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おっさん貴族〈バスタード伯爵side〉

本日2話目です。

 ルーザリアのために呼ばれた医者は、すぐそこで待機していたのかと疑うほど早くやって来た。


 そして時間をかけ丁寧に診察する。


 やがて診察が終わると医師がクラウン殿下に向き直った。




「問題ありません、心労による一時的なものでしょう」


「そうか……手厚く看護してくれ」




 最初からの約束で、これ以上彼女と一緒にいる事ができないと知っているクラウン殿下は、ガックリと肩を落とし部屋を出た。


 私は医師とそれを見送り、前を見たまま問いかける。




「どうだった?」


「はい。あれは(いにしえ)より伝わる『魔眼』でしょう」


「誠か?」


「恐らく間違いないかと……」




 医師の姿をした男が一礼して足音も無く去って行く。


 彼の見立ては確かだろう。


 何しろ鑑定魔法が使えるのだから。


 苦労して彼女に会う手段を講じただけの見返りはあったようだ。


 面会に『クラウン殿下の立ち合いの下であれば』と条件を付けられた時は参ったと思ったが、まぁそれほど厄介な事にはならなかったし良しとしよう。


 彼女はこれまでにない高値で売れそうな商品なのだ。


 準男爵の娘一人消えた所で揉み消すのは容易(たやす)い。


 あとは買った者が良いようにするだろう。




 次のオークションが待ち遠しいね……。




 私はホクホクをした表情を隠すため、口元に手を遣ったまま仕事場へと歩き出した。

次話『心の声〈フールside〉』

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