青木サダオ
中学生の時に「青木サダオ」と呼ばれていた同級生がいた。
「サダオ!」「サダオ!」「サダオ!」とクラスの誰もが「サダオ!」と呼んでいた。
私自身も彼のことを「サダオ!」と呼んでいた。
何の疑いもなく…
中学校の卒業式の日。
一人ひとり名前を呼ばれ、卒業証書を渡されるために壇上に上がっていく。
私のクラスの順番になった。
名前は名簿順に呼ばれるので「青木」はクラスでも一番初めの順番で呼ばれた。
「青木〇〇〇」
私には先生が何と言ったか聞き取れなかった。
しかし、サダオとは違う名前で呼ばれ、
彼は卒業証書を受け取るために平然と壇上に上がっていった。
私は隣に立っていた仲が良い同級生に慌てて
「おい!先生がサダオの名前を間違えたぞ!」
というと
「シッ!黙っていろ!あとで教えてやるから!」
と言われ私は口をつぐんだ。
卒業式が終わり、教室に帰る間に友人たちが私に事情を教えてくれた。
「サダオ」は本名でなくあだ名だったということを
そして、彼がなんで「サダオ」と呼ばれていたのかの理由を
理由は彼の祖父だったそうだ。
彼の祖父は彼が小学生の頃にボケてしまい
祖父は飼っていた犬を孫の名前で呼び、
孫である彼は祖父自身の名である「サダオ」と呼ばれていたそうだ。
それを周りの友人は面白がって小学校時代から「サダオ」というあだ名が定着し、
誰も彼の名前を呼ばなくなったそうだ。
その後、みんな別々の高校に進み、彼と会う機会はない
そして、30年たった今でも私は彼の名を私は知らない