仕方が無いんだ」
言いながら俺は春色ちゃんの手を握って立ち上がらせる。
真っ白な腕を、だ。
だが傷がある。
多分.....イジメによるものか。
「.....ね。春色さん」
「.....何?静香さん」
「.....友達にならない?」
「.....え.....良いの?」
今までずっと私達は控えていたけど。
でも今日からお友達になろうよやっぱり、と言う静香。
俺はその姿に苦笑する。
そして、どうかな。春色ちゃん、と尋ねる。
「.....私.....良いのかな」
「良いに決まっている。.....な?静香」
「そうだね」
そんな会話をしていると。
春色!、と声がした。
背後を見ると.....春香が慌てて立っている。
探していたのだろう。
俺は立ち上がり春香を見る。
「その.....有難う。しずちゃん」
「.....まあな。.....良かった。探していたんだな」
「そう。勝手に出て行ったから.....心配で」
「.....妹さん病気だったんだな」
「.....うん」
いつか君に言おうとしていたんだけど。
タイミングが見つからなかった、と言ってくる春香。
俺はその姿を見ながら、そうか、と返事をする。
そして俺は春香を見る。
「.....お前も大変だな。.....何かあったら言えよ」
「.....うん。昔と違うから.....そうだね」
春香は涙を浮かべてそして拭う。
俺はそれを見てから静香を見てみる。
静香は春色と手を繋いで.....笑顔を浮かべていた。
それは嬉しそうな.....そんな笑顔だ。
.....。