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最終話 カーテンコール

ゼゾッラ姫・・・いや、ゼゾッラに手を引かれながら俺は城の長い廊下を歩く。


「ゼゾッラ、これはどういうことなんだ?

一体何が起こってるんだ?」


記憶の消失、その人物をまるで別の人物として扱ってしまう現象、そして居なかった筈の猫。


それらを全て詰め込んだ質問をする。


「その答えは簡単だよ。

私も君も長靴を履いた猫の物語に囚われているのさ。

もうすぐ君はシャルルではなく、粉挽き職人の三男。

もしくはカラバ侯爵と呼ばれる存在になるだろう。

私も同じようにゼゾッラではなくただのお姫様になるだろうね。

それ自体は避けようがない。

でも、そうなっても存在できるように手は打ってあるさ」


そう言って彼女と共にやってきたのはお城の入口だった。


そこに停めてある馬車を見て俺は仰天した。


馬車の本体である人が乗り込む部分、そこが大きなカボチャをくり抜いたようなデザインになっていたのだ。


「これは一体なんなんだ?」


「さぁて?城の前に置いてあるからカラバ侯爵のものじゃないのかい?

とにかく最後の仕上げをするためにも急ごう」


ゼゾッラはそう言ってカボチャの馬車に乗り込んだので俺も続けてその乗り込んだ。


俺たちが乗り込むと馬車は一人でに動き出していく。


「これは何処に向かっているんだ?」


「今の状況を何とか出来る場所さ。

後は到着するまで待つことしかできないからここで話でもしないか?」


「そうだな、俺もさっきまで忘れていた記憶だけどいつまで覚えているのやら」


「私もさ。

良ければ出会った頃からの記憶合わせとして今までの旅の話でもしないかい?」


「そりゃいい。

俺も自信が無くなってるからな」


そうして俺たちは今までの記憶を確かめるように出会いからの旅の話をした。


出会いから野盗に襲われたこと。


珍妙なウサギやタヌキに出会ったこと。


野盗の代わりにピノッキオを殺すことになったこと。


ヘンゼルとグレーテル、その父親と母親の話。


そして、黒い森の乙女と豚、山羊に狼との話。


そこで俺は一つのことを思い出した。


「そうだ、あのおみやげ屋でゼゾッラにプレゼントを買ったんだった。

どうして今まで忘れていたのか・・・受け取ってくれるか?」


「君のくれる物なら喜んで頂くよ」


俺はそう言って袋に包まれたものを取り出して彼女に渡す。


ゼゾッラはそれを嬉しそうに受け取ると中身を取り出した。


中から現れたのは透明なガラスの靴であった。


「ありがとう、早速履いてみるね」


ゼゾッラはそう言ってドレスの下に履いていた長靴を脱ぐとガラスの靴を履き始めた。


ガラスの靴を・・・ガラス・・・ガラス!?


俺は羊毛の盛んな村で羊毛で作られた何かを買った筈だ。


それは決してガラスの靴などでは無い!


「まて、ゼゾッラ!?」


俺が止めようとした時には彼女の足はガラスの靴の中に収まっていた。


「は、はは、あはははははははは!

やった、遂に私はやったんだ!!

シャルル、ありがとう。

君にカボチャの馬車とガラスの靴を与えられてようやく人殺しのゼゾッラを捨て去ることができる。

私はようやく継母や意地悪な姉妹にイジメられながらも最後に幸せを掴む、清廉潔白なサンドリヨンになる事が出来る!」


「なんだ?一体何の話をしているんだ?

それに君は一体誰なんだ?」


俺の目の前でガラスの靴を履いた瞬間に、ゼゾッラの姿が変わり純白のドレスにガラスの靴を履いた女性が現れた。


「私の名前はサンドリヨン。

これはフランス語の表記で一般にはシンデレラと呼ばれるもの。

その意味は灰かぶり。

貴方が名付けてくれた名前よ、シャルル」


「俺が名付けた?

サンドリヨン、君は一体何を言っているんだ?」


「ふふふ、とぼけるのが上手なのね。

それとも本当に思い出していないのかしら。

これを見れば全てを思い出すのではなくて」


そう言って彼女は鏡を俺に向けた。


この旅で一度も見なかった鏡。


不自然なほどに確認しなかった自分の姿。


そこには粉挽き職人の三男という若々しい男ではなく、年老いた一人の男性が写っていた。


「あ、ああ・・・この姿は夢で見ていた俺の。

いや、私の姿。

私は粉挽き職人の三男坊ではない。

ましてやカラバ侯爵でもない。

・・・思い出した。

私はシャルル。

シャルル・ペロー。

あらゆる話を集めてまとめ編集し、人々に伝わる童話集を作った男。

それが私だったのか」


「そうです、そしてあちらをご覧ください」


サンドリヨンが指した方向を見る。


そこには一人の少年と少女が城のテラスで楽しそうに談笑していた。


少年の側には長靴を履いた猫もいる。


彼らはこちらの方を向くと私たちの乗る馬車に向かって一礼をした。


「私たちが引き剥がされた事で長靴を履いた猫の話もハッピーエンドで終わりました。

そして、この馬車の行く道々を見てください」


そこには今まで出会った人々がいた。


ヘンゼルとグレーテルに木こりの父と意地悪な母。


赤ずきんと狼。


彼らはこの馬車に気付くと皆が頭を下げて礼をする。


「これにてこの物語はカーテンコールという訳です。

最後に出演者は舞台に上がり頭を下げます。

更にスペシャルゲストの登場ですよ」


そこにはピノッキオとゼペット爺さんに狐と猫。


三匹の子豚と七匹の子山羊と母親。


そしてイナバが姿を現した。


「スペシャルゲストはペローの童話集に関わっていないけれどこの世界を廻る貴方の旅を盛り上げるために駆けつけてくれました」


「私の旅を盛り上げる?

この旅は君がゼゾッラからサンドリヨンに変わる為の旅では無かったのか?」


「もちろん、その目的はありました。

しかし、それは目的の一つであり、貴方の旅の目的と私の目的が合致したからに他なりません。

貴方の願いを思い出してください」


「私の願い・・・私はそう・・・死に瀕していた。

間もなく寿命が尽きるという所で祈ったのは、私自身が主人公となり自分の書いたペロー童話集の中を旅する事。

そうか・・・これは死の間際に見る走馬灯のようなものなのか」


「ええ、その通りです。

貴方は自身の書いたヘンゼルとグレーテル、赤ずきん、長靴を履いた猫、サンドリヨンと回ってきました」


「ヘンゼルとグレーテルと似た話は書いた覚えがあるが、あの話自体は私の作品ではないのでは?」


「貴方は親指小僧という作品を書かれましたね。

そちらの方がヘンゼルとグレーテルの残酷話の原点と言われています。

後世ではこちらの方が有名ですので、趣向を凝らした旅を楽しんでもらうためにも差し替えさせて頂きました」


「やれやれ、趣味の悪い事だ。

しかし、実に満足のいく旅だったよ。

まさか、死の間際にこのような素晴らしき体験ができるとは。

この後はどうなるのかね?」


「このまま貴方を死後の世界へと。

私が最後までまだお伴しますが不満はありますか?」


「いいや、私の生み出した美しき姫が付き添ってくれるなら喜んで向かわせてもらおう」


2人が会話している間も馬車は進んでいく。


暗い夜の闇の中をどこまでもどこまでも。


この日、1703年5月16日。


シャルル・ペローは75歳という年齢で天に召された。


彼の作ったペロー童話集は世界で知られるグリム童話集よりも古き童話集として、今なお語り継がれている。


彼が死ぬ間際にこのような体験をしたかは定かではない。


しかし、彼の作った童話集は今なお人々に語り継がれ愛されている。


その事実は確かなことであろう。

約一ヶ月間読んでいただきありがとうございました。

他にエターニャ、ユウマオ配信は連載中の毎日更新しておりますので良ければ読みに来てください。

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