057 異世界でスマートフォンが起動
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俺はパーティー『リタンズ』との接触に成功し、彼女達が自分の同級生である事の確認もできた。
近藤舞美、多村千佳、赤原愛子、水崎美優とテーブルを挟んで対になる形で向かい合っていた。
――今まさに、その『リタンズ』の屋敷で近況報告会の真っ最中なのである。
そして最初は、俺がこの世界に来てからの大体の経緯や、情報を伝えることから始まっていた。
「――そして今に至る。そんな感じかな」
大雑把ではあるがなんとか言葉にして説明はできた。
すると、四人のリーダーである近藤舞美が口を開いた。
「なるほどですね。じゃあ、確認ですけど松本君には三人の奴隷がいて、その奴隷達のお陰でなんとか生活できていると」
「あぁ、その通りだ。皆知っての通り俺の固有スキルはランクE、底辺中の底辺だ。そんな奴が単独でギルドのパーティーランクをBまで上げれるわけないだろ?」
もちろん、俺の固有スキルのことやエミ、アリス、ミーシャについての情報は最低限度の事しか話していない。
まだ信用できていない相手に全て話せるほどの器量は持ち合わせていないからな。
「そして北沢君達のグループとも二回遭遇していると。一度目は転移してから一ヶ月から二ヶ月の間。二度目はつい先日だと。間違いはないですか?」
「間違いない」
なんでこんな取り調べみたいな聞き方するんだ。
なんか悪いことやってしまった気分になるじゃないか。
「正直あんたがどうしようが人の勝手だけどさ、奴隷って。やってること犯罪だよ? その自覚はあるの?」
鋭い目線と同時に、多村千佳が露骨に不快感を醸し出しながら噛み付いてきた。
うん、まぁそうなるだろうとは思ってたんだよね。
客観的に見てもやってることが正しいなんてこれっぽっちも思えないからな。
だから別にそんな目で見られても仕方ない。
説明中にイライラしているのはわかってたしな。
「確かに多村さんの言う通りだよ。自分が正しいなんて思ったことはない」
「ふーん、じゃあその子達早く解放してあげなよ。ここが日本じゃないからってあたしはそういうの許せないかな」
「言葉を返すようで申し訳ないけど、それはできない。俺は一人になってしまえば恐らく3日と持たずにあの世行きなんだ。それに彼女達を仲間だと思っている。そんな急に言われても困るよ」
うわぁ。自分で聞いてても胸糞悪くなるほどのクズ人間じゃん俺。
でも、今の生活を棒に振るつもりは毛頭無い。
少なくとも全員を幸せにすると決めているんだからそれまでは――
「あんたほんと死ねよ。女をなんだと思ってんの? あんたの為に奴隷にされてるその子達が可愛そうって言ってんの! あんたがどうとかどうでもいい」
さいですか。
しかしながら彼女の言うことは正論で、言い返したって無意味だ。
100対0で俺が悪いんだから。
「まぁまぁ、千佳ちゃん落ち着いてよ。今日は情報を交換し合うって言う話だから。またそのことは後日ってことで」
赤原愛子がなだめる。
「そうね。どうせ今言ったってコイツは何も変わらないだろうし。学校にいた時はそこまで気にならなかったけど、こっちにきてからは嫌悪感すら覚えるほど最低になってるわね」
「とりあえず! 松本君の話は分かりました。では今度は私たちの番ですね」
パンと軽く手を合わせ、近藤舞美が話を本筋へと戻す。
多村千佳の納得いっていない顔をスルーして続ける。
「私達はそもそもこちらに転移した時には四人揃っていたんです」
そうなのか。
俺は一人ぼっちだったのに。最初から友達がいると言うのはさぞかし安心できたことだろう。
「順を追って話したいので今は省きますが実は私達は既に複数人のクラスの方との接触に成功しています。その方々から聞いた限りでは松本君、恐らく君だけが一人で転移されられています」
「またピンポイントで俺なわけだ」
「そうですね。皆さん最低でも二人以上のグループでこちらにきているそうです」
なんか……凹むな。
「ですが松本君の状況は不幸中の幸い、とも言えるかもしれません」
「……どういう意味だ?」
「お恥ずかしい話ですが、私達は転移直後集団パニックを起こしました」
「え?」
「そ、それは私のせいなんです。本当にごめんなさい……」
突然、赤原愛子が申し訳なさそうに謝罪する。
「「「愛子のせいじゃない(です)」」」
三人の否定を聞いて理解する。
恐らく初めにパニックになってしまったのは赤原愛子。
その内気な性格からも相性が悪かったと考えられるが――そのパニックが残る三人にも伝染してしまったということなのだろう。
つまりさっきの “不幸中の幸い” という言葉の意味は、一人なら自分で自分を律することさえできれば落ち着いて行動できる、ということなのだろう。
「なんとなく理解した。続きを頼む」
「そうですね。パニックを起こした私達がまず最初にしたこと、わかりますか?」
「んー、そうだなぁ。泣き叫ぶとか?」
「はい」
え? 本当に泣き叫んだの?
なんか当てちゃってごめんね。
「正しくは泣き叫びながら各々に警察、両親と連絡を取ろうとした……です」
確かにここが日本ならそうするのが鉄板な気がするし、俺もそうしただろう。
「ここが松本君と私達の大きな違いになりました。松本君はすぐにここが異世界だと理解して町へ向かってこの世界の情報を集めに。私達はここが日本のどこかだと思い連絡を取ろうとした」
まぁ、そうだけど。
そんなに大層な違いじゃ無い気がするけど。
「ほーら、そんな大きな違いないじゃんって思ったろ。すぐ顔に出てんぞお前」
少しだけ呆れたように注意された。
「水崎さんが表情に敏感なだけだよ」
「「え?」」
近藤舞美と水崎美優の声が被る。
「え?」
俺も負けじと返した。
そんな顔に出てるかなぁ?
「まぁいいから、松本。お前は近藤の話をずらすな。ほら話続けろよ」
「えー……」
俺が悪いのかよ。腑に落ちねぇよ。
「そうですね。もうさっさと回答しちゃいますと……スマホが利用可能なことに気づいたか、気づいていないか。その違いです」
「は?」
なんで急にスマホが出てくるんだ?
だってここは異世界――
「っははは!」
「なんで笑うんだ水崎さん?」
「いやいや。松本はさ自分が異常であることに気付けて無いからさ。なんか滑稽で」
水崎さんめ、俺が異常だと?
どっからどう見ても健全な男の子じゃ無いか!
「じゃあ聞くけど、そもそもなんで転移後にスマホを確認しない? 遭難の可能性を踏まえてまずは誰かと連絡しようとするだろ? 今の位置をGPSで調べようとするだろ? なんでしなかったんだ? 」
「そりゃ、異世界なんだから――」
「近藤が言ってるのはそこだよ。異常なほどの順応力。普通の人間はそうは折り合いがつけられないもんだろうさ」
そうか。
俺はあの時から既に日本に固執する理由が無かった。いや、失っていたのか。
「もう。美優は口が悪いですよ。松本君、スマホを確認してみて下さい」
「あぁ」
アイテムポーチからスマートフォンを取り出す。
「おいおい、まじかよ」
スマホは以前と殆ど変わらない表示画面だった。
異世界だというのにワイファイもビンビンだ。
見た所、唯一の変化充電の残り残量は無限の記号へと変わっていることか。
「確認できましたか? しかしワイファイは日本にいた頃と同じ概念ではありません。それの強さはこちらの世界に来てから連絡先を交換し合った相手のみに、連絡のできる魔力電波のようなものだと考えて下さい」
「要はスマホ自体がこの世界に馴染むように魔道具化したって考えでいいか?」
「はい。そして恐らく、これに気づかなかったクラスメートは松本君だけなんです」
おいおい飛んだドジっ子じゃねぇか!
野郎でドジっ子とか誰得だよ。
「そしてここからが最も重要なことです。スマホを開いて下さい」
言われた通りに開くと――
「こんな事になっているとはな」
スマホに表示されているのは沢山の項目と、所々が抜けている出席番号だった。




