chapter 70 勇者様御一行
ご愛読ありがとうございます
南の魔国へ向けての旅は続いている。
途中で大小様々な都市に寄って物資を補給していく。どの都市も僕達のいるシャングリラより栄えているね。
どこの都市でも食品の値段が高い。異常気象の影響だ。
「まだダンジョンを攻略できた都市は無いそうです」
ミシェルさんが冒険者ギルド協会に寄って確認してくれた。ラミアに関する情報も伝えたそうで、すぐに国内各地の協会に情報伝達されるみたい。
「異常気象の原因がダンジョンかもしれないと認識すれば、各地の協会が本腰を入れて攻略に臨むと思います」
「場合によっては国も動くかもしれないわね」
「レザムールズから持ち込まれた情報は凄く価値があると思います」
「もうポイントを貰っているからウチの事は内密でね」
「勿体無いような気がしますが……」
ミンフィーは他にも気になる事があるみたいだ。あまり目立ちたく無いんだってさ。
南に進んで魔国が近づいても治安が悪くなるどころか、逆に良くなっているように感じる。都市も徐々に大きくなってきて中都市や大都市ばかりになってきた。
「モンスターも全然いないね?」
「想像とはかなり違うようね」
ミンフィーも意外だったみたいだ。魔国に関する知識はほとんど無いんだって。
僕達の暮らすエストアール王国最南端の都市に到着した。
ここまでは予定通りで半月程で来れた。
最南端の都市『エストゲート』は王国屈指の大都市だ。今までの都市とは桁違いに大きい。
「ここは魔国との取り引き拠点として栄えている都市です」
ミシェルさんがこの都市の事を教えてくれた。実際に来たのはみんな初めてだ。
「魔国からは主に海産物と塩等が輸入されています。こちらからは食料品が輸出されています」
「海は魔国が抑えているって事か?」
シャバニさんは海産物が欲しいって言ってたから気になるみたいだね。
「そうですね。エストアール王国には海がありません」
シャングリラから1番近い海は魔国の領土だ。でも海産物は市場に山の様に売られている。
「どうやって海産物を持ってくるのかな?」
「漁業権を魔国から得た者は漁が出来るそうです」
へぇー じゃあ魔国に人が入って漁をするんだね。
「魔国ではモンスターを攻撃しない様にして下さい。モンスターを怒らせる行為は厳禁です」
「襲っては来ないの?」
「人が活動する範囲にモンスターはあまり来ないと聞いていますし、出会っても無視するそうです」
魔国へと通じる道は道幅も広く、しっかりと舗装されていて馬車がとても走りやすい。
どうなるのかは誰も分からないけど、とにかく門まで行ってみる事にした。
多くの人が普通に行き来していて拍子抜けしてるけどね。
「はーい! 入場許可証の無い方は左側に並んで下さい」
漁師っぽい人達は右側を進んでいる。ちゃんと人の案内役がいるんだね。みんな馬や馬車に乗っているので僕達も乗ったままで左側に並んだ。
しばらく並んでいると案内役の女性が僕達の所に来た。
「リーダーはどなたですか?」
ん? 何か違和感がある……この女性おかしい……
「私よ」
ミンフィーがサンデーから降りた。
「魔王様討伐の方々ですね?」
「討伐? 違うわ。ガチャチケットと紹介状を持ってます」
そう言ってチケットと紹介状を案内役に見せる。
「失礼しました。では紹介状を確認させて頂きます」
案内役の女性が内容を確認した。こそっとミンフィーに囁く。
「ミンフィー……この人……なんか……」
ミンフィーが黙ってウンと頷いた。ミンフィーも気付いているようだ。
「東の魔女からの紹介ですね。ではこのカードを首から下げて列の右側をお進み下さい」
女性がそう言って後ろの人達に向かおうとした。
「ちょっと待って下さい。この後どうなるのかしら?」
「紹介状をお持ちなので魔王様と会えると思います。ガチャチケットは確か……どうなるんだったかな……一応説明は聞いたんですが……多分どこかで引けます」
結構いい加減だね!
「そう……ここで着替えてから行ってもいいかしら?」
「どうぞご自由に。列からはズレて下さいね。たまに動きますので」
前には数組が並んでいる。みんな見た事も無い凄い装備で武装しているよ。僕達の後ろにも2組並んでいる。当然、完全武装だね。僕達は横に移動した。
「みんな正装で行きましょう。戦う意志は無いわ」
馬車の中で着替えた。ちゃんと綺麗な服を用意しておいて良かったよ。
「おい! 俺様は伝説の勇者だぞ! 今すぐ魔王を倒すから先に行かせろ!」
女性陣が着替えるのを待っていたら……後ろで待っている人が案内役の女性に声を荒げている。何か嫌だな……
「皆さん待ってますので順番にお願いします」
「うっせー ぶっ殺すぞ!」
止めに入った方がいいかな……でも強そうだし……
「仕方ありませんね。魔王様の代わりに私が相手します」
「はっ! 出来るもんならやってみろ!」
「デス!」
金色の豪華な鎧を纏った勇者様がドテンと倒れた……
「死亡証明書をご希望の場合はそのまま並んで下さいね。有料ですが魔王様に負けた事にしてもらう事も出来ます」
案内役の女性が次の組に向かっていく。
「魔王様討伐の方々ですね?」
「え、えっと違います。間違えて並んだので帰ります」
次の組の人達は慌てて帰って行っちゃった。
「あらら? そうですか」
前に並んでいた組も帰って行っちゃった。多分、さっきの光景を見ていたんだね。
「はーい! 入場許可証の無い方は左側に並んで下さい」
勇者様本当に死んじゃったのかな……
「よ、よくもやったな!」
勇者様を倒されたパーティーのメンバー達が案内役の女性を取り囲んだ……
「ちゃんと並ばない人は殺していい事になっていますので」
「お前……魔族だな?」
「並ぶの? 並ばないの?」
案内役の女性は恐ろしいほど冷たい目で男を見ている。
「ふざけやがって!」
怒った戦士っぽい男が大きな両手斧で切り掛かった!
「デス!」
ドテン……
「お仲間で死体を片付け下さいね〜」
そんな恐ろしい状況の右側を通行している漁師っぽい人達は平然と歩いている。どうも日常の風景みたいだ……
「あーあ、またやってるな……」
「まぁここでも、並んでも一緒だよ」
「全滅よりはここの方がいいんじゃないか?」
案内役の女性は何事も無かった様に案内を始めている。
「はーい! 入場許可証の無い方は左側に並んで下さい」
新たなパーティーが並んだ。
勇者様御一行だね!
ちゃんと列には並んだ方がいいよ!




