2.チャボット
本日2話目です。
私は在りし日のチャボットを思い返す。
チャボットは三年前、草原の王国からクラウン殿下の誕生祝いとしてこの国にやって来た。
そのころのチャボットはまだ小さく、長旅で弱っていて世話が大変だった。
私は動物全般が好きだったため、動物が苦手な殿下に代わってたくさん会いに行ったし、お世話も手伝い、結果として小屋に何度も通う事になる。
だから一国の王子としての嗜みで乗馬をする以外動物に関わらないクラウン殿下には、私がチャボットを失った時の悲しみなど想像すらできないだろう。
それに動物といえばあの時だって……。
王立学園では在学中に何か研究課題を決めて、卒業までの間に論文を書くというのがある。
士官学校と違って、将来領地経営、貿易、王国内の文官職に就きたい者が入学する王立学園では、卒業するのに必須の課題だ。
しかしクラウン殿下はそれを丸っ切りやってなかったらしい。
慌てた王妃殿下が私に相談という名の押し付けをして私が進めていた研究を『二人の共同研究』とする事に決定した。
それなのに。
人払いした空き教室に呼び出した私に、クラウン殿下はこう言った。
「動物は臭いから実験はキミに任せるよ」
「え?」
「でも、王妃殿下とお約束しましたし……」
「卒業研究の事は私も止むを得ないと思っている」
「それなら……」
「だから、役割分担をしようと思う」
この人は何をどう分担するつもりなんだろう?
訝しむ私に殿下は微笑む。
「その共同研究とやらの実験はキミがやってくれ。その代わりデータを纏めて文書作成するのは私がしよう」
「それでは共同研究と認められませんわ」
「なぜだ?」
「なぜって……研究対象に一切関わらないなんて、研究にならないと思いますけど?」
「チッ! 融通が利かないな」
舌打ちされた。
しかしここで怒ってはこの王子、きっと逆ギレするだろう。
「せめて週に二、三回は様子を見にいらっしゃいませんと……怪しまれます」
「それもそうか……。仕方ない、それでは適当に顔は出そう。それで良いな?」
「……はい?」
「よし。ではそういうことで」
「え……?」
足早に去っていく後ろ姿を私は唖然と見送り、しばらくしてようやく自分が全部押し付けられたのだと悟った。
その時の私は、今度の王妃殿下とのお茶会で『やっぱり王太子妃は辞退すると言うわ!』と息巻くほどには怒っていた。
しかし冷静になれば、そんな大それた事はできないと理性が言う。
私は元々一人でするつもりだったのだからと気を取り直した。
王妃殿下の許可とクラウン殿下も関わっているという事で、王宮の飼育小屋や放牧場まで借り受けられたのが唯一の救いだろう。
そして従来よりも割れにくい『丈夫な卵をたくさん産むニワトリ』の改良に取り組み、それは見事に成功した。
結局殿下が全部書くことはなかった論文や、私が纏めた研究資料は予想外に多くの人の目を惹き、今では一般市民による飼育も始まっている。
これはすべてクラウン殿下の功績として広まっており、国民の人気取りに役立っているのだが……。
やっぱり納得いかないわ。
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