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4話 初陣(後)

「来い、『青鞭龍セイベンリュウ』!!!!!!」

「『斬撃スパーダ』!!!!!」

神技しんぎ・『凪舞ナギマイ』!!!!!」


黒いオーラをまとった鉈と、信の手に握られていた鞭が激しくぶつかる。そして何と、吹き飛んだのは女の方だった。あんなに溜めてもらったのに申し訳ない。だがそんな事は今問題では無かった。


「えっ、えええっ!!!?信さんっ、順番が逆……でもすごいです!!」

「鞭、か……何だ、このしっくりくる感じは」

「貴方、本当にレベル1なの……??」


そんなに珍しいのだろうか。だが、何故だか分からないが何とかなりそうな気がしてくる。はじめて手にした武器が、ずっと前からふるっていたような感覚を呼び起こす。


「さっきは無駄夢中だったけど……こうすりゃ、こうだっ!!!!!」

「ぐっ、こんなものっ!!!!」


上空から刺すように先端が突っ込む。熟練した鞭の使い手の能力を遥かに凌駕する鞭さばきだ。彼女は鉈の腹で防御したが、所詮神の力を受けた武器には叶わずガラスのように砕けてしまう。


「すごいな……俺の意思通りに動く柔軟な鋼の鞭か」

「ふざけないで……貴方は、此処で殺s」

「遅いな」

「なっ!!!?」

「言っただろ、俺の意思通りに動くって」


鞭は彼女の腹を両腕と共に縛りあげ、信の元へと引き寄せた。鞭が彼女を拘束した時点で信は何をすることもできたはずだ。周囲は錆びた金属類が積み上げられており、無造作にぶんまわされればどんなに運がよくとも体はぼろぼろのはずである。


「何故殺さない……私は貴方を殺そうとしたのに!」

「……お前は一回死んだ。だから、死んだと思って生きろ。死んだ人間は生きた人間を殺せない、生きた人間の生死を操作できない、分かるだろ」

「うん……あっ、ああああっ!!!!!!」


彼女の眼が光り輝いた。そして光が壁に向かって像を生み出す。まるで映写機のような現象だった。場所は夕暮れの同じ場所。そこにいたのは十字架に縛られぼろぼろの彼女と、一人の黒衣を着た男。


『役立たずが、何のためにお前の愚かな夢を叶えたと思っている』『嫌っ、お願い、助け、てっ……ああああっ!!!!!』「ああああっ!!!!!!!」


信じられない力が鞭の拘束を解く。そしてさっき砕けた鉈の金属が再び棒に集まる。そして……鉈を手にした彼女は自分自身を右肩から左腰へ切り裂いた。


「いやっ、いやああっ!!!!死にたくない、死にたくないっ!!!!!」

「じゃあ、何でっ!!!?」

「いやっ、誰か、誰か助けてぇえっ!!!!!!!」


手にした鉈で全身を切り刻んだあと……その体は動かなくなった。狂ったとしか言いようのない光景。何とも言えない後味の悪さが信の心の奥に残った。


「あれが、あいつの未来……俺が殺さなくても、別の人間が殺していた……??」

「信さん……これが、戦いなんです。神の人間に与えた最後のチャンス、悪しき者を淘汰し正しい者だけを生き残らせるノアの大洪水です」

「そんな事が……」


何が正しい者だけだ……まっとうに生きようとしていた者を壊して、悪い人間の悪心を助長するような最低の戦いじゃないか。


「帰りましょう、信さん……」

「……………」



その日は、眠れなかった。だがそれは悪夢にうなされてではなく、単純にあの時の鮮血を思い出したからだったのだが……

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