chapter 55 策士によってお嬢様は進化する
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〜 ギルド『レザムールズ』ハウス ロビー 〜
アイリスが竪琴を奏でている。みんな椅子に腰掛けてその演奏を聴いていた。
「ああ、私もあんな風に熱く想いを語られたら……」
何かアイリスが呟いているけど……何の事かな?
「で、商品のアピールはできたのか?」
「ちょっと使ってもらいましたよ。サッと取り出せるからいいって言ってました」
「それならいいが……」
「サポーターの生活はかなり苦しいそうです。特に最近は食費が高くなって深刻な状況だと言っていました」
「ん? 確かに野菜が高いらしいな……」
みんなが集めてきた情報をまとめると……
異常な暑さが続いたことで各地で野菜の生育悪くなり、食べ物の価格がドンドン上がっているみたいだ。
「ウチの店舗でさつま芋を使ったスイーツを売り出すか」
スイートポテトっていう甘いおやつだってさ。ちょっとはお腹の足しになるからいいよね。
「ウチの農場は絶好調よ……そんな事になっているなんて知らなかったわ」
ミンフィーは「スキル」と「装備」があるからね!
農場の土はとても豊かでスクスクと芋が育っている。
「ざっと計算してみたのですが大きな利益を得られます」
ホクトさんは暗算が得意で算術はミンフィーでも全く敵わないんだってさ。
「せっかく周辺が綺麗になってきたのに……このままでは以前より荒れてしまうわ」
「……お金を得られる事より、人々の暮らしを心配されるとは……私に考えがあります。お任せ頂ければ悪いようには致しません」
ホクトさんはいいアイデアがあるんだね。
「そうね……芋を報酬に清掃をしてもらう感じかしら?」
「近いですが、全く違うとも言えます」
「面倒ね。任せるわ」
もうミンフィーは……とにかくギルドの周辺を清潔にしたいだけなんだよね……
〜 ギルドの全休日 〜
今日はウチのギルド『レザムールズ』主催の清掃イベントが行われる。メンバー全員で近隣に住む人達と一緒に清掃活動をする。イベントの考案者はホクトさんだよ。
人はあまり集まっていない……
「失敗ね……やっぱり報酬がいるのよ」
「大丈夫です。これでいいのですよ」
ホクトさんは自信があるみたいだね。みんなでギルド周辺の掃除をした。
「皆さん、清掃活動にご協力頂き有難う御座います。これから芋煮会を行いますので引き続きご参加お願いします」
シャバニさんの店舗の前に大きな鍋が用意されている。みんなで農場から芋を収穫してきて、協力し合って調理をした。ウチのギルドからも野菜を提供しているよ!
大きな鍋に芋汁が出来上がった!
みんなで楽しく芋汁を食べて大盛り上がりだったよ!
デザートでスイートポテトまで貰えた!
僕も冷たい緑茶を出して頑張ったよ!
「また来週も開催しますので来て下さいね」
みんな必ず来ると言って嬉しそうに帰っていった。
「もうこれで成功と言って良いでしょう」
「……かなりの戦略家のようね」
楽しかったけどこれで成功なの? ちょっとの範囲しか清掃出来ていないよ?
芋煮会は毎週開催された。開催毎に大きな鍋の数が増えていき、参加人数も増えていった。人数が増えれば清掃範囲も拡大していく。
住民以外にも見覚えのあるサポーター達もいた。
芋煮会が開かれるのはシャバニさんの店舗の前だから商品もドンドン売れた。
結局、ミンフィーが芋を売ったのは農場で働く人の給料分だけだった。それ以外は全て芋煮会に寄贈した形だ。
「地域の清掃活動に尽力される皆様に心よりお礼申し上げます。 ギルド『レザムールズ』マスター ミンフィー」
シャバニさんの店舗にミンフィーからのメッセージが貼り紙されていた。
ミンフィーは『芋煮お嬢様』と呼ばれるようになった!
「貧民区」はどこの区画よりも清掃の行き届いた綺麗な区画になった!
今では住民達が進んで掃除をするようになっている。
ミンフィーはすっかり地域のリーダー的な存在になった。
「ここまでは望んでいなかったわ……私は自分の為に動いているのよ」
「それが結果として良い方向に向かっていくのですよ」
「皆を従える気持ちは無いわよ?」
「良いのです。皆が勝手にあなたを慕っているのですから」
「まあ、確かに綺麗にはなったわ。ありがとう」
「私も汚いのは嫌いなので丁度良かったです」
これからもたまに清掃イベントを開催していくそうだ。
〜 ギルド『レザムールズ』ハウス ロビー 〜
ダンジョンの攻略はのんびりと進んでいた。そんなにガツガツやる必要も無いからね。
暇な時はティアナの剣技の練習に付き合うようにしている。ようやくレイピアは楽に扱えるようになった。
女の子だから大変だよね。
「ニャーゴ!」
どうもニャンタがティアナに指導しているみたいだ。これからは「クレイモア」と呼ばれる両手持ちのロングソードを使う練習をするそうだよ。
勿論、シャバニさんが作ったティアナ用のヤツだけどね。
僕も対人戦はやった事が無かったのでいい練習なる。練習用両手棍と片手棍を使って相手をしている。
体格差もあるけど互角くらいの勝負だね。
「ティアナは結構、強いよね? 何かやっていたの?」
「多少の心得はあるんです。ただ剣技は全くです」
何かいろいろ事情があるそうだね。いつか話をしてくれるといいな。僕では役に立たないだろうけど……
今は練習相手になって協力してあげよう!
それしか出来ないからさ!




