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2話 惨劇への胎動

「ところで信さん、貴方はさっき、学校に行きたくなさそうな顔をしてましたが、如何言う事ですか?」


「(なんで名前知ってんだよ……)行きたくないもんは行きたくないの。学校って所はひどい所で、お前の思うほど美しくない」


登校中、信は心の底からする声に、心で会話をしていた。本当に学校は嫌いなのだ。それは、小学校の頃から変わらない。


「勉強は如何するんです?この世界の子供は、そう言う物では無いんですか?」


「だから、そんな奴と俺は違うんだって。別に学校に行かなくても、勉強は家でやるさ。俺は勉強嫌いなんじゃない。この社会の定法が嫌いなだけさ」


心の中で話すのも、中々難しい物だ。ちゃんと相手がいるのだから、独り言と言う訳にもいかないのだ。


「……ほら、もう学校ですよ。いい所じゃないですか。活気に満ちてて」

「それは見た目だけさ。見て見るか、暗黒面ってやつを」


信が路地裏に行くと、信がリーンに見せたい物がやはり見られた。


「今日は幾ら持ってきてんだ?!」

「k、今日は……これだけです……」


恐喝だった。3人の男が、一人の青年に暴行を加えている。信はそれをリーンに確認させると、満足そうな顔で教室へ行こうとした。それを、リーンが引き止める。


「待って下さい。見殺しですか?こんな非道を許せるんですか?!分かってるから、私を此処に連れて来たんじゃないですか?!!」


傍から見れば美しい光景だが、信にとってはただの奇麗事だ。此処で止めに入れる人間が、何人いるだろうか。


「人類を抹殺させるんだろ?甘いんじゃないのか?」

「しかし!……もう、いいです。体借りますよ!」


リーンは信に憑依すると、その体で3人を止めに入った。


「何だ、お前」

「一組の信って引きこもりのガキだな」

「何か様か?!」

「貴方がた……じゃない、てめぇらを止めに来たんだよ!」


リーンはそう言うと、3人に向かっていった。自分の体でそんなことをされる信は、たまった物ではない。が、意外な事に、全員がリーンに倒されてしまった。


「く、くそっ!覚えてやがれ!」


リーダー格の男がそう言って去っていくと、もう二人も逃げるように去って行った。それと共に、リーンも信から離れる。

 

「(全く、余計な事しやがって……)次はたすけないから」

「あ、ありがとうございました!」


信の去り際、青年はそんな事を口にしていた……気がする。認めたくなかったのだ。他人の荷物を持ったなんて事……



「如何だ、幻滅したろ?お前の勉強は、無意味になったみたいだが。分かったろ、下らないって事がよ。」


午後のひと時を、信はリーンとの会話に使っていた。午前の授業は国・数・理・社。全くと言って良いほどやる気がしない。国語と理科は小テストがあったが、両方とも満点。学力に低下は見られないようだ。


「しかし……助けるぐらい良いじゃないですか。何時か何処かでかえって来る筈ですよ。」


「あっそう。でもそれに、何の意味がある?皆、あんな悪い所を心に持ってるんだ。」


そう言われて、リーンはもう話しても無駄だと悟ったのか、全く話してこなかった。だがそれも、かえって好都合だ。


(別に、干渉なんてしなくたって良いんだ。午後の授業はエスケープしようかな……)


何て事を考えながらも、信は思いとどまった。5時限目は体育。これは信が最もやる気の出る教科だ。


(しょうがない。出るか……)



そしてH・Rが終わって、信が帰ろうとしたときである。もう人はちらほらとしかいない。


「さて、帰るとするk……何だ、これ……」


信は机の中に入った手紙を見つけた。この包装は、先生の物ではない。かと言って、来たり来なかったりを繰り返していた自分に愛の告白もないだろう。いくら連絡を取れないからって今時手紙と言うのも難儀なものだ。


「『町外れの廃工場に来い。来なかった場合、卓也がどうなるか、分かるな……』……あいつ、卓也って言うのか……それが如何したって言うんだよ……アイツとは面識無いってのに……」


信は助ける気など無かった。リーンは憤慨するだろうが、そうなったら……如何しようか。憑依されれば、此方は自由を全て奪われる。助けないといけないのだろうか。


「貴方が思う事をして下さい。」

「は……?助けないに決まってるだろ。」


それを聞いたリーンは溜息を漏らした。何故リーンはこうも人間を助けたがるのだろうか。


「この戦いでは、レベルと言う物があるんです。高いほど強くなるんですが、それはスピリットを倒さないと上がらない。だから、敵が強くなる前に強くならないといけないんです。」


「何が言いたいんだ……?」

「恐らく、その場所にスピリット持ちがいる筈です。しかも、かなり下級の」


こうは言ったものの、リーンはかなり無理をしていた。実際はそう言う事だが、あまりそんな事に重点を置いている訳ではなかった。自分の経験上そんな奴を見殺しには出来なかったのだ。信に話したら、笑われるかもしれないが。


「そうか……危なくなったら、お前が憑依して助けろよな」

「はい、勿論です!」


こうして信とリーンは向かう。初の戦いへ。そして信は知る。戦いのむごさ、みじめさを……

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