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053 人は人、服は服

 号外の翌日、今日は王都に来てからの初めての休日である。


 三人もそわそわしている気がするのは気のせいではないだろう。


 出発の三十分も前に準備を済ませて、出発の合図を待っていることからもそのことが伺える。


「マスター! 今日はどこに行く予定なの?」


 俺は今日の目的地をまだ告げていない。その方が楽しみかなって思ってな。案の定、俺の作戦は成功したわけだ。


 痺れを切らしたであろうアリスが質問してくる。


「そろそろ教えてもいいかな。今日はシェーナに買い物に行くぞ」


 シェーナ――王都で最大の高級衣服売り場、つまりはファッションブランドの頂点に君臨する最強の服を売っている店である。


 王都に集中した縫製技術を集約させたこの店を知らないものはこの大陸にはいない程だ。


 そこまで有名になった要因は二つ。


 あまりにも美しく、あまりにも高価だからだ。


 シェーナで販売されている価格は安いものでも三十万、高いものだと家が買える値段だそうだ。


 更にシェーナには変わったシステムが導入されている。


 顧客をブロックに分け、そのランクに応じての商品が売られている各分店にしか入店できないというものだ。


 確かに買えもしない客を、高級な商品しかない所に入れるほど甘くない。


 買えば買うほど上の商品が買えるようになる。


 なんとも上手い商法だ。


 金が有り余っているマダム達はレアリティを求めて金をつぎ込んでいくんだろうな。


 まぁ、もちろん俺達は今日初来店となる為に最も低いブロック店にしか入らないはずだけどな。


 それでも三十万程するんだ。期待してるぜ。


「ご主人様、本当にシェーナに行かれるのですか?」


「あるじ、本気で言ってるッスか⁈」


 エミとミーシャは不安と期待が入り混じったような声音で聞いてくる。


「あぁ、とびっきりのを買いに行こうと思ってる。貯金もその為にしていたしな」


「二人とも気にし過ぎよ。マスターが行くっていうんだからいいじゃない」


 現金なアリスはもうその気になっている。


 シェーナはそのブランドの気品さ故、多くの人達を魅了すると共に恐れさせてもいる。


 憧れと同時に、自分とはかけ離れた存在に畏怖を抱くのだ。


 しかし、せっかくとびっきりに可愛い三人がいるし、服もそれ相応のものを購入しておきたい。


 特に今回はミーシャには二着購入しようと思っている。メイド服と、私服だ。


 ミーシャは実にいい子だが、仲間にしてからまだ日が浅い。保険といったらいやらしく聞こえるが、これで少しでも好感度を上げておきたい。


 物凄い悪者の考えだが、打てる対策はなるべく万全にしていく為に取り組んでいくつもりだ。


「全員準備できたみたいだし、予定より早いけどさっさと出発しようか」


「はい!」「ええ!」「らじゃーッス!」


 三人の掛け声がいつもよりも元気に届くのを確認して、馬車に乗り込んだ。





 ◎◎◎ ◎◎◎ ◎◎◎ ◎◎◎ ◎◎◎ ◎◎◎ ◎◎◎





「これは想像以上にアレだな……」


「はい。一番下のランクでこれだと考えると恐ろしいですね」


「マスター見て見て! あの服光ってるわ!」


「ちょっと気分悪くなってきたッス」


「「「「はぁ。」」」」


 シェーナのCブロック――一番下のブロックの呼び名なんだが――に到着した俺達は各々感嘆の声を漏らす。


 王都はやはり何から何まで規模が違う。


 その巨大な入り口から奥に見えるのは、ここから見てもわかるほど異常に艶の良いカーペット。そして馬鹿でかいシャンデリア。


 これだけでもその気品のある雰囲気は十分と思える。


 ――が、ここは洋服店。服が売ってない筈がない。


 ここからでもわかる。


 ヤバイ。


 ただそれだけだ。


 こういう店はテレビで見たことあるぞ。芸能人とかが銀座かどこかでめちゃくちゃ金使ってたああいう店の類だ。


「と、とにかく入ろう」


 震える声でなんとか伝える。


「「「は、はい」」」


 三人の返事が重なる。


 返事のキャラブレてんぞ。

 百歩譲ってアリスはわかるが、ミーシャ。お決まりの『ッス』を忘れるなんてどんだけ緊張してんだ。


 とかいってる俺もとんでもなく緊張してます。はい。


 入り口は安定の自動ドア。王都こっちにきてから慣れてしまったが、ここ設定中世ですよね?


 もうカオス過ぎる。統一してくれ。


「「「「いらっしゃいませ」」」」


 先程まで誰もいなかった店内に、俺達が通れるようにか道を開けながら何十人ものメイド服の店員が二列にずらりと並んでいた。


 気配も感じなかった。もう本気で帰りたくなってしまう。


 店員の一人が列から外れ俺達の正面へと音もなく歩いてくる。


 忍者かよっ! ってカーペットだからか。

 もうそういう訓練受けた人しかいない気がしてきてるな俺。


「お客様、当店は初めてですか?」


「はい」


「ではこちらのカードをお持ち下さい」


 差し出されたのは四枚のプレート。


「こちらポイント制となっております」


 笑顔の店員さん。


 金落とせよって顔に書いてあるぞ。


 まぁいいさ。いい服があるなら買うだけだ。


 エミ、アリス、ミーシャ。

 彼女達の可愛さを引き出せるなら金なんていくらでも出す。

 いつか最高ランクのシェーナで最高の服を買えるなら。その初期投資なら。別にいい。


 この世界で一番の楽しみは彼女達を愛でること。


 なら進もうじゃないか。


 主人として、最高のチョイスをしてやろう。

 最初の緊張なんてもう無いのだ。


 熱い決意を胸に、俺は店員に告げる。


「す、すみません。フリフリのメイド服ありましゅか?」


 ごめんやっぱ緊張する。滅茶滅茶噛んだ。

次回、最終兵器(メイド服)。

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