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7話 舞台装置

「先ずはピノッキオを追い回す森の下見をしようか」


ゼゾッラの提案で俺たちは森の下見をする。


「うーん、多分この辺りにあると思うんだけど・・・」


ゼゾッラは目的があるのか何かをずっと探していた。


「こちらから変わった臭いがしますよ」


イナバは鼻をすんすんと動かしながら言う。


「流石はウサギ。

人間よりも嗅覚が優れてるね」


「そうなのか?耳が良さそうってのは分かるが・・・」


俺の言葉にゼゾッラは勝ち誇ったような顔をした。


「おや、ご存知ない?

なら教えてあげようかな。

ウサギの鼻は人間の10倍以上臭いを嗅ぎ分けれると言われているんだよ。

その反面、視覚はあまり優れてないんじゃなかったかな?」


「そうですね、正直見ただけでお二人の姿を見分けることは出来ないです。

私は臭いで判別していますよ」


「へぇ、そうなのか。

でも俺の言った通りに耳はいいんだろう?」


俺がそう言うとゼゾッラがクスリと笑う。


「確かに高音を聞き取る能力は高いはずだが、低音を聞き取る能力は人間の方が上だよ」


「はぁ、よく知ってるな。

何でそんなにウサギに詳しいんだ?」


俺がそう聞くとゼゾッラは自慢げに胸を張った。


「そりゃ、私は長靴を履いた猫だよ。

物語で毎日ウサギを捕まえて袋に詰めていたんだから詳しくもなるさ」


「私、ゼゾッラさんが怖くなってきたんですけど。

そういえば最初に会った時に袋に詰めましたよね?」


「ああ、お陰様で猫の因子が強くなったよ。

もう少ししたら何が新しい能力が芽生えるかもね」


「因子?何の話だ?」


突然聞きなれない言葉を聞いて問い返してしまう。


・・・いや、前に一度聞いた気もするか。


「因子というのは・・・って、目的の場所見つけちゃったから今度教えてあげるよ」


ゼゾッラの言葉にそちらを向くとそれなりに立派な民家があった。


「どうだい、イナバ。

人の気配はするかな?」


「臭いは家自体のものだったようで他の臭いは無いですね。

誰も住んでいない放置された家だと思いますよ」


「それなら気にしなくていいかな?

お邪魔しまーす!」


ゼゾッラはそう言って扉を開く。


鍵もないようで扉はすんなり開いた。


俺も中に入ってみたがとても違和感を感じた。


窓があり、ベッドがあり、中央にテーブルと椅子。


端にはキッチンも整えられており、1人が生活するに十分な家だと思う。


しかし、何か不気味な気がする。


「シャルルはこの家を見てどう思う?」


「うわっ!?」


前にいたはずのゼゾッラだが入り口で考え込んでいる内にいつの間にか後ろに回り込んでいた。


そして俺の首に抱きつき耳元で囁くように言うものだから驚いてしまった。


「あはは、驚いた驚いた!」


「イタズラは勘弁してくれ。

それに驚かせたなら退いてくれよ」


「え〜やだよ!」


ゼゾッラはそう言って首から手を回して体重をかけてくる。


不安定な体制が気になったので仕方なくおんぶをする形で背負った。


「ふふ、優しいんだから。

そういうところ好きだよ。

ついでに掴むところは足じゃなくてお尻にしても私は構わないよ」


「しねーよ!

それでさっきの質問だけど、 何か違和感は感じる。

でも、それが何なのか分からない」


俺がそう言うとゼゾッラは耳元で「ふむ」と一言口にする。


・・・なにかゾクゾクするからやめてほしい。


「イナバは何か気付いたかい?」


聞かれたイナバはピョーンとジャンプした。


そしてシュタッと着地しながら答える。


「凄く清潔感があって綺麗な部屋なんですよね。

でも、人の気配とか臭いとか全くしないのがアンバランスだと思います」


イナバの言葉にハッとする。


この部屋は人が生活していないとおかしい整った部屋だ。


しかし、その人だけがいない。


それが違和感の正体だったのだろう。


だが・・・


「なんでイナバまで俺の頭に乗ってくるんだ?」


先ほどイナバが跳躍して着地した場所は俺の頭の上だった。


「え?何かお2人が楽しそうにしてたので私も存在感だけは出しておこうかと。

2人の邪魔をせずに存在感を出すにはここしかないかと」


「おかしくないか?

女の子を背負って頭にウサギ乗せてる男って」


俺がそう言うとまたゼゾッラが耳元で囁く。


「私は可愛いと思うよ。

ただ、もう少し私に構って欲しいけどね」


そう言って耳に息をフーッと吹きかけてきたので流石に我慢の限界であった。


俺はゼゾッラを担いだままベッドまで行き、そこで降ろした。


「おや、ようやくその気になってくれたのかな?

イナバ、君はその辺で・・・そうだな1時間、いや2時間程時間を潰してきてくれたまえ」


「いや、そうじゃない。

そういう事じゃないぞ」


「何だい?まさか一晩中するつもりかい?

確かに初めて同士が燃え上れば時間を忘れてそうなっても仕方ないからね。

では、イナバは村に戻って宿を・・・」


「だから違うと言ってるだろうに!

抱いたりしないから!

イナバも「ごゆっくり」とか言いながら家を出ようとするな。

しかもゼゾッラも初めてなのかよ!

こんだけ余裕ある感じで!!」


俺は思わず全ての事に対して大声でツッコンでしまった。


そんな俺を見ながらゼゾッラはくすくすと笑う。


「悪かった、からかいすぎたようだね。

それと聞かれたから答えるが私はそちらの経験など無いよ。

だから決心がついたなら早く私の初めてを貰ってほしいものだね。

これはからかってるわけじゃないから」


ゼゾッラの言葉に自分の顔が赤くなるのを感じた。


「シャルルさんは我慢強いですよね〜ウサギのオスなんて底なしですよ。

アイツらはメスを見かけたらすぐに腰をへこへこ動かしながら追いかけてきますからね」


「そうそう、ウサギの発情期は気をつけたほうがいい。

彼らは自分のものが擦り切れようが気にせずに腰を振り続けるそうだからね」


「いや、いまその知識は必要ないだろ。

とにかく話が脱線しすぎてるから戻すがゼゾッラは何でこの家を探してたんだ?

それにこの家はなんでこんなに不自然に綺麗なんだ」


俺の問いにゼゾッラはベッドに腰掛けながら答える。


「なに、簡単な話だよ。

ピノッキオの冒険にこの家が登場するからさ。

物語の完遂に必要だからこの家は現れた。

言わば舞台装置と言ったところかな?

最も、そこに必要なもう一つのものが出てないということは私たちにそれをやれってことなんだろうね」

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