ルージングラン
いまどき長距離走のある高校なんてあるのだろうか。
本番当日を迎えて、いまさら思った。
俺は運動部に入って走り込みをしているが、別に早いというわけではない。
全体から見れば上位だが、スポーツマンの中ではほどほど。
そんな微妙な順位で走っている。
半分を過ぎた頃。
「はぁっ……はぁっ……あれ、ここにいたんだ」
クラスメイトが追い付いてきた。
息は既に絶え絶えだ。
「随分頑張ってるね」
「なにそれ、皮肉?」
彼は余裕のなさそうな顔で、余裕そうな声を上げた。
「いやいや、お前運動部とか入ってなかっただろ。 それなのに上位まで来てる時点で頑張ってるだろ」
「あ、ここ上位なんだ」
彼は特に順位など気にしていないようだった。
「もしかして自分に勝ちたいとか、そういうことを目標にしてる?」
「う~ん……どうだろ」
彼は少し乱れた呼吸を必死に整えている。
「別にそういうわけでもないんだけどさ。 こういうのって真面目にやっておきたいんだよね」
「別に誰にも見られてないんだからよくね? 俺なんか監督が見てないと全力で走る気が起きないわ」
もし、これが部活の走り込みであるなら、こんな適当に流して走っていない。
「君はいろんなことにルーズだからね」
「うるせえ。 お前はいつも真面目だな。 そんなので疲れないのか?」
「あいにく、真面目以外に取り柄がないからね。 きっといつか手を抜いたときに、僕は敗北者になるんだよ」
彼の言っていることは、いまいちよくわからなかった。
いつも手の抜けるところでは手を抜いている自分には、一生理解できないのだと思った。
「ところで君、ペース上がってるのに気づいてる?」
彼は俺に追いついたときよりも息が荒い。
「お前がペース上げるからだろ。 並走しないと喋れないじゃんか」
まだ俺は流して走っている。
しかし、先程までよりは幾分か早い。
クラスメイトと喋っているうちに数人は抜いた。
「あ~あ。 こんなんなら声をかけないで抜き去っていればよかったよ」
「なんだ、限界か? ならスピード落とせばいいだろ」
「いやいや、キツいから止めるっていうのは僕らしくないでしょ」
こういうところが真面目だと思う。
「そうかい。 まあ、俺は適当に走ってるから。 お前は死ぬ前に止まれよな」
結局、彼はゴールまで俺と並走した。
ゴールをした瞬間、様々な先生が彼のことを褒めていた。
俺は早くゴールして暇をしている部の連中から外れて、その様子をずっと見ていた。