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運命の出逢い〈クラウンside〉

本日1話目です。

 私がルーザリアと出会ったのは、王立学園に入学してしばらく経ってからだった。


 彼女は準男爵の娘。


 貴族は優遇されるといっても、中身はほぼ一般市民だ。


 それでも富裕層──父親が大商人だからなのか、読み書きもできるし食事のマナーも多少は知っていた。


 王子という身分のため滅多に街に出ることのない私には、庶民の暮らしぶりを面白おかしく話してくれる彼女は貴重な存在だった。


 他にも貴族ではない者はいるだろうが、彼女ほど普通に話してくれる者はいない。


 そうなるとどうしても彼女から色々聞く事になり、結果として多くの時間を一緒に過ごした。


 今考えるとそれが良くなかったのかもしれない。


 私はどうも異性の関係をよく理解していなかったようで、貴重な話を聞かせてくれる友人なのだから、それを妙な勘繰りされるとは夢にも思わなかった。


 そして徐々に彼女の表情が曇る時が増え、憂い顔で遠くを眺める姿を見かけるようになる。




「最近どうしたんだ? 何か悩みでもあるのかい? 私で良ければ話してみないか?」




 気が付いたらこんなふうに話しかけていた。


 すると彼女はホロホロと涙を溢しながら。




「殿下、ありがとうございます〜。そんな事、い、言ってくれる人なんて……ヒック、いなくて、私……私……うれ、ヒック……嬉しくてぇ……」




 子供みたいに泣きじゃくる姿は可愛らしく、不思議な輝きを放つ神秘的な瞳で見詰められたら『これは私が守ってやらなければ』という温かな気持ちが突然湧き上がってきた。


 それで私に何かできないかと訳を聞いてみれば、これがまた酷かった。


 平民と言ってバカにされたり、物を乱暴に扱われ汚され隠され、時には捨てられたり壊されたり。


 陰口も段々エスカレートして最近は堂々と目の前で言われるようになったとか。


 正直貴族の子弟ともあろう紳士淑女の者たちが、本当にそんな事をするのだろうかと思った。


 そこでそれからはルーザリアを気にするように見守っていると、本当に彼女を罵倒する令嬢や仲間外れにする現場に遭遇した。




「お前たち、何をしている!」


「え? で、殿下! これはお見苦しいところを……」


「今お前たちはルーザリアに難癖(なんくせ)付けていたな?」


「い、いえ。それは誤解です。私たちは何も……」


「それは……マナーが悪いので直してほしいとは言いましたけど、それだけです」


「そうです。私たち意地悪なんてしてません」


「まだ言うか? 私は見ていたよ? ルーザリア嬢を仲間外れにした上で怒鳴っていただろう?」


「それはその……」




 まだ言い逃れようとするのかと、私は彼らを(にら)んだ。

次話『楽しかった日々〈クラウンside〉』

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