047 真剣(マジ)でオークに挑みなさい!
GW中は二日に一話ペースで出したい……ブックマーク、感想等して頂けると励みになります。
王都に到着した翌朝、クエストを受注する為に俺、エミ、アリスはギルドへと来ていた。
ちなみにミーシャは宿で待機している。
待機といっても掃除洗濯もあるし、朝は早起きして全員のお弁当を作ってくれた。
ミーシャの手作り弁当、実に楽しみである。
それにしてもやっぱり王都のギルドは規模が大きく、物凄く入りにくい。
俺達入っていいんだよね? って確認を取りたくなる。
「さっさと決めて夕方までには帰りたいが……」
掲示板を見ると――掲示板だよな?
前の掲示板は当たり前だが紙が貼ってある感じの『ザ・掲示板』だったんだが、ここのはスクリーンなのだ。
周りの冒険者達もスクリーンをタップしながら話し合いをしている。
流石にハイテク過ぎやしませんかねぇ。
「マスター、リベンジがてらこれなんていいんじゃない? 」
既に文明の利器に染まってしまったアリスが、平然と掲示板を弄りながら提案してくる。
内容を確認すると『オーク三匹の討伐及び死体回収:対象Cランク以上』と書かれている。
「オークか」
前の失敗が脳裏をよぎる。
だが、そんなこと言っていては先に進めない。
それにやれる対策はやっている。あの地獄の特訓を乗り越えたのだ。
むしろ余裕で倒せて当たり前のはずだ。
「無理はなさらないでください。もう少し間を置いても」
気を使ってくれたのかエミがそう声をかけてくる。
「いや、大丈夫だ。今度は前みたいにはならないよ」
だけど、早く安心できる存在になりたいしな。それにいつまでも気を使わせてしまっては主人失格だ。
「流石マスター。そう言ってくれるって思ってたわ」
「勿論だ。ここで尻込みしてるようじゃ、ピデアルにも申し訳ない」
「そう」
ピデアルのことを褒められたからか、アリスがとても嬉しそうにしている。
分身体みたいなもんだもんな。
「クエスト受注は受付嬢に言いに行けばいいのかな」
エミ達に質問すると――
「兄ちゃん、田舎から来たばっかりかい?」
横から冒険者が話しかけてくる。
王都に住んでいるのだろうか。
「俺も最初分かんなくてさ。掲示板のここをタップすれば受注できるぜ」
そう言って掲示板を指差す。
受注までできるのか。もう受付嬢いらねぇじゃねぇか!
「助かりました。ありがとうございます」
「いいってことよ! ギルドカードをかざしたら受注完了だ。ただし報告は受付でしかできねぇから気をつけな!」
一応仕事はあるのか。
「本当にありがとうございます」
再びお礼を言い、去っていく冒険者に軽くお辞儀をする。
振り返って、言われたように受注しようとギルドカードをアイテムポーチから取り出すと、
「あ、もう済ましておいたわよ」
アリスが先にやってくれていた。
いや、いいんだけどさ。ただ俺もやってみたかったってだけだけど。次は俺が受注しよう。
「なら一稼ぎするか。場所はどこって?」
「東の森と記載されていますね。城壁の外側の王都の近くにいくつか森や湿地帯があるそうですので、その一つだと思います。恐らく馬車を使うのが良いかと」
エミがわかりやすく教えてくれる。
「ならギルドから馬車をってくるか」
前回、自分達の馬車をギルドに預けていた。
保管されている場所もわかるし、鍵も持っているから直ぐに出発できるだろう。
「よし、久々のクエストだ。体が鈍ってないといいんだけどな」
約一週間ぶりのクエストに若干の不安を抱きつつ、俺達は準備に取り掛かった。
◎◎◎ ◎◎◎ ◎◎◎ ◎◎◎ ◎◎◎ ◎◎◎ ◎◎◎
「今度は負けねぇぞ」
オークを確認して、思わず声が漏れる。
俺にとっては宿敵のような存在のオーク。
どうしても熱くなってしまう。
「ご主人様、今回は【自由制御】は使用されるのでしょうか? 前回のこともありますし、ステータス全開で行かれてはどうでしょう?」
まだ不安が拭えないのか、エミがそんな提案をしてきた。
まぁ、まだ心配なのは分かる。
あれだけ無様なところを見せたんだ。
エミは本当に顔を真っ青にしてたからな。
俺と同じかそれ以上のトラウマになっているのかもしれない。
「いや、前回と同じ割合の制御をかけて挑む」
エミに反論するのは申し訳ないが、これは理屈どうこうじゃない。
男の矜持だ。
前回よりも優位な立場で勝てたからって意味はない。
前回と同じ状況で叩き潰す。
それでようやく、俺は自信を取り戻せる。
取り戻せるだけの自信が最初からあったかと問われれば……ノーコメントで返すしかないがな。
「アタシ達も援護するわよ?」
「いや、最初は一人で行かせてくれ」
アリスの申し出を断る。
二人には申し訳ないが、ちょっとだけかっこいいところを見ててもらおう。
絶対に惚れ直したって言わせてやる。
「分かりました」「分かったわ」
二人も了承してくれた。
今日は晴れているし、絶好のオーク狩り日和だ。
さっさとおねんねしてもらって、ミーシャの手作り弁当を堪能するとしよう。
「じゃ、少し行ってくるわ」
そう言い残し、オークへと足を進める。
前回と同じような配置。俺が上からオークを見下している形だ。
だが決定的に前回の俺とは違う。
経験が違う。
緊張感が違う。
オークの何倍も失禁しそうな威圧を放ってくる化け物を宮殿で相手させられた。
認識はゴブリンと同じくらいの不快感。
観察を怠ることなく、十メートル程に接近する。
「よぉ、久しぶりだな。……進化した俺をとくと味わってくれよ」
俺に未だ気づかないオークに向かって、呟く。
何かに浸っているからだろうか。普段言わないような言葉が勝手に溢れた。
俺が俺を乗り越える瞬間だ。
俺にはエミのような火力は無いし、アリスみたいな器用さがあるわけでも無い。
有るのは――この世界に連れてこられて与えられた、他人より少しばかり有能な固有スキル。それと少しばかりのプライドだけだ。
だから負けられない。それしか無いから。
エミとアリスとミーシャを幸せにできる主人になる為には、このちっぽけなプライドだけは捨てられない。
固有スキルに甘えてる様じゃ、限界は見えている。
ピデアルにも言われたさ。
『器に合わない力なんて、棍棒を振り回しているのと同じだよ。落ち着きゃ誰にだって回避されるし、気付けば仲間さえ傷つける。マスター、アンタは自分の努力で得ても無い力に溺れないでよ。いつかちゃんと使いこなしてくれる日を、楽しみにしてるねぇ』
そう、この便利スキルは俺の力じゃない。
たまたまエミとアリスと相性が良くて上振れしただけのものだ。
俺が守れる様にならないと。
「いけないな。集中しろ」
色々と考えてしまったが、今しなきゃいけないのは目の前のデカブツをぶっ倒すことだけ。
うん、シンプルイズベスト。
ちょっと強くなった気になるとすぐこうやって気を抜いてしまう。俺の悪い癖だ。
「待たせたな。今度は俺がコワシテヤルよ」
そんな独り言を開始の合図に、俺はオークに向かい走り出した。
次回、戦闘シーンです。




