1、幼馴染との絶縁
.....。
例えばの話だが。
壊れたものは全てが戻らないと言えるがそれは本当なのだろうか。
その哲学の様なものを今までずっと分からなかったのだが。
でもそれを俺、盾宮雫にとっては本当であると思う感じがした。
この世界の原理だとは気付き始めてはいたが.....こうもあっさりだとは。
幼馴染と付き合っている俺が他の男と幼馴染が腕を組んでたりしている形の中で.....俺の中の何かが音を立てて壊れ去ってしまった。
ただ絶望しか目の前にない。
俺は思いながら放課後に幼馴染を教室に呼び出した。
因みに幼馴染と男が何度も面会していたらメンタル保たないと思ったのもあるのだが。
本当にコーヒーが一気に氷でアイスコーヒーになって冷める様な。
そんな感覚だった。
その思いを抱きながら俺は帰宅してから。
自分を改めて見つめ直した。
伸びた前髪、伸びた眉毛。
それを見てから決める。
女ってのは所詮こんなものだ。
容姿もそうだが全てをリセットしてやると。
☆
「御免なさい.....」
1日前の教室にて頭を下げてそう言われた。
俺の心は本当にビキビキとヒビが入ってしまった。
何だよ一緒に腕を組むって馬鹿なんじゃ無いのか。
俺は悲しげに幼馴染を見る。
謝るのは必死な様子だった。
だけど.....何だか感情が篭ってない感じがする。
俺だけかもしれないけど。
まるで事の重大さが分かってない。
俺に対してそう謝るのであれば。
初めから俺と付き合わなければ良かったじゃないか、と思う。
何故こうなってしまったのか。
「誤解してる。私は付き合っている訳じゃない。あれも.....全部.....」
「.....」
言葉にかなり詰まり悲しげな顔をする幼馴染。
若い格好の良い.....俺よりも遥かに格好の良いイケメンの大人と腕を組んでいたのは事実だろ。
俺はそう言いながら幼馴染を見る。
完全に青ざめる幼馴染。
かなり間抜けな声だ。
ヤバいと思ったのか血の気が引いている。
そこまで恐れるなら事実だろうと思う。
恐らくだがあの男と.....二股で付き合っていると思う。
真面目にそう思えた。
色々と言いたいんだが疲れた。
壊れてしまった気がする。
もう壊れたものは戻らない。
そんな感じがしてならないのだが。
だから1年間付き合ったとした幼馴染であっても。
俺は思いながら.....後輩にも絶望の様に言われた言葉を思い出しながら。
絶望するがままに言う。
「もう良いよ」
「.....え?」
「嘘ばかりの関係は要らない。それもお前.....笑顔だったじゃないか。それにあんだけ嬉しそうに腕を組んでしかも長時間デートしている様な.....お前にあんな奴が居るんなんて聞いてないしな」
「え?.....その.....確かに言ってなかった。それは.....その」
「.....お前が浮気していたって事が事実だな?相談だ?計算して5回もあの男との現場を写真に抑えたんだが?それでも浮気じゃないと?明らかにおかしいだろ。俺の予定も潰した日もだったろ」
「そんな.....それは付き合っているんじゃないよ.....お願い!信じて!.....私は.....」
この野郎。
嬉しそうな俺に向けないあの顔。
アイドルとして活躍だ?
下らない。
それは嘘だろう。
所詮は女ってのは、と思ってしまった。
これ以上関わると俺の中の全てが壊れてしまう。
思いながら俺はそのまま元幼馴染を切り捨ててから。
そのまま土砂降りの教室の中。
泣き叫ぶ幼馴染を放置して帰った。
☆
そして俺は帰宅次第。
全ての連絡先を切り捨てた。
髪の毛と共に、だ。
それから絶望と共に全てを切り捨ててから。
俺は美容室に向かい。
変えてもらった。
「.....そうなるともうこのスマホも要らないけどな」
ゲームするだけでスマホは要らない気がしたが。
二つ折りの携帯でも良い気がした。
そんな事を呟きながらスマホを仕舞ってから。
通販で格好の良い服を買ってからそのまま着てみた。
それから黒縁の伊達眼鏡を掛けてから目の前のイカツイ面を見る。
その鏡に映った姿はあまりにも醜かったが。
だけど今の俺には丁度良い気がする。
「連絡先を切ってから幼馴染も後輩もリセットした。.....全て消えたな。俺は変わってやる」
俺は全て切り捨てて1からスタートしたい。
そう思えた。
疲れた今の関係に。
だから全てをリセットしてからやり直す。
今は高校2年生だが。
それでも入学したての1年生の気分で全てをやり直してやる。
思いながら俺は目の前を見た。
☆
「先輩!」
「.....」
「その。どうしたんですか?随分と格好良くなりましたね」
「そうだな」
連絡先を消した1年生の後輩の虹宮鈴香が俺に声を掛けてくる。
俺はその姿に眉を顰めながら見る。
そしてそのままスルーした。
すると虹宮は、え!?どうしてスルーするんですか!、と言ってくる。
連絡先も無くなったし!、と言っている。
俺はその姿に溜息を吐いてから。
虹宮、と向く。
それから睨んだ。
「もしかして先輩。私が先輩の格好良さを認めれないって知っての?アハハ」
「.....」
コイツもそうだが小馬鹿にしてくる。
ご機嫌を取ろうとしている様だがそんな真似はもう通用しない。
俺は切り捨てる、と思いながら虹宮を見る。
そしてこれで遂に壊れた。
全てが。
「すまないが。もう話し掛けないでくれ。お前のその小馬鹿はうんざりだ」
「え.....え.....?」
「お前の事がウザいって言っているんだが」
「え」
愕然としながら震えて青ざめる虹宮。
俺はその姿に話を続ける。
お前は散々小馬鹿にしたな俺を。その分だ、と言う。
すると虹宮は涙を浮かべた。
じょ、冗談ですよね?、と泣きつつ言いながら。
「冗談で人はこんな事は言わないな。もう二度と現れるな。俺の前に!」
「そんな!?止めて.....嘘。え!?」
そして俺はそのまま去った。
すると膝から崩れる音がしてくる。
泣き叫ぶ様な声がした。
俺は、当然のざまだ、と思いながらその気分で教室に入る。
そうしていると元幼馴染が話し掛けてきた。
「そ、その.....」
「何だ」
「う、浮気じゃないから。お願い。あれは無理矢理なの。説明させて。.....その。お願い。怒らないで.....」
「浮気は浮気だろ。絶対にあれは浮気だ。あれだけ仲良くしていて?俺の感情も考えろ。ふざけるな。お前とはこれからは関わりたくない」
俺は言いながら椅子に腰掛けた。
何事かと周りが騒いでいたがそんな事も気に留めず。
涙を流して詫びて飛び出して行った元幼馴染を見つめる。
さてこうなると後1人か、と。
全員俺を馬鹿にしやがって、と思う。
俺の中の何かが壊れてしまった。
.....。