chapter 35 動き出した世界で
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キノコダンジョンでの乱獲を終えて町に戻ると、オークダンジョンでノックバッカーが討伐された話で持ちきりだ。
「どこの誰が倒したのかさっぱり分からないらしいぜ」
「よっぽど美味しい装備が出たんだな!」
「みんな待ち構えていたけど逃げられたらしい」
知らないふりをして冒険者ギルド協会でキノコダンジョンの戦利品を換金する。
ミシェルさんがジッと僕を見つめている。美人エルフに見つめられるとかなり困る……
「ノックバッカーが討伐されましたね?」
絶対に僕達を疑っているな。
「キ、キノコを倒していたので知りませんでした」
ジーーーー うう……ち、近い。
「まあいいでしょう。入金しますのでギルドカードをお貸し下さい」
慌ててギルドカードをミシェルさんに手渡した。
「モッシュさん? なぜかポイントが10万点も一気に増えましたが?」
戻されたギルドカードを確認してみたら、確かに10万点もポイントが増えてるよ……
ダンジョンは魔女様が管理してるみたいだけど、冒険者に関する部分は冒険者ギルド協会の管理だ。
ノックバッカーの討伐報酬に冒険者ギルド協会のポイントまであったのか……聞いてないよ。
もう誤魔化せないよな
「僕達が倒しましたが危険なので秘密にする事にしました」
「話してくれれば守れますと言いたい所ですが……上層部は事態を把握している可能性があります」
10万点もポイントが1日で増えれば怪しすぎるよね。
「ポイントはどうしますか? レザムールズはDクラスなので移転も可能ですが?」
「僕達はクラスが上がってもあそこから動きませんよ」
ミンフィーはそのつもりで建物の内装を改築したから、かなり快適に過ごせるんだよね。
でも……
「ミンフィーは畑がもう少し欲しいと言ってますし、メンバーの人がお店をやりたがっているので周辺の土地を購入しようかな」
ウチの周りは潰れた店や空き家ばかりだから安く買えそうだしね。
「あの区画は貧民区と影で言われています。偉い人達はスラム化を心配しているので有力なギルドが拠点を構えてくれれば、周辺の活性化が期待出来るので協会も協力してくれると思います」
とりあえず隣りの廃墟が汚くて嫌な感じだから、そこを買えないか聞いてもらう事にした。
〜 ギルド『レザムールズ』ハウス 〜
ポイントが10万点も入っていたので土地の購入を頼んでおいた事をみんなに報告した。
「とりあえず隣りの廃墟を頼んでみたよ」
「やるな小僧、見直した」
なぜかシャバニさんに褒められた。どうしてかは不明。
みんな顔を見合わせている。
「その顔は分かってなかったか……あの狼を見ろ」
みんながまだ家に入ろうとしないスノウを見た。その事でフェンは酷く落ち込んでいる。
「隣りの廃墟からここは見張られている」
「「ええ!?」」
「だからあの狼はあそこから動かないだろ? まさかお前らそんな事も分かってなかったのか?」
そんなの分からないよ……
スノウが指示を聞かないのは主を守るため
時として主の命令に逆らわないといけない場合もある
強い意志を持った狼だな
「スノウ……」
フェンが外へ出ようと立ち上がった。
「おい、ヤツの気持ちを無駄にするな」
「で、でも……」
「好きでやっているんだ。ほっておけ」
なるべく廃墟の方を意識しないように注意された。特に僕が一番心配らしい……気になるよね。
「早くハウスの守りを固めてスノウを解放してあげよう」
しばらく金策を頑張る事にした。ちょっとはお金が貯まってきたけどまだ全然足りない。
「この腕輪が無ければ挨拶に行ってやるんだが」
そう言ってシャバニさんが戒めの腕輪をそっと触った。
〜 ヒツジダンジョン 〜
今日はミンフィー、栞さん、フェンとスノウの4人と1匹パーティーでヒツジダンジョンに来ている、
ここのドロップ品の羊皮や羊毛は中々の金策になる。でもみんなで来ちゃうと敵が枯れてしまうから、今日は別行動にしたんだ。
フェンは新しい武器『仔猫のしっぽ』と皮のムチの『二刀流』を練習する。
はっきり言って新しい武器は弱すぎる!
僕は『小僧のミョルニル』と皮の盾を装備しているけど、ウォーハンマーも持ってきた。
どっちの武器を使っても苦戦してしまう
黒魔術と演奏によるサポートが無いからだ
「こうやって戦うと後衛の大事さが分かるなぁ」
「そうですね。自分は強くなったと勘違いしてました」
フェンもあまりの差に戸惑っているみたい。
「今日だって栞さんが状態異常を即、治療してくれるから、何事もないように戦えるけど……」
「居なかったら全く戦いにならないわね」
最近はミンフィーも戦ってくれるしね。まあ、僕達の訓練になるように加減してだけど。
ダンジョン入口付近の3匹ポップする部屋で訓練しながら狩りをしていると豪華な装備の女性が近づいて来た。
Sクラスギルド『ダイヤモンドスター』のスカーレットさんだ。
イージスの盾を持った美人勇者さんが何でこんなキノコダンジョンなんかに来るんだろう? しかも1人で……
「あら、ミンフィーお久しぶりね」
「あら、勇者様お久しぶり」
既に火花が飛び散っている感じがする……
「まだこんな所にいるなんて私のギルドに入れてあげましょうか?」
「こんな所に来ているあなたは何か用かしら?」
モンスターと戦っていた方が気が楽だよ……
「ちょっと見学に来たのよ」
「そう、丁度いいわね。私も休憩するから一緒に見学しましょう」
フェンと顔を見合わせる。やだよね……
「ほらポップしたわよ」
嫌なタイミングで敵がポップしてしまった。仕方がないのでバトルを開始する。
3匹ポップしたお化けキノコをフェン、スノウ、僕で各自1匹ずつ受け持って倒す!
栞さんがしっかりサポートしてくれるので何とか戦えるけど、ミンフィーがいないと結構キツイ。
「こんなのでよくノックバッカーが倒せたわね?」
「何の事かしら?」
「オルフレッドで無ければアンタしか居ないでしょ?」
「あの人は意外と外に出さないわ」
Sクラスギルド『フラッグシップ』のエース、エクスカリバーの勇者の事だね。
ドゴッ!!
お化けキノコの頭突きをまともに喰らってしまった!
「ウグ……」
毒状態にされてしまった……
「キュア!」
「モッシュ! 集中が切れているわよ!」
ミンフィーに怒られた……だって自分のバトルより女同士のバトルの方が気になっちゃうよ!




