041 もふもふもふもふもふもふ
俺達は今までお世話になった宿のエリンさんにお礼をすませると、馬車へと乗り込む。
「まさかエミが馬車を扱えるとはなぁ」
「私も驚きです。本で読んだことを頼りにやってみたら案外行けましたからね」
ここ二週間で王都へ向かう準備を整え、ついに今日が出発だ。準備に忙しいのもあって、この出発がなんだかあっという間に感じる。
「でも王都の前に奴隷商でしょ?」
アリスが当然のことを聞いてくる。
「当たり前だ。戦闘に不向きでも構わないが、土地勘が良くて家事もできて、さらには案内が得意なもの知りな獣人を探しに行くぞ!」
実は俺達は――エミが一番意外だったけれど――誰も家事ができないのである。
部屋が散らかるのである。
そこも考慮してあるのである。
完璧である。
「マスターの目が輝いてるわよ」
「でも良いんじゃないでしょうか。この日の為に準備に必要な費用以外を全て貯金に回していたのですし。それにピデアルも」
「そう! ピデアルも言ってたしな」
あの日以来、宮殿を利用した前回よりも長い地獄の特訓を乗り越えた。
何度失禁しそうになったことか。
そんな特訓を最後まで乗り越えられたのも、ピデアルの一言によるものだった。
『この特訓も乗り越えららないようじゃ、マスターに仕える新しい奴隷だってたかが知れてるねぇ』
前回の失敗で決めたのだ。
相応しい主人になると。
エミもアリスも安心して信じられる主人に。
俺を乗せるための言葉とわかっていても、その言葉が心に刺さる。
もう不甲斐ないところを見せるわけにはいかない。
そう言い聞かせ、体感一ヶ月もの間特訓に打ち込んだ。
だがそれは過去の話。今の俺はウキウキである。
特訓の後に王都出発の準備と並行してクエストを受けまくり、貯金も貯めた。馬車が思いの外高かったので焦ったけどな。
それもそう、まだ見ぬ激かわケモミミっ娘の為に!!
「よし、奴隷商まで頼む」
「かしこまりました。ご主人様」
俺はワクワクしながら奴隷商人へ向かうのだった。
◎◎◎ ◎◎◎ ◎◎◎ ◎◎◎ ◎◎◎ ◎◎◎ ◎◎◎ ◎◎◎
「お待ちしておりましたマツモト様。今日は獣人の奴隷をお求めになられですよね。しっかりと選りすぐりの商品をご用意しております」
「ありがとう! 期待して良いってことだな?」
「ええ、それは勿論でございます! 今回は全てうちの目玉商品に絞っておりますよ」
奴隷商人のファンツの言葉に期待が高まる。
実は貯金を貯めつつ、何度かこの奴隷商に足を運んで獣人について質問をしていた。
王都に向かう際に役立つ奴隷は居ないか、家事が得意で最高に可愛い娘とかをな。
するとファンツはエミの一件の例だと言って、新しく入ってくる予定の奴隷も含めて最初に見せてくれると約束してくれた。
「ではこちらへ」
奥の部屋へと案内され入るとそこには既に数人のケモミミっ娘達が並んでいた。
並んでいた!!
ええと、一、二……五人か。それにどの子も可愛い。
けどみんな少し緊張してる?
「どうやら皆さん物凄く固くなっているようですね」
俺が思ったことと同じことを考えていたのか、エミがそんなことを口にした。
「もっと素の表情をマスターも見たいんじゃない?」
「そうだな。軽く話してみたいけど、これだけ畏まられるとなぁ」
「申し訳ございません! 私の恩人がこの店での最後の来店だから、絶対に粗相の無いようにと十二分に注意してしまったのが原因です!」
ファンツが謝罪してきた。
「いや、俺のことを考えてくれてるのは素直に嬉しいから怒ってないさ。ただもっとリラックスして良いってことだけ伝えて貰ってもいいか?」
「勿論でございます!」
ファンツは少し待って欲しいと言い、俺達を別室へと案内してくれた。
しっかりと紅茶までご馳走になってしまった。
しばらくするとファンツが戻ってくる。
「お待たせ致しました」
「なら行きますか」
エミとアリスを引き連れ、再び奥の部屋へ。
そして改めて鑑賞する。
今の俺達に役立ちそうなのは……ステータスを見てみるか?
<名前> フィラス・マーラ
<種族> 獣人族
<年齢> 16
< LV >9
<HP>350/350
<MP>7/7
<攻撃力>400
<防御力>150
<素早さ>300
<命中率>18
<会心率>9
<魔攻力>9
<精神力>350
装備:布
所有金額:0エン
スキル:【嗅覚向上】
<名前> ノーチェ・カイン
<種族> 獣人族
<年齢> 18
< LV >13
<HP>460/460
<MP>200/200
<攻撃力>300
<防御力>150
<素早さ>180
<命中率>30
<会心率>19
<魔攻力>25
<精神力>39
装備:布
所有金額:0エン
<名前> アイル・ルート
<種族> 獣人族
<年齢> 17
< LV >18
<HP>290/290
<MP>100/100
<攻撃力>190
<防御力>130
<素早さ>290
<命中率>140
<会心率>3
<魔攻力>3
<精神力>40
装備:布
所有金額:0エン
スキル:【嗅覚向上】
<名前> ミーシャ・ティフォン
<種族> 獣人族
<年齢> 20
< LV >23
<HP>450/450
<MP>600/600
<攻撃力>420
<防御力>160
<素早さ>980
<命中率>35
<会心率>19
<魔攻力>150
<精神力>260
装備:布
所有金額:0エン
スキル:【嗅覚向上】【俊敏】【聴覚向上】
<名前> ナイル・ライ
<種族> 獣人族
<年齢> 16
< LV >
<HP>430/430
<MP>50/50
<攻撃力>120
<防御力>160
<素早さ>290
<命中率>90
<会心率>39
<魔攻力>70
<精神力>60
装備:布
所有金額:0エン
スキル:【勘向上】
さすがファンツが選んでくれただけあって、どの子もみんなとんでもなく可愛い。
今回は値段は気にせずにと伝えていて正解だったな。
ただこのレベルの中ですら輝いて見えるのはやはり――
「この子がいいかな」
俺が指名したのは、ミーシャ・ティフォン。
この中でレベルが一番高く、さらに素早さが抜きん出ている。
そしてなんといっても可愛い、愛おしい、キュート。
背は俺より少し小さめの約165センチくらい。
少しカールがかった短めの茶髪ボブに小さなネコミミがぴょこんと二つある。
見た目は大人しそうで、クリクリした目が保護欲をそそる。
完璧なまでにキュートな生物に出会ってしまった。
これぞ、ネコミミっ娘中のネコミミっ娘!
「お買い上げありがとうございます! ほら、挨拶しなさい」
ファンツに催促され、自己紹介を始めるミーシャ。
「ミーシャはミーシャ・ティフォンってゆーッス。奴隷の前は商人のパパといろんな大陸を回ってたッス。それから、えーと、あ! 音と匂いに敏感スね。うーんと、走るのも好きじゃなくて得意スね。これくらいッス」
少したどたどしいが、頑張って話しているのが見て取れた。こういう系なのね。
部活の後輩みたいだな。
「申し訳ございません。まだ敬語を覚えたてなもので」
「いや、構わない。ところでミーシャは家事とか得意な方か?」
「よく手伝わされたッス。よゆーって感じッス」
これで条件は完璧にクリアされた。
「なら、俺達についてきてもらうぞ? 基本、戦うことはないから安心してくれていい。俺達の紹介は王都行きの馬車の中でってことで」
ほぼ家政婦と案内人の役目が目的だからな。
「ではこちらへどうぞ」
ファンツに誘導され、会計を済ませる。
なんと驚きの48万エン。
安すぎて驚きだ。こんな可愛くて家事までできるのに。
ミーシャのメイド姿なんか見たいな。
制服とかめちゃくちゃ萌えるぞ……この世界にはないかな。あったら即買いだ!
「またこの町へ寄ったらここにも顔を出しに来るから、その時はよろしくな」
「ええ、心待ちにしております」
ファンツと短い言葉を交わし、奴隷商の脇に留めていた馬車に乗り込む。
「全員いるよな?」
「はい!」
「ええ」
「はいッス」
三人の返事を確認したところで、出発しますか。
「エミ、出してくれ」
「かしこまりました」
ガタガタと馬車が動き出す。
多くの新しい事が待っているであろう王都へ向けて――
これにて第一章終了となります。
第二章に入る前に何話か番外編を二つほど投稿する予定です。
さらに、二章では徐々に話が動き出す予定です!
ここまで読んで下さった方、本当にありがとうございます。もしよろしければ、二章も読んでやって下さい。




