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9.殺害されたのは誰?

 わたしが驚いたのに比べ、ヴィクターは何の動揺も見せない。


 こう言うところで能力の差を感じ、子供の頃は悔しくて張り合っていたと思い出した。


 その間彼は宙空(ちゅうくう)を睨みつけ考え込んでいたようだ。


 私だって負けずに小首を傾げ、腕まで組んで考える。


 そして、どちらからともなく歩み寄り、彼が私の耳元で(ささや)いた。



「えーと、フールの言っていたチャボットって、キミと殿下が共同で改良したニワトリだよね?」


「多分そうだけど……名前が違うわ」


「……だろうね」



 私の指摘にヴィクターが小さく何か呟いていたが、ソレは聞き取れなかった。



「でも殿下は完全にチャボットの事だと思ってるぞ?」


「分かってるわ。だけどフール様とルーザリア様が話してる内容は、多分『ジドリー』の事よね?」


「いまどきジドリーを知らないほうがどうかと思うよ」




 ジドリーとは、従来より丈夫な卵をたくさん産むように改良したニワトリの品種名だ。




「あれって今『自領に一番導入したい家畜ナンバーワン』だって(ちまた)を騒がせているのにな」


「そうなの!? そこまで人気とは思ってなかったわ」




 この頃お礼を言われる頻度が増えていたけれど、そういう背景もあったのかと納得した。




「それで、チャボットって……草原の王国から殿下に贈られたヤツだろ?」


「そうよ。チャボットはクラウン殿下の白馬よ」


「それが何だって、こんなに話が(もつ)れたんだか」


「知ってるならあなたが誤解を解いてくれたら良かったじゃない」




 あっさり正解を口にした上で我関せずを貫くヴィクターに、私はつい八つ当たりしてしまった。


 分かってる。


 自分の馬の事に関心を持たず、こんなバカげた罠にかかるなんて殿下のせいであってもヴィクターのせいではない。


 だけど何もこんな学園の卒業生の関係者が全員集まっている場で、こんなふうに恥を晒すなんて……。


 やっぱり何か企んでいると思った時点で潰しておくべきだった。


 これではクラウン殿下失脚もあり得る状況だ。


 婚約解消さえできればと思っていた自分の甘さが悔やまれる。

次話『婚約破棄は魅力的』です。

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