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24話 カラバ侯爵領とその民達

俺たちはいま王族の乗る馬車で今までの道のりを遡っていた。


「おい、本当に大丈夫なんだろうな?」


俺が猫に問うと猫は


「全て我輩にお任せください」


と自信を持って答える。


そうこうしているうちに純朴そうな羊飼いの少年が出迎える村にたどり着いた。


「中々にのどかな村ではないか」


「この村では羊の放牧が盛んなのです。

羊毛を使った特産品が売りの村なのですよ。

あそこがこの村の特産品を一手に賄っているお店ですな」


と猫が王様に自慢げに話す。


「なるほど、ちょっと覗いてみるか。

主人、失礼するぞ」


「ええ、どうぞどうぞ。

ごゆっくり見て行ってください」


店の主人が応対して商品の説明を始める。


王様はそれらを興味深げに眺めていた。


「ふむ、どれもこれも素晴らしい品だな。

ところで店主よ、この辺りはどなたが治めているのかな?」


「それはカラバ侯爵でございますよ。

彼は若いながらも私たちの事を気にかけて.お忍びで各地を回っては薬などを処方してくれる素晴らしい方でございます」


「ほう、なんと素晴らしい。

やはりお主の噂は本当なのだな、カラバ侯爵よ」


王様が俺に声をかけてくる。


それと同時に店主もこちらの方をみる。


流石に顔を見られては別人だと気付かれるのではないか?


俺はそう思って緊張してしまう。


しかし、


「これはこれはカラバ侯爵ではありませんか。

侯爵様のお連れ様にお金など頂くわけにはいきません。

この店の品はご自由にお持ちください」


店主はそう言って深々と頭を下げた。


「あ、ああ。

今日は視察に来ただけたからかしこまる事は無い。

何か入り用になったらしっかりと金銭を払わせてもらうから気にしないでほしい」


「なんと慈悲深い。

この地の者たちは全て貴方様に感謝しておりますぞ」


俺は咄嗟にしてはよく口がまわった方だと思う。


このやりとりを見た王様は益々上機嫌になり次の村へ行こうと言い、俺たちは馬車で進むことになった。


更に先に進むと大きな森の近くにある村が見えてきた。


村の中に入ると木こりと思わしき父親と2人の兄妹が出迎えてくれた。


木こりは俺の顔を見た瞬間に笑顔になり


「これはカラバ侯爵ではありませんか。

またこの村にお立ち寄り頂き感謝の念しかありません」


と頭を下げた。


幼い兄妹達も


「カラバお兄ちゃんだ!」


「お兄ちゃん、こんにちわ!」


と挨拶をしながら近寄ってきた。


2人は俺に飛びついてきたので咄嗟に抱きとめる。


「随分と懐かれておるのう。

お主達もカラバ侯爵に施しを受けたのかな?」


王様が尋ねると木こりは嬉しそうに頷く。


「私は病にかかり死を迎える所でした。

しかし、この2人の子供達から現状を聞いたカラバ侯爵は私のことを哀れみ、無料で薬を施してくれたのです」


「なんと!そのようなことが!?」


「カラバお兄ちゃんはとっても優しいんだよ」


「私たちの事を沢山助けてくれたの。

私、お兄ちゃんのこと大好き」


そういって妹は俺をギュッと抱きしめてくる。


「はっはっはっ、これはゼゾッラには強力なライバルがいたものだ。

しかし、このような辺境の村の末端の者にまで気を配るとは本当に素晴らしい男だな。

私も長いこと生きているが、こんなに裏表がなく気持ちの良い男は初めてだ!」


王様は上機嫌で馬車に乗り込む。


俺たちは木こり一家に別れを告げて更に進んでいく。


道中にまた新たな村があり立ち寄る。


そこには有名な玩具職人のお爺さんがいるらしい。


王様と立ち寄ってみると、そこには気を削りながら人形を作る老人がいた。


老人はこちらに気づくと深々と頭を下げる。


「これはこれはカラバ侯爵。

こんな辺鄙なところまでよく足を運んで下さいました」


「いや、私を気にする必要はない。

私は当たり前のことをしているだけなのだから」


この時点で俺はかなり気が強くなっていた。


誰もが俺をカラバ侯爵と呼んでいる。


段々と自分でもそうなんじゃないかという気がしていた。


「ここでカラバ侯爵はどのような活躍をされたのかな?」


王様が老人に尋ねる。


「彼は道に迷う私の息子を正しく導いてくれたのです。

お陰で今はすっかり良い子になりましたよ」


「なるほど、家庭問題すらも円満に解決してしまうとはな。

カラバ侯爵に娘を預けるならば何もかも安心というわけじゃな。

カラバ侯爵の領地の広さと人徳はよく分かった。

最後は君の城で結婚式の打ち合わせをしようではないか」

今までの主要キャラの名前が出ないこと、ゼゾッラがいないことは仕様です。

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