10、旗本の過去と今を救う理由
.....。
「良かった。.....一応でも.....春香ちゃんと仲を取り戻せたんだね」
「旗本。有難うな。お前のお陰もある。.....今の状況まで回復したのは」
「.....私はチケットをあげただけだから。アハハ」
教室にてだが。
俺は旗本と会話していた。
旗本は俺に笑みを浮かべながら見てくる。
その姿に俺は頬を掻く。
そして目の前の女子達に混じっている春香を見る。
「.....正直言って.....全てが壊れそうだった。.....俺が何か間違っていたのだろうけど」
「.....うん。.....でもね。.....それに気付けただけ凄いよ」
「.....?.....それはどういう意味だ」
「.....私ね。昔好きな人が居たんだ」
「旗本の好きな人?興味あるな」
「.....うん。有難う」
だけどね。
そんな好きな人と訣別してしまったの、と言ってくる旗本。
俺は目を丸くしながら、マジか、と話す。
すると旗本は、うん。本当の事だね、と苦笑する。
そして前の席に腰掛ける。
「.....私は.....傷を付けてしまったの。その人を」
「.....」
「勘違いの勘違いだった。.....仲は戻らなくて.....その人は好きな人が出来た」
「.....そうだったんだな」
「.....うん。.....それでね。.....私は決めたんだ。.....もう同じ人にこんな運命に遭遇というか好きな人を手放す様な気持ちになってほしくないって」
「.....ああ」
それで現れたのが君だった。
だから私は必死に貴方に寄り添ったんだよね、と旗本は伸びをする。
俺は、未練は無いのか、と聞く。
すると、私は未練はタラタラだよ、と言ってくる。
「.....でも私は今が楽しいからそれで良いかなって」
「.....強いんだなお前」
「強くないよ?.....まあ今でも泣くしね」
「.....そうか」
そんな会話をしていると。
何の話をしているの?、と春香が来た。
春香は笑みを浮かべている。
俺はその姿に、ああ。旗本の過去の話だ、と答えた。
「.....え?旗本ちゃんの?」
「うん。.....私も結構.....馬鹿な事をしてきたからねぇ」
「.....そうなんだ」
すると旗本は手を叩いた。
そして、さて!、と言いながら椅子を譲る。
それから、お座りなさいな。好きなんでしょ?盾宮くんが、と言ってくる。
えぇ!!!!?なんで知っているの!?、という感じの顔になる赤くなった春香。
「そんなの見れば分かるんだけど.....」
「そうだねぇ.....」
周りの女子達も頷く。
俺は額に手を添えながら春香を見る。
春香はみるみる真っ赤になっていった。
そしてあわあわする。
そうしていると、盾宮、と声がした。
「.....何だ」
顔を上げるとそこには俺を平手打ちした佐藤が立っていた。
複雑そうな顔をしている。
何だ一体、と思いながら睨んでいると。
佐藤が頭を下げた。
そして、すまなかった、と言ってくる。
「.....お前の事。何も調べずに知りもせずにカッカしてしまった。それに殴るのは良くない。.....反省したんだ」
「.....お前.....」
「全て旗本から聞いた。.....お前の家の事。マジだったんだな」
「.....」
「苦労しているんだって事を。嘲笑う様な。.....悪かった」
そして佐藤は俺を見てくる。
俺はその姿に、そうやって謝ってくれて嬉しいけど。.....俺もお前に謝らないといけない、と言う。
佐藤は、え?、と顔を上げる。
それから、あの時はどうかしていたんだ、と告げる俺。
そうしてから佐藤を見る。
「平手打ちしてもらって逆に目が覚めた。.....俺は.....お前に感謝しかない。高い勉強代になった。.....それに.....お前の事を誤解していた」
「.....盾宮.....」
「.....佐藤。謝ってくれて有難うな。.....だから俺からも謝る。.....すまなかった」
「.....分かった」
いつの間にかだが。
俺はクラスメイトとも仲が良くなっていた。
何というか.....まあその。
まだ一部のクラスメイト達は訝しげな目をしているが。
俺は思いながら旗本と春香を見る。
2人は笑みを浮かべて俺を見ていた。
「.....良かったね。本当に」
「.....そうだな」
「.....あの時とは違うよね。.....うん」
「.....」
小学校時代か。
俺は思い出したくもないが。
イジメを受けていたしな。
親が居ない事で、だ。
だけど.....確かに.....その時よりかは遥かにマシだな。
思いながら俺は窓から外を見た。
そして風の吹いている世界を見る。
.....。