表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
<R15>15歳未満の方は移動してください。

短編集

厄祓師の1日

作者: 桜橋あかね

厄祓師(やくばらいし)の1日は早い。


朝の5時、家の隣にある小屋の扉を開ける。

彼の祓場(はらいば)だ。


先に、神棚のところにある、壺入りの清水で身体を洗う。

これをしないと、『力』が発揮しない。


清めたあとは、朝の祷を捧げる。

このルーティーンを終えると、『祓い人』がやってくる。


▪▪▪


今日の『祓い人』は、ここら集落の長の娘だ。


どうやら、最近……身体の調子がおかしいらしい。

医者に診て貰ったのだが、特に異常は見当たらなかったと聞き及んでいる。


「昨日の夜から、背中が寒いのです。所々痛くて……うぅ。」

娘が細々と言う。


「申し訳ない、少し身体を触ってもよろしいか。」

彼がそう言うと、娘は頷いた。


腰の凹みの部分を触った時、娘が悲鳴をあげた。


「ふむ、シャレンバの仕業かも知れん。」


シャレンバ……『村一番の家庭を襲う霊』で名を馳せている。

主に、背中の凹み部分に潜む。

男系を襲うとされるが、娘子に乗り移るのは珍しい。


「そういや、次期の長主(おさぬし)はどうしたのだね。」

娘に聞いてみた。

次の長主(おさぬし)は娘の兄だ。


「争いの地へ行ったっきり、帰って来ませんの。」


そう言えば、隣の集落とのいざこざが、またぶり返していると聞いた。

もしかしたら……と思ったが娘の前では言えない事だ。


「とりあえず、今はシャレンバの祓いをしよう。」


リナバの木の枝を、神棚から取った。

この枝は、霊力を失くすと言われているモノだ。

娘の腰に枝を置き、祓術言葉(はらいじゅつことば)を唱える。


「……あれ、痛くない。」

娘がそう言った。


「お祓い、これにて終縁。お疲れ様でな。」


娘は「ありがとうございました」と言って去った。


▪▪▪


最近は、一人の『祓い人』で倒れそうになる。

儀式は、他人の思う以上に気力・体力を失う。


……後継者は、居ない。

この『力』は、先天的で習得して得られるモノではない。


彼の命が続く限りは、一人でも『祓い人』が減ることに従事しないといけない。


次の日もまた、『祓い人』が訪れる……。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ