襲撃者AとB
和久を襲撃した三人は組織犯でもなく、悪乗りした一般人のグループだった。
個人商店のネット販売物を強奪しては転売して金を稼ぐ事に味を占めた馬鹿共である。
「あいつらで間違いはないか?」
一戸建ての前に駐車してあるワンボックスカーの周りで屯している二十代半ばから三十代の三人の男達の姿を認めて山口にオペラグラスを差し出すと、彼は受け取りも使いもせずに「そうだ。」と答えた。
「いいのか?クロを署に残してこっちに来て。」
「それはあなただって。それに僕はあなたが何をするのか楽しみで。」
山口は俺の誘いに乗ったのだ。
玄人と一緒だったのならば和久の襲撃の場面くらいは見ているはずだと軽く聞いてみたら、彼は、ナンバープレートも言えますよ、と笑い返して来たのである。
早速山口に警察官の特権で襲撃犯の正体を探ってもらったら、簡単に彼等の身元は全員割れた。
「普通にサラリーマンをしていればいいものを。」
奴らは三回ほど似たような事件を起こしていた。
どれも捜査途中で被害届が取り下げられているのは、被害者が彼らの身内や知り合いであったがために、彼等からの報復を恐れての泣き寝入りだった為だろう。
そして、今回のこれ、だ。
「いい気になって獲物をランクアップしたら武本物産だったのでしょうね。名のある企業に勤めているイッパンジンが、小遣い稼ぎという遊び感覚で犯罪とは嫌な時代ですね。」
「山口。今からお前は襲撃者Bだ。」
俺は彼にゴムマスクを渡した。
パーティグッズ売り場で売っている大量生産のものだ。
俺の車に積んであったボロ服に着替えた姿の彼は、ニンマリとした微笑で歪めた顔を俺から受け取ったマスクで隠した。
「誰がAなんですか?」
「俺に決まっているだろう?奴らが被害者を泣き寝入りさせてきたのなら、俺達も奴らに泣き寝入りの悲しさを体験させてやりたいと思わないかい。」
同じようなボロ服姿の俺の答えに山口は大笑いして「最高!」とはしゃいだが、俺の癇に障るような一言を付け足す事も忘れなかった。
「無計画に暴れるだけって、一度やってみたかったんですよ。」
「うるせぇよ。事態が停滞した時には破壊するのが一番なんだよ。今回は行き当たりばったりの無計画かもしれねぇが、だからこそ、後々に芋を引く様なドジはするなよ。」
「俺を誰だと思っているんです?」
マスクで顔を隠していても、山口が無表情なスマイルマークの微笑みを俺に返している事はわかっている。
それが戦闘時のコイツ自身なのである。
「それじゃあ、行こうか。」




