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048 この中に一人役立たずがいる

よろしければ、感想・ブックマーク等よろしくお願いします。

 そもそも、オークという魔物は大きく分けて、前回俺の失敗に繋がったハイ・オークと普通のオークの二種類がいる。


 二種類いるといってもそれを区別することは少ない。


  確かに二種類のオークの実力差は大きく離れているがその見た目は非常に酷似しているため、一般の冒険者で判断するのが難しい。


 換言すれば、鑑定系スキルを持つ人が限られているかの世界では、一体一体を区別していくのは不可能だということだ。


 だからゴブリンとゴブリン・メイジの様に魔法が使えないゴブリンと魔法の使えるゴブリンの様な分かりやすいものは区別される。


 だがオークとハイ・オークは厳密には違う種類だが、鑑定で見極めるのが困難な為、どちらもオークで纏められている。


 なんとも紛らわしいが、この制度がこちらの世界では当たり前であって、注意しなければまた失敗してしまうかもしれない。


 ちなみに魔物――モンスターの名付けはギルドが行うらしい。


 こういう世界の常識のズレが、これからも俺を苦しめるのかも知れない。


 ハイ・オークでもありオークでもあるというそいつを睨みつけながら、俺は掌の照準を合わせる。


「【火炎(ファイア)】」


 俺はまずオークの顔に火魔法を放ち、体力の確認も含め再び奴のステータスを確認する。




<名前> ハイ・オーク(♂)

<種族> 魔物

<年齢> 17

< LV >34

<HP>2860/3000

<攻撃力>2900(+100)

<防御力>260(+10)

<素早さ>5

<命中率>30

 装備:毛皮、斧(自作)




 最初体力が満タンだったとすると140程削れたと考えてもいいか?


「グォオオオオオオッ!」


 不意打ちに腹を立てたのかとんでもない声量でオークが叫ぶ。


 そしてこちらを睨んでくる。


「こっちだノロマ」


 言葉は通じない。だが俺が挑発したのがわかったのか、再び咆哮と共にこちらへ向かってくる。


 とんでもない迫力だ。しかし落ち着いて見ればウルフよりもだいぶ遅い。


「【砂氷柱(サンド・アイシクル)】」


「ぐぉっぉおお⁈」


 地面から土が氷柱状に突き出る。もちろんオークの真下で。


 急に動けなくなったのが理解できないのか戸惑うオークに、容赦なく【火炎(フレイム)】を数発お見舞いする。


 そろそろ砂氷柱が脆くなってきたか。


 俺は剣を構える。構えた先にあるのはオークの顔面。


「【縮地】、【加速】」


 スキル【縮地】で一気に間合いを詰め、その勢いを【加速】で更に上げる。俺自身が刃物の弾丸となることで、オークの顔面を強く斬りつける。


 もちろん、刀自体にも【強化魔法】をかけることも忘れてはいない。


 剣から振動を感じながらオークの方を振り返る。


「グォオオオオ!」


 その直後砂氷柱は崩れて、オークは自由に動ける様になった。しかし、先程まで足に受けていたダメージに耐えられなかったのか、そのままうつ伏せに倒れる。


「前回は俺がそっちの方だったんだよな」


 オークを見下しながら【砂魔法】で地面の土を利用し、オークの体を縛る。


 そして再び――【砂氷柱(サンド・アイシクル)


 オークの息が弱くなっているのが見てとれた。

 だが、油断はしない。


 俺は【砂魔法】の縛りを更に厳重にした。


 ステータスはどうか。




<名前> ハイ・オーク(♂)

<種族> 魔物

<年齢> 17

< LV >34

<HP>80/3000

<攻撃力>2900(+100)

<防御力>260(+10)

<素早さ>5

<命中率>30

 装備:毛皮、斧(自作)




「なんともこの瞬間だけは生々しいんだよなぁ」


 日本という安全な場所で生活していた俺が、生き物の命をこうも直接的に奪う。


 最初は感覚が麻痺していたのか何も感じない様に思っていたが、徐々にしっかりと感じる様になった。


 精神的苦痛。


 だが、それが嫌だからと足を止めることはできない。


 気を抜けば狩られる側に。そういう世界なのだ此処は。


 今回は俺が狩る側だったって話だ。

 次回から狩られる側かもしれない。


「今回は俺の方が一枚上手だった様だな」


 感傷に浸ってるのか?

 その前にまずは、コイツにとどめを刺さなければ。


 狙うのは、普段は狙いにくい、全生物の弱点である首。


 此処を切断されても死なない生物はなかなかいないだろう。


 再度剣を構え、分厚い首筋を――


 そして宿敵は息の根を完全に止めた。





 ◎◎◎ ◎◎◎ ◎◎◎ ◎◎◎ ◎◎◎ ◎◎◎ ◎◎◎





「マスター! 凄かったわ! 面白い戦い方だったわね」


「ええ、とてもかっこよくて惚れ直しました!」


「おう、ありがとうな」


 帰ってきた俺にエミとアリスが賞賛の声をかけてくれる。


 俺があの失敗を気にしているのを知っていたからこそ、ここまで喜んでくれるのかもしれない。


 それにしても、ここまで集中して体を動かしたのは久しぶりだ。


 すごく疲れた。


「残りはアタシ達がやっておくからマスターは休んでおいて」


「ご主人様、疲れが顔にも出ていますよ」


「いや、少し休めば戦える。二人だけより三人の方が安全だろ」


 二人に任せて何かあったら大変だ。

 前回の俺みたいに。


「ご主人様。お言葉を返す様ですが私達はステータスに負荷をかけたりしていません。つまり制御されているご主人様と違ってフルパワーで魔法が放てます」


「そうそう。こんな頑張った時くらい奴隷のアタシ達に任せて欲しいわ」


 確かに。


 戦闘の経験値を稼ぐことや、不相応な力で変に目立つのを防ぐためにステータスを大幅カットしている俺に比べて二人は圧倒的に強い。


 俺も徐々に制御の割合を落としていきたいと考えているけど、恐らくまだ半分も使いこなせないだろう。


 そういう面では二人に任せてしまった方が安全なのかもしれない。


 それにエミもアリスも、俺の地獄の特訓についてきてくれた。当たり前だといって。


 まぁ、ピデアルはアリスに甘かった気がするけどな。


 つまり二人とも以前より格段に強くなっているということだ。


 二人の実力を認識しておくには、客観的に見れていい機会かも知れない。


「わかった。今回は甘えさせてもらうことにしようかな」


「今回も、でしょ? 主人を甘やかすのは奴隷の義務よ」


「ご主人様に頼られましたっ! 全力でやってみせます」


 二人の優しさを噛み締めながら、次なるオークを探す。


「あと二体倒したら、お弁当にするか」


「はい!」「ええ!」


 どうやら二人とも、ミーシャの弁当が楽しみで仕方ない様である。


 エミもアリスも、ミーシャの『クラーケンウインナーも入れておいたッスよ』の言葉に過剰に反応していたからな。


 そういうのが好きな年頃なのか?


 ちなみにクラーケンウインナーとは、日本でいうタコさんウインナーだ。見た目はほぼ変わってない。


 どこの世界も考えることは同じなんだなと、それを知った時はほんわかしたものだ。


「ご主人様、発見しました」


「二体まとめてってことね」


 二人の報告で気を引き締める。


「いけそうか?」


「はい。前回よりも強くなっていますし、問題ありません」


「アタシは賢者よ? 余裕に決まってんでしょ。よ、ゆ、う!」


 二人とも自信満々にそう答える。


 なら見せてもらおうか。


「しっかり見てるから、頼んだぞ」


「お任せください、ご主人様」


「惚れても知らないわよ、マスター」


 走り出す二人。ワンマンプレーで行くつもりの様だ。


 どれだけ強くなっているか。










































 ――結果は瞬殺。二人とも強くなりすぎてやしませんか?


次回の投稿予定日は二日後の5月4日です。

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