chapter 78 箱開け
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〜 ギルド『レザムールズ』ハウス 〜
新加入のシーフ クルミのハウスでの生活が始まった。
「新入りは掃除からだ」
朝は栞さんとハウスの掃除をする。それからシャバニさんの店舗の開店前に掃除。終わったらホクトさんとお風呂とトイレ掃除。夕食後はキッチンの掃除。
ダンジョンに行くのはシャバニさんが来る火曜日だけ
しかも戦闘は無しのサポーター役だよ……厳しいなぁ〜
でも、クルミは全然気にしてないみたいだ。そんなに戦闘が好きではないみたいだよ。
鍵開けの特訓は毎日やっている。レザムールズ特製宝箱を開ける特訓だ。鍵の部分は彫金が得意なホクトさんが作っている。
特訓は夕食後のキッチン掃除が終わったら始まる。
「今日のお宝はイチゴのショートケーキだよ。頑張って」
何故かザリウスが優しく微笑んでクルミに宝箱を渡す。
「はい! 頑張りますです!!」
「いい子だ。じゃあ今日は1分以内でね」
1分で開けれないとデザートは無しなんだってさ。クルミの鍵開け技術は中々みたいだ。ポッチャリの容姿からは想像出来ないくらい器用なんだって。
カチ!
「開きました!」
「はい。56秒。合格だ」
「わーい! いただきますです!」
いつもギリギリで合格して必ずデザートをゲットする。
「ホクトさん。アレって難易度高いんですか?」
「いえ。1分あれば開けれるように作っていますので」
「んん? あまり課題になっていないような……」
「成功体験を積み重ねさせる様に言われています」
少しずつ難易度は上げているんだってさ。まずは自信をつけさせる様にシャバニさんから指示が出てるみたいだ。
僕も試しに箱開けをやってみたけど全然開けれない。
鍵開けの特訓が終わったら室内訓練所で弓の練習をする。この夜の時間は人それぞれ違う事している。
僕は相変わらず骨の矢尻を作っているよ。ティアナとニャンタはスペシャルダンジョンに行く事が多い。
矢尻は朝になると付与がしてある。ニャンタが夜中にやっているんだ。
アイリスはロビーで演奏の練習しているね。それをザリウス、シャバニさん、ホクトさんが聴きながらワインを飲んでゆっくり寛いでいる。ミンフィーも一緒に本を読んでるね。
栞さんは礼拝堂でお祈りをしているね。
フェンは馬の世話とスノウのブラッシングだよ。
昔のSクラスギルドだった頃は毎晩、バカ騒ぎの酒宴だったのにここはとても落ち着いている。誰も贅沢しない。その日が良ければそれでいいという生活では無いんだよね。
最近、感じるんだ……
みんな何か目標を持ってここにいるってね
強くなりたいとかSランクになりたいとかじゃない
僕にはみんなみたいな「何か」が無い
だからみんなの「何か」を全力でサポートするんだ
今日は火曜日。ダンジョンへみんなで行く日なんだけど、ロビーに全員集まってミンフィーの帰りを待っている。
ミンフィーが冒険者ギルド協会から呼び出されたんだ
こんな事は初めてだよ……
ミンフィーがハウスに戻ってきた。みんな何があったのか心配して見守っている。
ミンフィーがソファーに座って深くため息をついた……
「最悪よ……立ち退きする事になったわ」
「「「 え!? 」」」
「シャングリラが大都市に移行する事になったわ……」
ミンフィーが詳しく説明してくれた。
シャングリラは小都市から一気に大都市になる。
各地で発生した疫病や汚染水の除去に尽力している聖心教会が大聖堂を建設して総本山にするそうだ。
転生者を輩出した教会が大聖堂として建て替えられる。新しい大都市の中心は大聖堂になる。
教会とウチのハウスはとても近い。この辺りは都市の中心部となるので貴族やお金持ちの商人が住む場所になる。
「せっかくここまで頑張ってきたのに……」
建物はいいよ! でもミンフィーの畑は……頑張っていい土にしてきたのに! 全部無駄になってしまうよ!
「心配はそれだけでは無いのよ。転生者が『大聖女』に就任するらしいのよ……」
「何ですって!!」
ティアナが取り乱している。
「ゴラス帝国が怒るわね……停戦が危うくなるわ」
魔猫狩りの誤ちを認めてから1000年もの間、大聖女の地位は空位だった。ゴラス帝国を刺激しない為だ。それをここにきて復活させるなんて……
「まだあるわ。全ギルドのクラスが引き下げになるわ」
シャングリラのギルドは大都市のギルドと比べると弱い。
「また底辺からやり直しだね……」
僕達はEクラスになる。Cクラス目前だったのに……
「ギルド長から別で呼ばれてウチの功績を考慮して、移転場所だけは選ばせてくれるそうよ」
ううう……何て事だよ……
「ホクトさん。場所を選定してくださるかしら?」
ミンフィーが大都市の計画図面をホクトさん渡した。Eクラスのギルドだから当然、都市の中心から離れた場所しか選べない。
「しっかりと占った方が良いですね。今夜、郊外でやりましょう」
「ペガサスを使えばいい」
「そうですね。星が多く見えた方が良いのでお借りします」
「見られない様にね」
「承知しました。姿を消す薬を使います」
ミンフィーが頷いた。あまり元気が無いよ……
「そう落ち込むな。立ち退きはいい場合もある。例えば高額で土地を買い取ってくれるとかな」
シャバニさんはそういう事をしてたんだってさ。
「本来ならそうなんだけど財政が厳しいらしいわ。代わりに土地を多く貰える事になったわ。かなり広くなるから私達の移転先は『レザムールズ区』と呼ばれるわ」
「じゃあミンフィーは区長って事?」
「やりたくないけど仕方がないわね」
「いいじゃないか。チャンスは最大限に活かせ。畑は相当な価値があったはずだ。シャングリラの食生活を支えていたからな。ゴネまくって取れるだけ取れ」
「そうね……ガッツリやってやるわ!」
お! ミンフィーが燃えてきた!
シャバニさんありがとう!
やっぱりミンフィーはこうでなくっちゃね!!




