chapter 56 ポラリス
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〜 ギルド『レザムールズ』ハウス ロビー 〜
異常気象による猛暑が小都市「シャングリラ」を苦しめていた。食料不足が深刻になってきたのだ。
ミンフィーは作物の増産に尽力しているけど……全然、量が足りないんだ。
「前から暑い日が多いと思っていたけど、これは異常ね」
「郊外に移動して占星術を行ってみましょうか?」
「それで何かが変わるのかしら?」
「分かりません。雨が全く降らないのも気になります」
そうなんだよ。雨がいつ降ったのかも思い出せないよ。今日の夜に郊外へキャンプに行く事にした。シャバニさんは留守番ね。
星がよく見えそうな小高い丘の上にテントを張った。
小さな明かりだけを頼りにして、ホクトさんが不思議な道具で星の位置を確認している。
サイコロを降ったり、長細い棒をジャラジャラしている。
『3星の1つに陰りの兆候あり、西より凶兆迫る。北西の山、脈を乱し、暑さ招く……』
「風水にも通じているのね?」
「はい。北西の山は小都市シャングリラの水源です。そこに何かあるのかもしれません」
「危険よ。とても私達だけの手には負えないわ」
「そうですね……占いでは行くべきと出ています」
「こんな話をしても誰も信じないでしょうね」
それはそうだよ……占いで出たから山に調査に行こう?
無理だよ……
「あ、あの……」
アイリスが何か言いたいみたいだ。
「北西の山には私の……さ、里がありました……」
ありました? 今は無いって事?
「私は……そこで……そこで……う、ぐっ……」
「え!? アイリス? 大丈夫?」
アイリスが急に苦しみ出した! 栞さんが慌てて治療をしようと駆け寄った。
「呪われているようです。呪いの原因を話そうとすると苦しむようになっています」
ホクトさんが冷静に説明しているけど……
とても苦しそうだよ!!
「栞さん! 治療出来ますか?」
栞さんがアイリスを診察している……
残念そうに首を横に振った。
「私の力ではとても無理です。呪いを掛けた術者の方が遥かに力が上です」
「西の魔女ね……元々、人口が少ないはずのエルフがシャングリラに多いのはおかしいと思っていたら、エルフの里を西の魔女が襲ったのかもしれないわ」
「じゃあ、ミシェルさんも呪われている?」
「いや、それは無いな。彼女の出身地は別の所だ」
ザリウスはミシェルさんの出身地を知っているそうだ。
「何があるか分からないけど行こう!」
「モッシュ……私達ではとても魔女には勝てないわ」
「行くよ! ミンフィー!」
ミンフィーの目をジッと見つめた。僕は絶対に行く!
「分かったわ……」
僕は絶対にギルドメンバーを見捨てない!
困っていたら必ず助ける!
決めたんだ! ミンフィーと2人だけで出発した時に!
「呪いの影響があるアイリスは残して行った方がいいです」
ホクトさんがアドバイスしてくれた。呪いにも詳しいんだね。
「西の魔女は命でなく、その人の大事な物を奪います。恐らくアイリスは何かを失っているはず」
アイリスは気を失って動けない。しばらくすれば治るそうだ。
「大事な物ですか?」
「恐らく才能やスキルでしょう。それを奪って自分の力にして強大な力を得ています」
「そういえば……」
ミンフィーは何かに気付いたようだ。
「アイリスは吟遊詩人なのに『歌』を歌わないわ」
「そうですね……歌わない吟遊詩人など聞いた事がありません。素敵な演奏をされるので気付きませんでした」
「みんな行くよね?」
「勿論よ!」
フェンはグッっと拳を握って行くと言ってくれた!
「行こう!」
ザリウスは風見鶏のワンドを手に行くと言ってくれた……
迷っていたね? まあいいけど!
「許せません! 行って治療法を探します!」
栞さんも行くと言ってくれた!
ティアナとニャンタは……
ホクトさんの方をジッと見つめている……
「お2人共、アイリスと同じく呪われている様ですね。いや、もっと重症かもしれませんね。話そうとすれば死ぬのかもしれません」
「な、何だって!!」
ティアナは静かに目を閉じた……それが精一杯のようだ。
「あまり呪いの事は話さない方はいいですね。迂闊に話そうとして死に追いやってしまうかもしれません」
アイリスもティアナもニャンタも……ずっと話せずに耐えていたのか……
「西の魔女は多くの魔物を従え、世界を混沌へと導こうと画策している様です」
「ゴラス帝国と手を組んでいるのでしょう?」
「そんな事実はありませんよ」
「え? 教科書にも載ってましたよ」
ホクトさんが夜空の星を悲しそうに見つめた……
「私が語るよりご自身の目で見た方が良いでしょう。モッシュさん。良く見て、考える事があなたを成長させ、輝かせます」
ホクトさんが夜空の星を指差した。
「ポラリス。私が占いで導き出したあなたの星の名です」
シャングリラで見る星空と違って、今日は多くの星々が頭上には輝いている。
でも……
なぜだろう? 分かる……
あの星だ……
幾千もの星の中に
はっきりと自分の星があるのを感じる
でも……その星はぼやけていてはっきり見えなかった……




