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2話 タヌキとウサギ

俺たちは血を洗うために近くの湖へとやってきた。


「それじゃ別れて洗うかって、おい!」


俺がゼゾッラに語りかけると、既にゼゾッラは服を全て脱いで湖の中に飛び込んでいた。


「あはは〜気持ちいいからシャルルも全部脱いで入りなよ」


「俺たちは男女なんだから別々に洗ったほうがいいだろ?」


俺はそう言うがゼゾッラに気にした様子はない。


「何言ってるのさ。

私達は一心同体、もう離れられない関係だよ。

気にせずに入った入った!」


ゼゾッラは全く気にした様子がなく俺の腕を取ってぐいぐいと湖の中に引っ張っていく。


「分かった分かった!

とりあえず服を脱がせてくれよ」


俺はそう言って服を脱いでいく。


そして、そのまま湖の中に入っていった。


「ひゃ〜冷たいな。

でも気持ちいいや」


「でしょ〜さぁ、服も洗ってしまおうよ」


俺とゼゾッラは湖で服を洗いそのまま近くで焚き火を焚いて服を乾かすことにした。


「しかし、ゼゾッラには羞恥心というものが無いのかよ?

そんな堂々と裸を晒すもんじゃないだろ」


「またその話?

別にシャルルしかいないから平気だよ」


「じゃあ、俺がここで襲いかかっても平気なのかよ?」


「ん〜別にいいよ。

ここでシちゃう?」


ゼゾッラは悪戯っ子のような笑みを浮かべてこちらを見てくる。


「いや、やめとくよ。

それより何か聞こえないか?」


「そんなベタなかわし方ある?

照れなくてもいいのに」


「照れてねえよ!

いや、湖の方から何か聞こえるって!」


俺はそういって湖の方に向かうと中央で水飛沫が上がっているのが見えた。


「あれは・・・誰か溺れてるのか!?」


俺は慌てて湖に飛び込むと中央に泳いでいく。


「ごぼ、ごぼぼ・・・誰か、たす、け、て」


「待ってろ!今行くからな」


泳いで中央まで行く。


この辺りになると足もつかないので沈めば容易に溺れることだろう。


中央まで行って溺れる何かを掴む。


それを抱えて岸まで運ぼうとするがパニックになっているのか、その何かは暴れて泳ぐのを阻害する。


「おい、落ち着けって!

このままじゃ2人とも溺れてしまうだろ」


「がぼ、たすけ、がぼ、ごぼ」


俺は何とか宥めるが全く効果がない。


どうしようかと思案していた時に


「全く、こんなもの放っておけばよかったのに」


ゼゾッラの声が上から聞こえる。


「は?何で宙に浮いてるんだよ」


「気にしない気にしない。

タネもトリックもある手品みたいなもんさ。

それより、よっと」


いつの間にか服を着ていたゼゾッラはそう言いながら俺の抱えているものの前まで行くと


「そりゃ!」


と言いながらかかと落としを食らわした。


「ゲフゥゥゥ」


何かはそう言ってそのままピクリとも動かなくなった。


「おい、殺したんじゃないだろうな?」


「まさか〜気絶させただけだよ。

それなら運びやすいでしょ」


「・・・まあな。

助かったよ」


「ふふ〜ん。

私と君は一心同体だからね。

こんなつまらない事で死なれちゃ困るよ」


とりあえず俺はそれを抱えて岸へ這い上がる。


焚き火まで行き改めてそれを見る。


「タヌキだな」


「まごう事なきタヌキだね」


「喋ってたよな?」


「うーん、僕が来た時には溺れてる声しか聞いてないけど。

これどうするの?

食べる?」


「いや、せっかく助けたんだし目覚めるのを待つか」


「私はサッサと殺して鍋にでもした方がいいと思うけどね。

絶対めんどくさい事になるよ、これ・・・ほら来た!」


ゼゾッラが言って指差す方向から砂煙が上がり物凄い勢いで何かが走ってきていた。


「たーーーーーぬーーーーーきーーーーーーーーーー!!」


そう叫びながら走ってきたのは白いウサギであった。


そのまま白いウサギは高く跳躍するとタヌキに向かって細い棒のようなものを振り下ろそうとしていた。


「危ない!」


とっさに俺はタヌキを自分の背で庇おうとする。


襲い来るであろう衝撃に目を閉じて耐えようとするが痛みが来ない。


目を開けでそちらを見ると爪を伸ばしたゼゾッラがその攻撃を受け止めていた。


「私の相棒に乱暴はやめてほしいな」


「おのれ、タヌキの仲間か!

ならばお前たちもタヌキだな!!」


ウサギは聞く耳を持たずに細い棒を振り回す。


あれは船を動かすのに使う(かい)だろうか。


その攻撃をゼゾッラは全て受け止めていた。


「全く・・・少しは話を聞いてほしいものだね」


「タヌキの言うことなど聞かぬ!

タヌキは全て殺す!!」


目の前で繰り広げられる激しい戦いに目を奪われているとゼゾッラが攻撃を捌きながら俺に指示を出した。


「シャルルが近くにいると全力を出せないんだ。

私に見惚れるのはしょうがないけど少しは避難してくれないかな?」


「あ、ああ。すまない」


俺はタヌキを抱えて2人から距離を取る。


「おのれ、邪魔をするな!」


ウサギは懐から何かを取り出すとゼゾッラに投げつけた。


「これは嫌な予感がするね」


ゼゾッラはそう言いながらジャンプしてそれを回避する。


ウサギが投げたものは小さな小瓶であり、それが地面に当たった瞬間に小さな爆発を起こした。


そして周囲に赤い何かが飛散する。


「すんすん・・・これは辛子かな?

あんなもの顔にでもぶつけられたらマトモに目を開けられなくなりそうだ」


小瓶を乱れ投げするウサギに対してゼゾッラは空中駆けながら湖の方に向かっていく。


「ここなら爆発もせずに沈むだけだよ。

投げるだけ無駄だね」


と勝ち誇っているゼゾッラに対してウサギもニヤリと笑う。


「ワザとそこに行くように追い詰めたのですよ。

和邇(わに)さん、お願いします!」


ウサギが叫ぶと湖の水が盛り上がり巨大なサメが姿を現わす。


「湖でサメなんて非常識な技を使うもんだね。

やれやれ、私も少し本気を出すかな」


そう言った瞬間にゼゾッラの姿がサメの口の中に消えていく。


「ゼゾッラ!!」


俺は叫ぶがゼゾッラの姿はそこには無かったり


「うふふ〜無駄ですよ。

貴方の相方のタヌキは和邇の腹の中です。

さぁ、観念して私に殺されるのです。

あの世でお爺さんとお婆さんに詫びを入れてきなさい!」


ウサギは櫂を構えながらこちらに近づいてくる。


「お爺さんとお婆さんだって?

一体どう言うことなんだ?」


「貴方もタヌキの仲間なら知っているでしょう。

そのタヌキの悪逆非道を」


「それは是非とも聞かせてほしい話ですね」


空中から声が聞こえる。


そこには先程サメに食べられたと思っていたゼゾッラが宙で佇んでいた。


「な!和邇さんに食べられたのでは無かったのですか!?」


「私の特殊能力の一つ『観測する猫』って力のお陰だね。

私はあらゆる場所にいて、あらゆる場所にいないのさ。

まぁ、お喋りはこのくらいにして」


ゼゾッラがそう言うとその姿が消えていきウサギの後ろに現れる。


「とりあえず仲良く気絶してもらおうかな?」


そう言ったゼゾッラはウサギに強烈なかかと落としを食らわせて意識を奪ったのだった。

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