下校
神谷と下校を共にすることになったが、どこまで一緒なんだろうか。
そもそもこっちの方向で合ってるんだろうか。
校門出るとき「どっち?」って聞かれて俺の歩いた方についてきただけなんだよな。
「さっきはありがとね」
「……なんのことだ?」
「委員会のとき助けてくれようとしたでしょ?」
「ああ、あれか。別に助けようとはしてない。イラッとしたからしただけだ」
「そうそう、突然ケンカしそうになるから焦ったよ」
「あれはお前がさっさと予定言っとけばよかったんだよ」
「仕方ないじゃん、マネージャーに聞かなきゃわかんないんだもん」
あの携帯はマネージャーに聞いてたようだ。
自分でスケジュール管理しないのか。
「相馬くんが先に確認しといてくれないからだよ」
普通一般人はマネージャーって言葉使わないんだよなー。
全く思いつかなかったわ。
「仕事は学業に支障が出ない程度って言ってなかった?」
「放課後は一応やってるから」
「それ先言っといてくんない?」
やってると考えたとしても軽いバイト程度だと思ってた。
ドラマってそんなやるの?
神谷の人気がすごいの?
それにしてもいつまでついてくるんだろうか。
もうじき俺の家なんだけど。
「お前まさか家まで来ないよな?」
流石にそこは俺の完全プライベート空間、踏み込ませるわけにはいかない。
「そんなつもりないけど」
「じゃあなんでここまでついてくんだよ」
「私もこの先だから」
「は? 冗談だろ?」
「ほんとほんと。もしかして同じマンションだったりして」
「え、嫌なんだけど」
俺の住むマンションが見えてきた。
えー神谷まだいるよ。
ほんとに一緒じゃないよね?
そう思ってると神谷は一つ手前のマンションの前で止まった。
「……一緒じゃないんだね」
「そうみたいだな」
神谷のマンションはオートロックが備わってるお高いマンションだ。
俺が住めるようなマンションではない。
一緒ではないが俺は隣にあるマンションに住んでいる。
これを神谷にバレるわけにはいかない。
神谷が先にマンションに入るまで俺はマンションに入れない。
待っていると神谷が頬を少し赤らめ何か言いたそうにしている。
どうせまた演技が始まるんだろう。
頬が赤いのも夕焼けのせいだ。
俺が意識することはない。
「そ、相馬くん。あ、あなたのことが、好き」
え、は、え?
いや、ちょ、は?
突然すぎて思考が追いつかない。
急にこいつなんて言った。
俺が好き?
演技だよな?
今度こそドッキリ?
そんな答えの出ない思考の渦に囚われていると神谷が突然笑い出した。
「……ぷっ、あははは、いい感じだよ相馬くん。私の今やってるドラマと全く同じ反応。もしかして本気にしちゃった?」
そう言いながらお腹を抱えながら笑っている。
やっぱり演技だったようだ。
人を嘲笑うようなことしやがって。
こいついつか泣かしてやる。
「相馬くん演技向いてるかもね」
そう言い残してマンションの中に入っていった。