願い
「もう我慢できない!」
神谷が突然怒った声を出していた。
今はあれから数日経った木曜日、その帰り道だった。
木曜なのに図書委員は?って考える人もいるだろうが今週は一年の担当だから俺らは来週の木曜なのだ。
今週の神谷の態度はやはり変わらずずっと話しかけてこず笑顔を向けてくるだけだった。
だが、たった今神谷が俺に向けて話しかけてきたと思う。
俺以外に人いないから俺に話しかけているんだろう。
話しかけてるのが俺ということはわかったが、話してる内容についてはわからなかった。
我慢ってなんのことだ?
我慢してるの俺だよな?
つーか我慢してること相談されても俺答える気ないんだけど。
「なんで相馬くん話しかけてくれないの? いっぱいアピールしてたのに」
なんでって言われても話したくないからなんですが、これ前言いませんでしたっけ?
俺の態度は全然変わってないんですけど、神谷の態度の方が変わりすぎてて困ってんだよ。
つーかアピールってなんのこと?
今週のあれ全部アピールってこと?
あれで話しかけてほしいって思えるほど察しがよくないけど、これ俺が悪いのか?
「相馬くんが話しかけてくるなって言うからしゃべらず待ってたのに」
最後に話した時の話しかけてくるなは律儀に守ってくれてたみたい。
それで我慢してたってことか。
でもそれ、今話しかけたら意味ないよ。
というか俺は話したくないんだからそれ言われて話そうと思わない。
そう考え無視しようとした。
(ソウマって全然話しかけてこないよね)
また聞こえてきた、前と同じ女の子の声だ。
前のは寂しそうだったが今回のは呆れたようなけれどそういうものだとわかってるといった声音だった。
またしても神谷しかいないときに聞こえた。
やっぱり神谷の声か?
神谷とはまだ会って数日だからわかったような声音で言ってくることはないだろうと考えたが、普段から演技してるんだから言えるのかと気が付く。
俺が簡単に嘘見抜けるなら聞くんだけどな。
そんでお前……つまんないウソつくねって言うのに。
なんで嘘って決めつけてるんだろうな。
まぁそれは神谷の今までの態度のせいだろう。
言ってることもそのとき神谷が望んでることってのもあのときと一緒だ。
仮にこの声を神谷だとしたら単純に不満言われてるだけだよな。
え、今までのお願いとかじゃなくて文句だったの?
うわ、なにそれすげー不快だわ。
「俺から話しかけるわけないだろ」
ただでさえ関わりたくなくて神谷からくるのも嫌なんだよ。
しっかり否定したはずなのに神谷の表情は明るくなった。
「やっぱり話しかけたらちゃんと喋ってくれるんだ」
これ挑発に乗ったみたいでめちゃめちゃ悔しいし腹立つ。
というかやっぱりってなんだよ、俺そんな風に見えるわけ?
もっと話しかけるなオーラ出さなきゃダメ?
ここはもう無視。
俺は来るもの全て拒むだから。
「全くもう、それなら今度からも私から話しかけてあげるよ」
え、勝手に話進められてるんだけど。
優しさみたいに言ってるけど俺にとってはそうじゃないんだよな。
やっぱ喋んなきゃダメだな。
無口なクールキャラって実在してんの?
「いや、関わんないでってことなんだけど。話しかけないで」
「それは無理な願いだ。私の力を超えている」
何こいつシェンロンだったの?
力弱すぎ、なんの願いだったら叶えられんだよ。
「もっと話しかけてとかなら叶えれるよ」
「……それお前の願望」
心読んだくせに思いっきりエゴ押し付けてこようとしてんだけど。
俺の願いと真逆。
「まぁ願わなくてもしてあげるけど」
「うわ、すげー迷惑」
完全に平行線だから会話が噛み合わない。
噛み合わないというか神谷が俺の意見聞いてくれない。
「とりあえず今日は一緒に帰ろっか」
「え、嫌なんだけど」
「腕組まないと嫌? でもそれは言い逃れ出来なくなるから」
「誰もそんなこと言ってないからな。どこ聞き間違えたらそうなんだよ」
もうやだ、まともな会話したい。
「じゃあ普通に帰ろっか」
これは一緒に帰る以外に選択肢ないらしい。
ギャルゲーでもハッピーエンドとバッドエンドの選択肢あるよ?
なんで俺がバッドエンドいくルートしかないんだよ。
仕方なく、本当に仕方なく少し距離を空けて横を歩く。
話聞いてくれないもんな、勝手に帰ったってどうせついてくるだろう。
それなら少し距離空けて抵抗しておく。
そうして仲良くない風を装ってたはずなんだが俺の抵抗は虚しく神谷は近づいてきた。
やめて、隣歩かないで。
こいつ自分勝手すぎ、ちょっとは俺のことも考えて。
せっかく避けていたはずなのに神谷と帰ることになってしまった。
一度許すとこれからもつけあがってくることだろう。
何かしら対策考えとかないと好き放題やられてしまう。
というかはっきり拒絶してんのになんでこいつ平然としてんの?
メンタル強すぎて俺の心折れそう。
メンタル強化ってどうやんだろ。
そう考え神谷の話を無視するのであった。




