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22話 ウサギを献上するという意味

俺たちは案内されるままに長い長い廊下を歩いていた。


「一体どうことなんだ、ゼゾッラ?」


俺は前を歩くゼゾッラに話しかける。


「どうもこうもないよ。

ここが私の実家さ」


「ゼゾッラさんはお姫様だったんですか?」


「そうだね。

私は継母に嫌われていたからね。

盗賊に攫われたという設定で城を抜け出していたのさ。

彼女がやっていた悪事の証拠を父の元に送り込んだ上でね。

風の噂で処刑されたと言う話を聞いたから戻ってくる最中にシャルルと出会ったという訳さ」


「俺がカラバ侯爵ってのは何の話だ?」


「それはそのままの意味さ。

君は私たちが旅してきた広大な敷地を領地に持つカラバ侯爵様。

そして私の命の恩人であり父の命の恩人になる存在さ」


意味が分からずに俺とイナバは顔を見合わせて首を傾げた。


「長靴を履いた猫の話で猫はウサギを王様に献上する事で友宣を結ぶ。

だが、王様が只のウサギを貰ったくらいで喜ぶものかな?

答えは単純さ。

ウサギは薬の使い手。

王は何か病を抱えていて、ウサギの持つ薬の知識で助かった。

その為にウサギを渡した猫とその主人に恩を感じたに違いない」


そう言って今までの通ってきた中でも一際目を引く扉の前でゼゾッラは止まった。


ゼゾッラはコンコンとノックをする。


「話は聞いておる。

入りなさい」


中から覇気のない弱々しい声が聞こえた。


「失礼します。

父上、お久しぶりですね」


ゼゾッラが貴族らしい礼をして中に入る。


俺にはそんな知識は無いので普通に一礼して一緒に部屋に入っていった。


「おお、まさかまた生きて会えるとは・・・よくぞ無事に戻った」


「ご心配おかけして申し訳ありませんでした。

全てはこちらにおられるカラバ侯爵のお陰でございます」


ゼゾッラが俺を王様に紹介する。


あまりの緊張に俺は直立不動に立ち尽くしてしまった。


「そなたのお陰で私は再び娘と出会うことがあった感謝しておるよ、カラバ侯爵」


「は、はい。

ぶ、無事に再会できた良かったです」


「カラバ侯爵は隣にある広大な土地を治めながらも決して驕らず、常に民と交わって暮らしておりました。

その為に貴族らしくはございませんが、侯爵位でありながら驕らず純粋さと素朴さを兼ね備えた素晴らしき若者なのです」


王様は俺を見てフムと頷く。


「確かに。

私も妻たちの裏の顔などを知ってから貴族の二面性に嫌気がさしておった所じゃ。

そなたのような者が側にいてくれたらどれだけ楽になろうか。

今では身体もロクに動かせぬ」


「父上の様子を心配したカラバ侯爵から貢ぎ物を受け取っております。

それがこの白き兎のイナバでございます。

このイナバは薬学に優れており、きっと父上の身体を治してくださることでしょう。

イナバ、父上の事をよろしくお願いします」


ゼゾッラに促されてイナバが王に近寄る。


そして王の身体のあちこちを診断すると薬箱から一つの薬を取り出した。


「長年蓄積された毒素が身体に溜まっているご様子。

毒抜きと毒により低下した体力を戻す薬を処方しましょう」


「長年にわたって溜まった毒じゃと?

どういうことじゃ?」


「これは推論になるのですが誰かからクリスタルのワイングラスを送られませんでしたか?」


イナバがそう言うと王様はハッとした顔になった。


「確かに貰ったぞ。

ゼゾッラを野盗に襲わせた三番めの妻が私にくれたものだ」


「そのグラスに含まれる鉛がワインで溶け出して毒に変わったのです。

恐らく奥様はそれが毒になると知っていて渡したのでしょうね」


「なんということじゃ・・・それでお主の処方する薬を飲めば治るのか?」


「ええ、体内の毒素を消し去れば良いだけですからね」


王様はイナバの言葉を聞き身体を震わせた。


「何ということじゃ・・・まだ確定したわけではおらぬが、もしイナバ殿の言う通りになったとすればカラバ侯爵は娘だけではなく私にとっても命の恩人となる。

どうか、この城を我が家と思って心ゆくまで過ごしてほしい。

我々は貴方を最大級の国賓とさせて頂きますぞ」


「え?あ、はい。

ありがとうございます」


俺は何が何だか分からないうちに国賓として接待されることになってしまった。


目の前で行われていることが現実であるはずなのに何処か芝居を見ているような気分だった。


全員が予め台本があるかのような動きと喋り。


いまこの瞬間、俺は一番童話の中にいると言う意味を実感したのかもしれない。

ここでの長靴を履いた猫における王様にウサギを献上した意味というのは作者の創作です。

しかし、ただのウサギを献上して王様が喜んだという記述は、実際このくらいの理由がないと納得はできませんよね。

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