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25話 オーガと猫の終わり

「さてさて、最後の仕上げに取り掛からないとね」


シャルル達が侯爵領とされている土地を回っている頃、僕は別行動をしていた。


とは言え彼らの誰もが僕がいない事に気付いていないだろう。


舞台の最後の幕は上がった。


今、進行している物語は長靴を履いた猫だ。


先に確かめてみたが嘘つき少年は純朴な羊飼いに。


ヘンゼルとグレーテルはただの木こり一家に。


ゼペットとピノッキオはただのオモチャ職人と息子に変わっていた。


彼らの物語は元の場所へと戻っていき、残ったのはシャルル一行に助けられたという記録のみ。


「全く滑稽な話だよ。

物語を進行する為に別の物語を重ね合わせてから一つ一つ解決して引き剥がしていくんだからね。

三文芝居もいいところさ」


きっとこの世界でウサギの役割を終えたイナバも今頃はただの王様に献上されたウサギに戻っている頃だろう。


こうして物語は少しずつ正常さを取り戻していく。


「カーテンコールまであと少し。

君には最後のクライマックスに付き合ってもらおうじゃないか」


私はそう言いながら部屋の中央にいる主に話しかける。


彼こそは僕たちが旅した土地の真の支配者。


そして、僕が今いる城の主人。


「なんだ、貴様は?

俺に何か用でもあるのか?」


そこにいるのは巨大な鬼。


オーガと呼ばれる化け物であった。


「ああ、そうだよ。

本当は君をおだててネズミにして食べてしまうんだけど、あいにく僕にネズミを食べる趣味はなくてね」


「貴様は何を言っているんだ?」


「君が知らなくてもいいことさ。

まぁ、そういうわけで真っ向から君の城を奪わせてもらおうと思うよ」


僕がそう言うとオーガは愉快そうに笑った。


「がっはっはっ、なるほど。

ただの命知らずのバカのようだな。

貴様など手のひらで十分よ」


オーガはそう言って僕の体を包み込めそうな程巨大は手のひらで押しつぶそうとしてきた。


僕はその攻撃を横に飛んでかわす。


「猫を見くびらない方がいい。

ネズミが猫に噛み付くなら、猫は鬼に噛み付くこともあるさ」


僕は爪を伸ばし、頭に猫耳、お尻には尻尾を生やす。


猫の身体能力を手に入れ、一気に駆け抜けてオーガの足元を斬りつける。


しかし、切り裂いた感触はあれど血しぶき一つ上がらない。


「いま何かしたか?

あいにく貴様のような小さな生き物の攻撃など効きはせんのだよ」


「まぁ、そうだと思ったよ。

じゃあ、これならどうかな?」


僕は更に力を込めると尻尾が二つに分かれる。


「猫又の力よ!」


僕はこの世界でなるべく猫に合う行動を取ってきた。


その結果、猫の因子が集まり古今東西の様々な猫の伝承の力が集まっている。


そして、猫又の力により手から鬼火が飛んでいきますオーガの手のひらに飛んでいく。


「なんだこんなも・・・あ、つう!!」


オーガは手のひらで鬼火をはたき落とそうとしたが、鬼火はそのまま手に燃えうつりオーガの全身を焼き始めた。


火が全身に燃えうつりのたうち回るオーガの前に水の入ったコップを差し出す。


「この中に入れば火を消せると思うけど」


「あ・・・み、みずううう」


オーガはそう言ってネズミに変化するとそのままコップの中に身体を突っ込ませた。


「やっぱりネズミになって殺される運命は変わらないんだね。

ご愁傷様。

火車!!」


僕は東方にいる自体を運ぶと言われる巨大な猫に変化する。


そして、そのままオーガの入ったコップをプチっと潰した。


「さてと、これでこの城はカラバ侯爵のものだね。

後はほいほいっと」


僕は城の入り口にあるものを設置する。


僕にとって一番大事な仕上げ。


カーテンコールの後に必要なもの。


「ああ、これでやっと願いが叶う。

猫の僕ともここでお別れ、後はあの代理が上手くやってくれるだろうさ。

最後は姫の私でいかなければいけませんね」


私はピンクのドレスにティアラを着けて大人しい姫様に戻る。


そして目の前からやってくる一行に最初からいましたよと言わんばかりの顔で合流した。


その事に誰も気付かない。


童話の筋書きとは実に恐ろしいものだ。

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