chapter 58 出来る事は小さな事だけだった
ご愛読ありがとうございます
〜 エルフの里 地底湖 〜
ラミアの討伐に成功した!
「もうモンスターの反応はありませんね」
さっきのヤツが1匹だけでここに巣食っていたのか。
「皆さん……ありがとうございました……」
地面にアイリスが座り込んで涙を流している。
「これで呪いが解けました。私を呪ったのはアイツです」
西の魔女ではなくさっきのラミアに呪われたのか。
「魔女の手先ってとこかしら」
「恐らく。突然、里を急襲され、みんな呪われてしまったのです」
ラミアに呪われたエルフ達は能力やスキルを奪われ、ほとんど抵抗出来ずに里から逃げ出したそうだ。
これで解決したから良かったよね。
「ここは先祖代々引き継いできた里です。何とかして復興しないと……」
「乗り掛かった事よ。ギルドとして支援するわ。ただし、絶対に外には漏らさないで欲しいのよ。分かっていると思うけどウチは弱小なの。他からも頼られては対応出来ないわ」
アイリスは里の復興を優先で行動する事になった。パーティーへの参加が減っちゃうのか……
「この汚染された水は浄化しないといけませんね」
栞さんが浄化をしてくれる。だけど、時間が掛かりそうなんだってさ。
「アイリス、ザリウス、栞さんは町に戻って補給を頼むわ。私とモッシュ、フェン、スノウは残って森にいるゴブリンの駆除をして待っているわ」
アイリスが自分の家だった所に案内してくれたけど、ゴブリンが住みついてしまったせいで汚くてとても住めない。
結局、テントを張って一晩凌ぎ、アイリス達は明日の朝1番で戻る事になった。
「ここに戻っても守る力が無いと、また同じ様な事になるんじゃないかな?」
「そうですね……シャングリラのダンジョンで鍛えるしかありません」
「森の防備を整える必要があるわ。もう平和な時と同じでは滅びてしまうわ」
「はい。貯めたお金を使うつもりです」
「ここを奪還出来たのは良かったけど、これだけで異常気象じゃなくなるのかな?」
「無理でしょうね……」
まずはここを元に戻してみるしかない。綺麗な水源へと復興させ、どう変化するか確認してから次に行く事にした。
まずはアイリスの家から掃除だね。
翌朝、アイリス達が町へと出発した。フェンとスノウが森でゴブリンの駆除をして、僕とミンフィーが掃除をする。
「ミンフィーは戻らなくて良かったの?」
農場はミンフィーがいないと大変なはず。
「みんなを信頼するしかないわ。ジョウロで無限に水を出せるのが大きかったのよね……」
心配だよね。何で西の魔女はこんな事をするんだろう?
国はちゃんと西の魔女に対抗してくれているのかな? 北のゴラス帝国ばかり意識している気がする。
各地でこんな事が起こっているかもしれないのに……
半日かけてアイリスの家の掃除を終わらせた。小さな小屋だけど、よくこんなにも汚したもんだよ。
お昼になってフェンとスノウが戻ってきた。
「まだ繁殖する前だったみたいですね。数が少ないです」
「ヤツらはネズミと一緒でどんどん増えるわ。徹底的に駆除しないとここでは暮らせないわ」
索敵スキルがあるフェンがいてくれて良かった。とても僕とミンフィーでは探し出すのは難しいよ。
携帯食料で簡単な昼食を取った。補給がないとキツいな。
アイリスの家を拠点にして、森の入口への道を確保する事にした。フェン達も駆除に向かう。
「お腹空いたね」
「空腹はキツいものね……」
僕達は飲み物には困らないから、それだけが救いだよ。夜は野菜ジュースを飲んだ。何も無いより全然いいし、アイリスの家の中で寝れるのも大きい。
「狩りが出来ればいいだけど、森には小動物もいないわ」
「ゴブリンが食べ尽くしてしまったのね」
美しいエルフの森に戻すのに、どれだけの時間が掛かるのか想像もつかない。
僕とミンフィーは荒れ放題の小道を片付けた。何とか馬が通れるくらいにはなったかな。
森の入口付近を片付けていたら、馬が向かって来るのが見えた。栞さんだ! 後ろにはエルフ達を連れて来ていた。
「思ったよりかなり早いかったわね?」
「ホクトさんとシャバニさんが補強を手配してくれてたんです! 帰り道の途中でこの方達と会ったので、引き返して来ました」
馬には沢山の荷物が乗せてあった。多分、食料だね!
エルフ達が馬から降りた。
「里を奪還して頂き感謝致します。このご恩はいつか必ず」
「いいのよ。それよりお腹が空いたわ。フェン達も呼んで食事にしましょう」
みんなで森の中に入っていく。
「馬で通れる様にしたんですね。これなら復興も早まりますね」
「そうだといいんだけど……これから大変だよ」
ここでちょっと生活してみて分かった。食料も何も無い所で暮らす事なんて出来ないんだよ。
とりあえずアイリスの家で食事をした。エルフ達がパンを持って来てくれていたんだ。
「皆さんの家はゴブリンに荒らされているので、掃除が必要です。周辺にいたゴブリンはかなり駆除しましたが、警戒はした方がいいと思います」
みんなで一軒ずつ掃除をしていった。やっぱり人数がいると早いね。ちょっと食事が出来たのも大きい。
アイリスが大勢のエルフを引き連れて戻ってきた。僕達は一旦、町に戻る事にした。
「アイリス、ここは大変よ?」
「はい……でも、どれだけ時間が掛かってもやります!」
「立派ね……私にはとても無理だわ……」
僕もミンフィーと同じ気持ちになっていた。アイリスはここを何とかすると言っている。
出来る事は限られているけど頑張って支援しよう! ミンフィーもやるだけやってみると言ってくれた。
シャングリラに戻ってハウスへ入ると疲れがドッと出た。フェンとスノウはソファで寝ちゃったよ。森を駆け回っていたんだから相当疲れているね。
「モッシュ、帰ってすぐで申し訳ないんだけど、温泉を出して欲しいわ」
「うん。やっぱり疲れた時は温泉だよね」
「ありがとう。栞さん一緒に入りましょう」
「い、いえ。私は普通のお風呂に入るのでお二人でどうぞ」
「そう? じゃあモッシュ入りましょう」
今日はミンフィーが先に入って、しばらく待ってから僕も入る。ミンフィーは本当に疲れたみたいでボーっとしているね。
「温かいお風呂に入れるだけでも幸せね……」
「そうだね……」
「髪をお願いね……」
ミンフィーの部屋で髪を整えてあげた。ミンフィーはもう寝ちゃいそうだね。
「モッシュ、今日はここで寝て……お願い……」
どうしたんだろう? なんかとても苦しくそう……
「う、うん。ミンフィー? 大丈夫?」
ミンフィーは小さく頷いた。もう限界だったみたいだ。お嬢様育ちのミンフィーには辛い遠征になっちゃったね。
手を引いてベットまで連れていってあげた。
ミンフィーはすぐに子猫みたいに丸まって横になった。
僕もベットに横になって天井を見つめた。疲れたな……
「モッシュ、私にも出来ない事があるわ……」
ミンフィーは泣いていた。
自分がどれだけ強くても助けられない事がある……
僕に出来るのはミンフィーを抱き締める事だけだった。




